深谷薬局 養心堂

漢方薬局 深谷薬局養心堂

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423.長引く咳と鼻詰まり、後鼻漏

原因は花粉なのか黄砂なのか、ウイルスか。
理由は解らないのですが、咳が長引いて、鼻がつまり、鼻水が喉から落ちるという相談が最近とても多くなっています。
痰はのどに絡んで、黄色く、切れにくいです。
漢方的には、肺に風熱がこもり、湿熱にかわった状態です。
初期は銀翹解毒散で良いですが、ひどい咳が続く場合はそれだけでは難しく、個別に対応する方法になります。
何十年も漢方相談をしていますが、ここまでひどいのは初めてです。
30年くらい前に一度、花粉症がひどくなる年があり、小青龍湯では効き目がでなくて加熱して辛夷清肺湯などをよく使う年がありました。
ただ、その年は原因は明らかにスギ花粉でした。
今回は花粉が原因とは言い切れない部分があります。

422.皮膚病は体にたまる汚れが原因

体内にたまる汚れとして、瘀血、痰湿、気滞がある。
気滞は目に見えない汚れ。
目に見える汚れは、瘀血と痰湿。
これらに熱がこもると、血熱と湿熱になる。
血熱と湿熱は、どちらも皮膚病の原因になる。
ただ、原因が違うので、使う漢方も異なる。
ただ、見分けがつきにくい場合もある。

湿熱の場合は、患部は赤く膨れて、浸出液が出やすく、時に痂皮を作る。
血熱の場合は、患部は赤黒く、掻いて出血すると少し痒みが和らぐ。
湿熱の場合は、舌に厚い苔がつき、湿って、時に黄色い。
血熱の場合は、苔はあまり厚くなく、舌全体が紫がかり、舌の裏側の血管が怒張する。
特徴的なのは脈だ。
湿熱の場合は滑脈といって、滑らかでスムーズな脈だが血熱の場合は渋脈といってギクシャクした脈になる。
湿熱タイプの人は、血流は悪くないのだ。

しかし、実際には湿熱と血熱は同時にある事も多く、両方同時に考えていく事が大切。

421.痰はたまる場所によって症状が違う

中医学のことわざて、「不思議な病気は痰が原因」というのがあります。
痰は、中医学では、水や脂、繊維などが入り混じって、ドロドロとなったものです。
もう少しサラサラのものを飲といいます。
痰と飲をあわせて痰飲と言います。

痰飲はたまる場所によって色々な症状を引き起こします。
脳にたまると、頭がはっきりしない、ブレインフォグなどの症状が出ます。
耳にたまると、めまいや耳つまりをおこします。メニエールなども痰飲が原因と考えます。
鼻にたまると後鼻漏や蓄膿症。
のどにたまると、いわゆる痰です。
腸にたまると下痢になります。
胃にたまると逆流性食道炎の原因になります。
痰飲が固まって、皮下にたまるとガングリオン、子宮にたまり子宮筋腫などになります。

体のあらゆるところにたまり、様々な症状を引き起こすので不思議な病気は痰が原因という理由です。
もちろん、これらの病気の原因がすべて痰飲とは言えません。
しかし、不思議な病気は痰飲を疑って見る必要があると言えます。

420.邪気に負けない体づくり その2

邪気の中には、外から侵入するものだけでなく、体内で作られるものもあります。
私たちの体の中には、気血水が流れていると考えます。
これらの流れがスムーズであれば良いのですが、流れが悪くなるとその部分に汚れがたまります。
これらの汚れが邪気となり、気血水の流れをさまたげ、ますます流れにくくなり、悪循環となります。
ですから、気血水の流れを順調にする事が大切です。

気血水の中では、気の流れに注意する必要があります。
気の流れがスムーズだと血や水の流れも良くなるからです。
気の流れが悪くなる一番の原因は、ストレス、寝不足、運動不足です。
運動は激しい運動は必要なく、ストレッチなど体をほぐすようなものが良いです。
疲れる程の運動ではなく、終わった後に気持ちが良くなるような状態にするのが良いです。
気の流れを良くする食べ物としては、香りの強いものがあります。
例えば、春菊、紫蘇、ニラ、ネギ、薄荷などです。
柑橘類もよいでしょう。


419.邪気に負けない体づくり その1

体外から侵入しようとする邪気を食い止めるのが、衛気です。
文字どおり、防衛する気です。
衛気は、肺と関係が深いです。
肺は体表とつながっているので、当然かも知れません。
ですから、肺を鍛えると、衛気が強くなり、風邪などをひきにくくなります。
登山やトレッキングなど、新鮮な空気の中で肺を鍛えると良いでしょう。
衛気の原料は腎から供給されるので、腎を丈夫にする対策も必要です。
腎の色は、黒。
ですから、黒色の食べ物が腎に良いとされています。
黒豆、のり、しいたけなどです。
また、ネバネバした食べ物、例えば山芋も良いです。
きのこ類は免疫の強化にとても良いものです。

418.清熱解毒薬の働き

体外から入って来た邪気をなかなか追い出せないと、体の中に居座って、熱を持ちます。
また気血水の流れが悪く、滞って出来た邪気も長い間に熱がこもってきます。
このような場合、邪気を外に追い出そうとしてもなかなかうまく行きません。
そこで、邪気を分解するような方法を考えます。
邪気は毒素なので、解毒します。
また、熱をもっているので、これを冷まします。
この時に使うのが、清熱解毒薬というものです。
清熱解毒は効果は良いですが、長時間使うと冷えすぎたり、また正気を傷つけたりします。
ですから、必要な時に必要なだけ使う事が大切です。

417.体内で出来る邪気もある。

病気の原因となる邪気ですが、外から侵入するだけでなく、体内で作られる場合もあります。
体の中には、気血水が流れています。
この流れが滞るとそこで渋滞して、邪気になります。
気の流れが悪くなって出来る邪気を気滞と言います。
水の流れが悪くなって出来る邪気は痰湿と言います。
そして血の流れが悪くなって出来る邪気が瘀血です。
これらの邪気が出来ると、流れの邪魔をして、ますます気血水の流れが悪くなります。
また、これらの汚れや流れは相互に関係しています。

気滞の場合の特徴は、変化が多い事です。
一部分が張る感じ、つまる感じ、そして痛みを伴う事もあります。
ただ、ずっと同じ場所でなく、移動します。
また移動しなくても、1日中ずっと同じ症状ではなく、よくなる時間もあります。
多くはストレスで悪化します。

痰湿の場合は、水の流れが悪いので、むくみが出やすいです。
全身のむくみは少なく、体の一部分のむくみが多いようです。
痰湿を見分けるのに大切なのは、舌の状態です。
痰湿が多いと、舌が大きくなり歯型がつきやすくなります。
また舌の上の苔も厚くなります。

瘀血の場合は血流が悪くなり、痛みが出やすくなります。
しびれ、冷えなどを伴う事か多いです。
時にその部分の色が変化して、紫色やどす黒くなります。
瘀血が長く続くと舌も変化して、舌のくすみ、シミ、舌の裏側の血管の怒張などが見られます。
瘀血の特徴は、場所と症状が比較的固定している事です。

それぞれの邪気によって、治療法は全く違います。
一般的には、気滞には開気丸、柴胡疎肝湯などを良く使います。
痰湿には、五苓散、温胆湯などを良く使います。
瘀血は、冠元顆粒や循環元などを良く使います。
体質なども考慮する必要があります。

416.邪気が裏に結するとは?

体内に入り込んだ邪気が胃腸に長く居座ると、大抵は熱に変わります。
熱は水分を奪う性質があり、便が固くなります。
そうすると、潮熱と言って、潮が満ちてくるように全身に大量の汗が出ます。
通常は汗が出ると熱は下がるのですが、潮熱の場合は下がりません。
特に夕方から夜に熱が出る事が多く、光熱が出ます。
朝方は少し熱が下がります。
熱が高い場合は、意識が朦朧としてうわ言を言います。
今なら、こんな状態なら病院の入院して点滴を受けるでしょう。
では、点滴など無い頃はどうしたかというと、意識を回復されるため開窮薬を使います。
牛黄清心丸などが有名です。
次に下剤を使って便を出します。
便が出ると熱は少し下がり、意識もはっきりしてきます。
引き付けを起こしている場合は、羚羊角などを良く使います。
こういった重症の患者さんの治療方は昔の漢方の本に沢山書かれています。
医療の発達した今の日本では使う機会はまず無いと思います。

415.邪気が中に入った!

体表から入った邪気はうまく追い出せないと中に入っていきます。
ただ、一部の邪気は表からでなく、直接中に入ります。
例えば、口から侵入して胃腸に居座る邪気です。
胃腸風邪とか、食中毒などと言ったものと考えて下さい。

邪気が胃腸に入った場合の症状は、嘔吐、下痢、腹痛になります。
中医学的には、嘔吐、下痢の初期は嘔吐、下痢は止めないで、悪いものを全部出してしまいます。
ある程度悪いものが出たら、体力を消耗しないように下痢や嘔吐を止めても良いと考えます。
さて、邪気が胃腸に入った場合に最もよく使うのが藿香正気散、勝湿顆粒です。
前回おすすめした葛根湯、銀翹解毒散とともに備えておくと良い漢方の1つです。

414.邪気を追い出そう!

邪気は病気を起こす悪い気です。
そんなものは要らない。
はやく出ていって欲しいですね。
邪気を追い払う事を中医学では「去邪」と言います。
この去邪にも色々な方法がありますが、何処から邪気が入って来たか、そして邪気の種類を重視します。
風邪や、多くの伝染病は、体表や呼吸器から侵入します。
呼吸器は肺の一部で、肺と体表はつながっていると考えています。
この肺と体表をあわせて「表 ひょう」と言います。
もし邪気が表から侵入した場合、まず最初に行うのは発散する事です。
発散は邪気を体表から追い出すという事です。
この方法を「解表」と言います。

発散作用のあるものは、辛いものが多いとされています。
辛いというと、唐辛子のような物をイメージするかもしれません。
しかし、中医学の辛味はもう少し範囲が広いです。
例えば、玉ねぎ、ネギ、大根、春菊、紫蘇、薄荷、生姜などです。
中医学にはありませんが、ワサビなんかも辛味の強いものです。
ワサビは中国には無かったので、漢方としては取り入れられていません。
ですが、鼻の通りをよくするなどの作用があると思われ、使われないのは大変残念です。
鼻つまりの改善によく使われる麗沢運気湯にはネギが含まれていますが、ワサビを入れるともっと良いのではと思っています。

解表には、温めながら解表する方法と、冷やしながら解表する方法があります。
侵入して来た邪気の種類によって、寒気を起こしやすいものと熱になりやすいものがあります。
寒気をおこしやすいものは、温めて解表します。これが良く知られている葛根湯です。
熱に変わりやすい場合は、冷やしながら解表します、当店でも大評判の銀翹解毒散です。
葛根湯と銀翹解毒散を揃えておけばとりあえず風邪などの初期に対応できます。
ぜひ準備しておきましょう。


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