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虚実からみた健脾と消導

胃腸を丈夫にする健脾と、食べたものを消化する消導。
臨床的にはこの2つは明確に区別するのは難しい事が多いのです。
ただ、中医学(中国の漢方)の理論では明確に区別されます。
その違いを一言で言えば、虚実の違いです。
中医学では虚とは、体に必要な物やエネルギーが足りない事。つまり正気の不足。
実とは体にとって必要ない、あるいは毒になるものが多い。つまり邪気が実している。
虚は補い、実は余分なものを取る治療が必要です。
健脾は脾の気を補う方法。消導は、胃腸の実をとる方法となります。
虚と実では、天と地くらいの違いがあるのですが、また虚が原因で実が出来たり、実が原因で虚になったりと、お互いに深い関係もあります。
つまり、胃腸が弱いから食滞がたまり、食滞があると胃腸が悪くなる。
鶏と卵の関係に似ています。
このあたりが中医学の面白さです。
さて、この虚実ですが、日本式の漢方だと、全然違う意味になってしまいます。
虚証とは体力がなく、疲れやすい、やせ気味の人です。
実証とは、体力があり、疲れにくく、体もがっちりとした人です。
私が漢方を勉強し始めた頃はまだ中医学が日本では殆どなくて、みな日本漢方を勉強していました。
そしていつも不思議におもったのは、虚証の人は病気しやすいでしょうけども、実証の人はあまり病気にならないのでは?という事です。
体力はあるし、疲れにくい、体もしっかりした人が、そんなに簡単に病気になるのかな?、という疑問がありました。
そうなら虚証の人向きの漢方薬の方が実証向きの人の漢方よりも多いはずです。
しかし、実際はほぼ半分くらいです。
その点、中医学の方が、実は余分なものがある状態、そして虚は必要なものが足りないという理論は明確です。
そして、多くの場合、一人の人間に虚と実が同時に存在します。
日本式の場合は実証の人は虚証ではないし、虚証の人は実証ではあり得ません。
ですから、虚証向きの処方を実証の人が飲む事は無いし、ましてその2つを併用する事などあり得ません。
しかし、中医学では虚と実を同時に治療する事が多くなります。
中医学に出会って、初めて、日本漢方における虚実の矛盾が払拭されました。
脾についてはここまでとして、次回からは気と肝について考えてみたいと思います。

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