深谷薬局 養心堂

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心について

心は、中医学的には心臓だけでなく脳の働きも心に属させています。
心の働きの主なものは、血液を全身に送りだす働きです。
血液を送り出す力は、心気の力によります。
心気は、宗気と関係しています。
宗気は、主に空気中のエネルギーを得て胸中で作られる気です。
宗気は、心臓を動かす働きと、肺を動かして呼吸をする力の源です。
宗気が不足すると、心臓のポンプの力が弱くなり、呼吸の力が弱くなります。
そのため、動悸、息切れなどが起こります。
心を動かすエネルギーの心気の元になっているのが、心血です。
心血は心に血液を送り、心臓を養っています。
さらに心は腎と肝との関係が深いのです。
心は化火しやすく、この心の火を押さえているのが、腎の水です。
腎水が不足して、心火が亢進する状態を心腎不交といいます。
肝は、自律神経を意味しています。
心は、脳神経ですから、心と肝は非常に密接に関係しています。
「心気虚」
心の気の働きが衰えた状態を心気虚といいます。
心気虚は、心気不足とも言います。
心気虚を起こす原因としては、情志の失調や、先天的に心が弱い、久病、老化などが
考えられます。
心臓のポンプの力が衰えて、動悸、息切れなどがおこります。
また、心は脳の機能も包括していますから、精神衰弱なども心気虚に属します。
主な漢方薬としては、心のポンプの力が低下して場合は、麦味参を用います。
精神が衰弱した場合は、帰脾湯などが用いられます

「心陽虚」
心には、心火といって、体を温めている大切な火があります。
これを君火と言います。
君火は、腎にある相火とともに、体の体温を維持したり、血流を保ったりしています。
君火が衰えている状態を心陽虚といいます。
心陽虚は、心気虚を伴う事が多く、心気虚の症状が見られます。
さらに、君火の力が弱いので、手足の冷え、背中の冷え、時には全身的な冷えが
現れます。
また、冷えると血流が悪くなり、痛みを起こす事もあります。
さらには、水の流れも悪くなり、むくみを起こします。
心陽虚には、乾姜、附子、桂枝など、暖める生薬をよく用います。

「心血虚」
心を養う血液が不足しておこる病態を心血虚といいます。
心血虚は、心血不足とも言います。
心は、心臓のポンプの問題と、神といって、大脳の問題があります。
心血が不足すると、心臓のポンプに問題がおこって、動悸や息切れがおこります。
また、時には胸苦しい感じがする事もあります。
大脳に問題が出ると、不眠、健忘などがおこります。
心血を補う漢方薬としては、当帰、竜眼肉、柏子仁などがあります。
方剤としては帰脾湯が有名です

「心陰虚」
心を養う陰液が不足しておこる病態を心陰虚といいます。
心陰虚は、心陰不足とも言います。

陰液とは、簡単に言えば栄養液のようなものです。
心は、陰液という栄養液で養われています。
この液が不足すると、心の機能に問題が出てきます。
一つは、心臓のポンプの問題です。
主な症状は、動悸、息切れ、胸のつかえなどです。

もう一つは、大脳の問題です。
心は、神を司っています。
神は、意識です。
これは、現代医学的に言えば大脳の問題です。

心陰虚になると、脳を養う栄養が不足します。
このときには、脳の働きが低下して、痴呆症、記憶力や集中力の低下などがおこります。
心の陰液は、心火を押さえる働きがあります。
このため、心の陰液が不足すると、心火が亢進して、不眠、イライラなどが
現れる事があります。
心の陰を補う代表的な方剤は、天王補心丹です。

「心血淤阻」
心血淤阻は、血脉淤阻ともいいます。
血液がよごれを淤血といいます。
淤血によって血液の流れが悪くなった状態を血淤と言います。

血淤は体の至る所に現れる可能性がありますが、特に心臓によく現れます。
現代医学でいう狭心症などは心血淤阻と考えても良いでしょう。

心血淤阻の症状は、針で刺すような胸の痛みです。
これがひどくなると、絞られるような痛みになります。
心血淤阻の代表方剤は、冠元顆粒、血腑逐於湯などです

「痰濁淤阻心脈」
痰濁とは、簡単に言えば余分な脂の事です。
中性脂肪やコレステロールなどです。

こういった汚れが、心臓の血管につまった状態を痰濁淤阻心脈と言います。

痰濁は、淤血と結び付きやすく、淤血と痰濁の両方が心脈につまったものを
痰淤互阻心脈と言います。

症状は、心胸部の息苦しさ、痛み、動悸、息切れ、時に痛みの発作などです。

苔は、厚く、膩苔です。
やや化熱すると、黄膩苔になります。
脈は、滑脈ですが、痛みが強いと弦脈、症状が重いと、時に沈細になります。

治療方法は、化痰して心脈を通じる方法になります。

半夏、瓜呂仁、枳実、薤白などを用います。
また、痰淤互阻心脈の時は、川きゅう、丹参、赤芍など活血化淤薬と同時に用います。

「大気下陥」
胸中にある、呼吸と心臓の鼓動の原動力は、宗気と言われています。
この宗気は、大気とも言います。
食事の中の気と、鼻から呼吸した空気中の気が合わさってできたものです。
この気が不足すると、動悸、息切れが起こります。
大気は、胸中にあるのが正常です。
しかし、この気が不足した時に、胸中から、下に落ちてしまう事があります。
このような病理状態を大気下陥と言います。
主な症状は、呼吸困難です。
特に、大気下陥の場合は、息を吐くのが辛い状態です。
脈は尺脉が弱くなります。

主な処方は、昇陥湯です。昇陥湯が無い場合は、補中益氣湯で代用します。

「痰迷心竅」
痰濁という毒素は、脂と水が混ざったようなものです。
この痰濁が心に入り込み、心竅を塞いだものを痰迷心竅といいます。

心には、血液を送り出す心臓としての役割と、大脳の役割があります。
後者を特に「神」といっています。
「神」の働く場所を特に「心竅」といっています。
「竅」は、あなという意味です。
心の窓というように、「神」と外界は「竅」というあなでつながっていると考えています。
ここに、痰濁という毒素が入り込んで、この大切なあなをふさいでしまった状態が痰迷心竅です。

痰迷心竅の特徴は、意識障害です。
その他に、のどに痰がつまった感じがして、舌は白膩、脈は弦滑になります。
痴呆、ひとりごと、泣いたり笑ったりする、などの症状があらわれます。

治療は、半夏、胆南星などを用います。

「痰火擾心」
痰濁という毒素は、脂と水が混ざったようなものです
痰は湿よりも粘っこいものです。
病理的には、湿が熱せられて、煮詰まって粘っこくなると考えられます。
このため、痰は火と結びつく事が多くなっています。

痰が、心竅という部分に入り込んだものを痰迷心竅といいますが、
痰迷心竅の症状と一緒に、火が心を脅かす状態があるものを痰火擾心と
いいます。

痰火擾心の主な症状は意識障害です。
精神病の一部分に見られます。
例えば精神分裂病などです。
精神が錯乱して、暴れ出すなどの症状です。
また、熱病などの場合にも現れる事があります。

治療は、胆南星、牛黄、黄連、瓜楼仁、蒙石、大黄などを用います。

「心神不寧」
心神不寧(しんしんふねい)は、心が安まらない状態をさしています。
これは、一つの状態を指すもので、正確には弁証とは違います。
弁証は、病気をおこしている原因を分析していくものです。
心神不寧は、病気の原因というよりは、病気の結果、つまり症状を意味しています。

心神不寧を起こす原因としいは、心気が著しく消耗した心気虚と、心血が不足して
心気を養えなくなった場合によく起こります。
また、肝火や胆火が原因で、心火に影響を与えて起こる事もあります。

心神不寧の治則は養心安心です。
心気虚に傾く場合は、帰脾湯を用います。
心血虚に傾く場合は、柏子養心丸を用います。

「心腎不交」
心と腎は、密接な関係があります。
腎の中には火と水があります。
この火は、心の火を補っています。
また、腎の水は、心の火が燃えすぎないように抑制しています。

もし、腎の働きが悪くなり、腎の水が心火を押さえられなくなった場合、心腎不交が
おこります。

症状としては、不眠、耳鳴り、イライラ、口渇などです。

よく使われる処方は、黄連阿膠湯と天王補心丹です。



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