深谷薬局 養心堂
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471.症状は本質ではない

患者さんから言えば、早く症状を改善したいという気持ちが強いでしょう。
例えば、咳が出るなら咳をとめたい。
かゆみがあるならかゆみをとめたい。
眠れないなら、早く眠りたい。
そうなると、「咳に良い漢方はありますか?」とか、「かゆみに良い漢方はありますか?」「よく眠れる漢方はありますか?」というふうになります。
ただ、どんな咳にも良く効く漢方というものはありません。
どんなかゆみにも良く効く漢方もありません。
飲めばすぐ眠れる漢方もありません。
中医学から見れば症状というものは、結果であり、二次的なものです。
症状が出るのは、必ず原因があります。
漢方は咳を治療するのではなく、原因を治療します。
ですから、「とにかく咳を止める」漢方はありません。
まず、何故、咳が起こるかを考えます。
そして、そのメカニズムを考えます。
これを病因、病機と言います。
例えば、もともと肺が弱い肺気虚の体質の人が無理をして体力が低下します。
肺は免疫と関係して、これを衛気と言います。
衛気が不足すると外邪とかが侵入しやすくなります。
外邪にも色々種類があるのですが、例えば寒さを含む邪気、寒邪が侵入したとします。
ここまでで、弁証は、「肺気虚による風寒外束」と言います。
弁証が決まると治療原則が決まります。
治療原則は、「辛温解表、補肺気」となります。
ここまでを弁証論治と言います。
弁証論治に基づいて、処方を決定します。
この場合、使う処方も体質などにより違いがあります。
風寒外束の場合、よく使うのが桂枝湯や香蘇散です。
寒邪がつよく、汗が出ない場合は葛根湯や麻黄湯も使います。
肺の衛気虚があるので、衛益顆粒を併用するか、咳がなおってから体質改善として続けます。
このように考えると、「咳が出るからこの漢方」と簡単にはいかないのです。

470.正しい漢方の使い方

漢方薬の正しい使い方は弁証論治にもどづいて使います。
弁証論治は中医学の基礎なのでずか、正しく理解するのに半年くらいかかると思います。
例えば、銀翹散の働きを中医学的に言えば、辛涼解表(しんりょうげひょう)になります。
これが中医学的に正しい効能効果です。
ただ、中医学を勉強していない人に、辛涼解表と言ってもチンプンカンプンです。
本当はすべての人に中医学的な予備知識を持ってもらえれば、こちらは説明が簡単なのですが、半年かかる基礎を数分で説明するのは困難です。
それで、仕方なく、現代医学的な解釈で説明します。
漢方の能書もそのようになっています。
ただ、能書に書かれていない事が沢山あります。
漢方薬に西洋医学的な能書をつけるため、矛盾が沢山あります。
効能効果に書かれていなくても効果が出る症状が沢山あります。
効能効果に書かれている症状でも、弁証論治的に違う場合は効果が出ません。
こんな事を言うのは失礼かも知れませんが、漢方の知識が無い人が正しい漢方を選ぶのはかなり難しいと言えます。
同じように、西洋医学の知識しかないお医者さんが正しい漢方を選ぶのも難しいでしょう。
西洋医学と中医学は全く違う医学だからです。

469.老中医への道

中国では経験豊富で熟練した中医師を老中医と言い、皆にとても尊敬されている。
老中医とはどのようなものなのか?

西洋医学と中医学。使う薬の種類が違うがホントの違いはそこではない。
診断が違うのだ。
西洋医学の診断は検査。
レントゲン、エコー、血液検査などなど科学的。
中医学はそんな検査がなかった頃からの医学。
だからもっと原始的だ。
使うのは熟練した五感だけ。
四診と言って望診、聞診、切診、問診に分けられる。
望診は経験豊富な目で患者さんを見る。
経験が深まると、患者さんを見るだけで、体力がなさそうだなぁ、胃腸がよわそうだなぁ、瘀血もありそうだなぁ。とわかるようになる。
そして望診で一番大切なのが舌の状態を見る舌診。
舌本体の色、形、苔の状態など詳しく判断する。
聞診は、匂いをかぐ。病気特有の匂いがある。
切診は、体に触れてみる。
切診の中でも脈診はとても大切。
熟練すれば舌診と脈診でもだいたいの状態が判るようになる。
ここで、問題になるのが「熟練すれば」と言う部分。
中医学は知識だけでは難しい。
30才40才は鼻垂れ小僧。
50才からやっといっちょまえ。
60才以上になると老中医といって皆に尊敬され、大切にされるようになる。
長い、長い道のりなのだ。



468.漢方薬の使い方

西洋医学と中医学を比べると、薬の種類が違うが、それ以外の診断そのものが違う。
中医学の診断に基づいて、漢方薬を使う。これが本当の意味の中医治療。
しかし、最近はどうも西洋医学の診断に基づいて漢方薬が使われる事が多くなって来ているように思う。
確かに西洋医学の診断で漢方薬を選べるなら便利だとは思う。
しかし、それは正しい使い方ではない。
正しい使い方をしないと、効き目が出にくいだけでなく思わぬ副作用が出る事になる。
これは副作用というより、使い間違え。
漢方薬の代表の葛根湯。
実はこれはかなり使い方が難しい漢方だ。

467.頑張れキネシン

最近、NHKの番組によく登場するのがキネシンだ。
キネシンは、細胞の中にあるタンパク質。
ただ、その様子は普通のタンパク質とは全く違う。
まるで生きているようなのだ。
まず、二本の足がある。
二本の足は、「えっちら」「おっちら」と、吸盤でもあるかのように物に張り付いて前に進む。
カワイイ。実にカワイイ。
NHKもこのCGはお気に入りのようで、似たような画像がよく表示されている。
二本の足の上には長いヒモがある。
ヒモの先にはまた吸盤のようなものがあり、これに物をくっつけて運んでいく。
生きているとしか思えない。
こんなものが、一つの細胞の中に無数にあって、働いているのだ。
「働く細胞」というアニメがあるが、キネシンはそれよりもさらに小さい、たった一つの細胞の中の働くタンパク質の話。
たった一つの細胞の中で、沢山の種類のタンパク質がそれぞれの役割で働いている様子はまるで小さな都市のようだ。
いくら科学が進んでも、人間はたった一つの細胞も作れない。
それもそのはず、こんなもの、作れるはずがない。

466.漢方の需要

漢方の需要は私が漢方を初めた頃と比べて随分と変わってきた。
漢方を初めた頃は、病院で治らない難しい病気の人が漢方に頼る事が多かった。
例えば重症の慢性関節リウマチ。
痛み以外にいくつかの関節が変形している事が多かった。
また、アトピー性皮膚炎。
アトピー性皮膚炎の方は今でも相談があるが、当時は今とは比較にならないくらい重症の方が多かった。
C型肝炎もとても多かった。
こういう相談は今は少なくなった。
病因の治療が進歩したというのが一番の理由だろう。
最近の漢方相談は、ストレスによる体調不良、不眠、朝起きられないなどが多い。
また、生活習慣病の改善と予防の相談も多い。
漢方が難病の治療から、予防医学の一貫にシフトしている感じがある。
確かに、病因の治療は血圧が高いなら降圧剤、コレステロールが高いならコレステロールの薬といった対症療法が多い。
これらのものも重症なら必要だけど、それ以前にやはり漢方や食事、運動などで体調管理をする事が大切だと思う。

465.中国ドラマの謎

日本のドラマはとても緻密に作られていて、見ていて矛盾を感じない。
しかし、中国のドラマはおかしな所が満載。
撮影の都合か、急に髪型がかわり、またもとに戻る。
天気もさっきまで晴れていたのに、今は雨になっている。
傘をさしているのに、人影がくっきりと。
中国のドラマはすごいスピードで撮影されて、すごいスピードで放映される。
天気なんか気にしている暇は無いのだ。
日本のドラマに比べて予算はかけているが作りはかなり雑。
でもストーリーは面白い。
細かい事は気にしない人には結構ハマると思う。

464.遺伝子解析と弁証論治

同じ薬を使っても、人により効果が出る人と出ない人がある。
違いは何だろうか?
それは生活習慣と遺伝子の違いだと思う。
実は中医学は昔から、生活習慣と遺伝子を認識していた。
遺伝子という言葉はこそ使わないが「先天の精」という概念があった。
これに生活習慣を加えて、一人ひとりの体質が出来る。
つまり先天+後天=体質となる。
同じ病気でも体質に応じて薬を使い分ける。
これを「弁証論治」と言う。
そうすると、効き目も良いし副作用も少ない。

今までの西洋医学には体質に応じてという考え方はあまり無かった。
最近になって、同じ薬を使っても効果が出る人と出ない人がいるのは何故かという事が議論されるようになって来た。
その原因として遺伝子の違いが認識されるようになって来た。
手法は違うが、西洋医学もやっと弁証論治の考え方を取り入れるようになって来たのだ。
これは非常に良い事だと思う。
弁証論治は中医学だけでなく、西洋医学にももっともっと取り入れられるべきだ。
そうすれば、投与する前から効く薬と効かない薬の区別がつく。
これこそが中医学の弁証論治の精神なのだ。


463.自己相似

図形で自己相似という概念がある。
例えば、シダ。
シダの葉っぱの一部分をちぎって拡大すると、もとのシダの形によく似ている。
一部部が全体と同じ形をしているものだ。
中医学にもちょっと似た概念がある。
例えば、耳。
耳の形は、赤ちゃんが下向きになった形に似ている。
そして、そこに色々なツボがある。
耳の中に全身のツボがあるのだ。
目も、黒目は腎、白目は肺などというように全身の縮図になっている。
舌も、手も足もそうだ。
体の一部分でありながら、全身の縮図になっている。
もっと外を見ると、人間は宇宙の縮図だと言っている。

西洋医学的にも、一つの細胞の中に染色体があり、それがなんと体そのものの縮図になっている。
このように自己相似というものが人間の体にも存在するのだ。
何と面白い事ではないか。

462.弁証論治の必要性は副作用回避

中医学の考え方に「弁証論治」がある。
証とは、体質と病状をあわせたもの。
病気の人がいた場合、その人の証を判断するのが大切という訳だ。
そして証にあわせた治療計画をたてる。
それが論治の部分だ。
弁証論治は漢方の治療効果を上げるのに不可欠なものだ。
ただ、それ以上に大切なのは副作用の回避だ。
よく漢方にも副作用があると言う人がいる。
もちろん、全く無いとは思わないが、その多くは弁証論治をしていないためだ。
漢方には潤すものと乾かすものがある。
体内の潤いが少ない津液不足や陰虚の体質の人が乾かす性質の漢方を長く続けると体内がよけいに乾燥して炎症がおこりやすくなる。
漢方の副作用に記載されている炎症系の副作用は、弁証論治せずに漢方を使った結果だと思う。
体内に余分な水分が多い体質の場合に潤いをもたせるものを長く続けるとむくみが出たり、尿量が現象する場合も考えられる。
こういった事は舌とか脈をみると判断できるのだが、弁証論治せずに、この病気ならこの漢方といった使い方をすると効き目が出ないだけでなく、色々な問題がおこる。
これを簡単に漢方の副作用と片付けてしまうのはどうかと思う。



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