タイトル一覧
肌の乾燥は潤す漢方?
冬は肌が乾燥しやすい季節です。
肌が乾燥しているなら、潤す漢方を使えば良いでしょうか?
肌という一部分だけ考えるならそれで良いでしょう。
しかし、体はつながっています。
皮膚が乾燥しているからと言って、体内も乾燥しているとは限りません。
皮膚が乾燥していても、体内に熱がこもっている場合があります。
また、血の汚れがあり、血流が悪くなっている場合があります。
水分が不足しても油分は過剰な場合もあります。
アトピーなどのように、皮膚の表面は乾燥しても少し下には湿熱といった汚れが蓄積している可能性もあります。
このように乾燥だから単純に潤すのが言いとは言えません。
あくまでも乾燥の原因を考える事が大切です。
抜け毛
抜け毛の原因は、毛根の栄養不足です。
しかし、毛根に栄養が行かない理由はいくつか考えられます。
大きく分けて、そもそも体内の栄養が足りない場合と、体内に栄養は充分にあっても上手く毛根まで届けられない場合があります。
中医学では髪は血の余りと考えています。
ですから、黒くツヤツヤした髪の毛の為には充分な血が必要です。
血虚と言って血が足りない状態の場合は、まず血を増やす漢方薬を使います。
それと同事に血を増やす食事にも気をつける必要があります。
漢方は血が増えるのを助ける作用はありますが、血液の原料も必要です。
一流のコックさんでも、食材が無ければおいしい料理は作れませんね。
それと同じです。
体には血が充分にあっても、毛根まで届かない場合があります。
何かが配達の邪魔をしているのです。
では何でしょうか?
考えられるのは血の汚れ、脂の汚れなどです。
これを中医学では瘀血とか痰湿と言います。
これらが原因の場合は瘀血や痰湿を取り除く漢方薬を使います。
また気滞といって、気の流れが悪いと血管が収縮します。
この場合も血流が悪くなり、髪の毛が細くなったり抜け毛が多くなります。
気滞の原因はストレスが多いので、ストレスによる抜け毛は気滞を考えます。
円形脱毛症と言った特殊な場合は、免疫のバランスで、考え方はアレルギーと同じです。
円形脱毛症の漢方はまた機会があればお話します。
免疫は強い方が良いのか?
免疫が強いと、風邪をひかない、ガンにならないなど良い事が多いように思える。
しかし、実際はそうではない。
免疫は強すぎても弱すぎても良くないのだ。
免疫が強すぎると体内で炎症が起こりやすくなる。
体内にウイルスが侵入した時に、激しい反応がおこり、高熱で意識が朦朧とする。
では免疫が弱い方が良いのかと言うとそうでも無い。
免疫が弱いといつまでたってもウイルスが出ていかない。
病気が長引くのだ、
体に負担が少ない強さで、しっかりウイルスを駆除するのが良い。
免疫が弱い場合は漢方では補気薬を使う。
風邪の初期に補気薬を使うと、免疫が強くなりすぎて、高熱が出たり、体がしんどくなったりする場合がある。
だから風邪の初期は去風薬といって、免疫のバランスを整える作用のものを使う。
去風薬は免疫を整える作用があるので、アレルギーにも有効だ。
漢方の風邪薬とアレルギーの薬は同じ事が多い。
風邪の初期で、免疫がとても弱っている場合は勿論補気薬を使って良い。
なんでもバランスが大切なのだ。
冷えの概念
中医学では、体を温める力を陽気と言っています。
陽気も気の一部なのですが、温める力を特に重視しているのです。
一つの理由は、陰と陽の概念が関係しています。
陰は、冷たいもので代表が水とか土です。
これに対して陽は温かいもので代表が火です。
体の中には陰と陽があって、お互いに強くなりすぎないようにバランスをとっています。
気も広い意味で陽の一部です。
気の中に、普通の気と陽気がある
陽の中に、陽気と普通の気がある
どちらも成り立っています。
では、普通の気と陽気の違いは?
普通の気は運動エネルギー、陽気は熱エネルギーと考えると理解しやすいです。
この2つは相互に変化するので、違いはあっても本質的には同じものと言えます。
かなりアバウトですが、アバウトなものをアバウトのまま考えるのが中医学の良い所です。
エネルギー不足
すぐ疲れる
朝おきれない
これは中医学では気虚といいます。
エネルギー不足です。
エネルギー不足が不足する場所によっていろいろな症状がおこります。
胃腸の気が不足すると、消化する力が弱くなり、食欲が無い、もたれる、下痢をする、便が出ないなどの症状がおこります。
肺の気が不足すると、すぐに息が切れる、呼吸がしにくいなどがおこります。
心の気が不足すると、動機がする、少し動くと心臓が苦しい、不安感などがあります。
気虚の症状は、前回お話した血の不足の血虚の症状と似ている部分があります。
気が不足すると血を作れない。
ですから、気虚が原因で血虚になる事も多いのです。
また血が不足すると気の供給にも影響します。
気と血は相互に依存しているのです。
気虚と血虚の違いは舌の色や脈でわかります。
ただ、必ずしも明確に区別する必要はありません。
気血両虚というくくりで、血を補うものと気を補うものを同事に使うと良いでしょう。
目に見える血と目に見えない気が、体の中を流れて、色々な働きをしているという考え方はとても面白いですね。
血虚の症状
中医学で言う血虚は、血の不足です。
病院で検査する貧血も血虚の一部ですが、貧血が無い血虚も沢山あります。
病院で検査する貧血は、血液の赤血球や鉄の濃度です。
血液全体の量とか、流れは考慮しません。
濃度が正常でも、全体の量が少ない場合もあります。
また血流が悪くて、一部の血が不足する場合もあります。
中医学的な血虚の症状は次のようなものがあります。
脈が細い
脈が弱い
舌の色の赤みが少ない
たちくらみ
冷え性
生理の色が薄い、量が少ない、だらだら続く
髪の毛が細い、抜けやすい
爪がもろい
血圧が低い
朝おきづらい
などの症状がよく見られます。
勿論、全部の症状が揃ってある分けではありません。
また血虚以外の原因もあります。
体力があるか、無いか
漢方薬の効能効果に、「比較的体力があり....」とか「体力がなく...」といった記載があります。
これはどういう事なのでしょうか?
もともとの中国の漢方の考え方として、病気がおこるのは
「体に必要なものが足りない」 正虚
「体に余分な汚れがたまる」 邪実
の2つがありました。
これが日本式になった時に
体に必要なものが足りない 体力がない 虚証
体に余分なものがある 体力がある 実証
という分類におきかわりました。
この置き換えは正しい場合もあるし、正しくない場合もあります。
特に問題は、体に汚れがたまると疲れやすくなります。
これは虚証なのか実証なのか?
桂枝茯苓丸など、血の汚れを綺麗にするものは、血の汚れがあれば体力とは関係なく飲む事が出来ます。
ただ、桂枝茯苓丸の効能には「比較的体力があり」となっています。
また、体力があるか無いかは、とても大雑把な概念です。
そもそも体力って何?
個人的な意見ですが、漢方の効能効果から体力があるか無いかの記載は外す方が良いと思います。
潤す漢方と乾かす漢方
体に余分な水がたまっている場合は、余分な水を取り除く作用の漢方を使います。
ここで注意しないといけないのは、乾かし過ぎない事です。
気の流れを良くする漢方、発散する漢方なども乾かす作用があります。
温める作用の漢方も乾かすものが多いです。
トータル的には、多くの漢方が乾かす作用になります。
ですから、乾かしすぎに注意します。
ごく簡単に見分けるのは、舌の苔です。
舌の苔が厚い場合は乾かす作用のものは大丈夫です。
舌に苔がなく、ツルツルの場合は潤い不足の可能性が高いので要注意です。
潤す漢方と乾かす漢方
漢方薬には、体を潤す作用のものと、乾かす作用のものがあります。
潤いが足りない状態を津液不足とか陰虚のと言います。
こういった場合は潤す作用の漢方を使います。
その場合、どこを潤すかも考えます。
まあ、体はつながっているので、長い目で見れば体全体が潤うのですが。
例えば、目が乾くという場合を考えてみます。
目は肝と関係が深いので、肝を潤すものを使います。
ただ、肝の潤いは腎から供給されるので腎を潤す事も必要です。
このようにして考えられたものが杞菊地黄丸です。
皮膚や粘膜の潤い不足の場合は、肺との関係を考えます。
体表は肺の受け持ちなので、肺を潤すものを考えます。
心に潤いが無いと、動機がしたり、疲れやすくなります。
また夏バテや熱中症になりやすくなります。
このような場合は麦味参顆粒を使います。
このように、漫然と潤す作用の漢方を使うのではなく、適材適所で使うと効き目が良くなります。
上げるものと下げるもの
中医学的に漢方の分類は色々なモノサシがあるのですが、その中で「上げるもの」と「下げるもの」という分け方があります。
「下げるもの」と言うと、下剤を想像しますね。
その通り。下剤もりっぱな下げるものです。
ただ、下げるものは下剤だけではありません。
下剤は大腸につまった大便という汚れを排出するものです。
では、大腸まで行かない汚れ、便になる前の汚れはどうでしょうか?
胃のあたりでつまってしまって苦しい事があります。
この場合は吐ける場合は吐いてしまうのも手です。
それが難しい場合は消導薬という方法で食べ物を下におろします。
下げるだけでなく消化を助ける作用もあります。
それで胃がスッキリするのです。
気がのぼるという事があります。
更年期に特徴的なホットフラッシュもそうです。
イライラ、カッカとして、顔を真っ赤にして怒る。
ストレスがたまって、眠れない。
こんな時は気が上に昇っている状態なので、気を下げる薬を使います。
これを降気薬と言います。
降気薬にも色々種類があります。
肺の気が昇って降りないと、咳が出長引きます。
心の気が昇って降りないと不眠になります。
肝の気が昇って降りないとイライラ、カッカとして怒りっぽくなります。
逆に降りてはいけないのに降りたりする場合もあります。
下痢、多尿、胃下垂、遊走腎、脱肛、子宮脱、たちくらみなどがあります。
このような場合は気を上にあげるものを使います。
面白いのは、同じ症状でも気が昇って起こるものと気が昇らなくて起こるものがあります。
耳鳴り、めまい、頭痛などがそれです。
それぞれ、しっかりタイプ分けして治療する事が大切です。
次のページ
トップページに戻る