タイトル一覧
開竅薬
中医学には開窮薬という概念があります。
竅とは穴の意味です。
人間の体には9つの穴があるとされています。
この穴を通じて体は外界と意志を疎通させています。
この穴が塞がってしまうと、意志の疎通が出来なくなります。
この代表例が意識不明です。
この時、穴を開いて意識を回復するのが開窮薬です。
意識不明ほど重症ではなくても、頭がぼーっとする、目が見えにくい
耳が聞こえにくい、匂いが解らないなどの場合にも開窮薬を使う場合もあります。
安神薬
安神薬は、神を安んずる薬です。
では、神とは何でしょうか?
中学では、脳の働きを各臓器に分担しています。
その中で、心に蔵するのが神です。
意識に近いもので、神が無いとすぐに死んでしまいます。
また、神は不安に弱く、何かかるとすぐにびくびくします。
それで神を安んずるのが安心薬です。
安神薬には2種類あります。
一つが重鎮安心薬というものです。
竜骨、牡蠣、磁石など重いものをよく使います。
重いものは下に沈む性質があるので、上に登った気を下に降ろすような作用があります。
これに対して、養心安神薬は植物系の生薬を使う事が多く、心を丈夫にする事で神を安んじます。
神は心に住んでいます。いわば、心は神の家なのです。家がボロボロだと神は落ち着いている事が出来ず、絶えず不安になります。
家を丈夫にすると、神は不安が無くなり落ち着いて生活する事が出来ます。
補益剤
補益剤は、一口で言えば補う方剤です。
何を補うかによって、補気薬、補血薬、補陰薬、補陽薬に分けられます。
さらにどの部分、どの臓腑を補うかによって非常に多くのものがあります。
例えば気を補う補気薬ですが、脾を補う四君子湯、四君子湯に昇堤作用を加えた補中益気湯、心を補う麦味参顆粒、肺を補う双料参茸丸、腎を補う八味地黄丸などがあります。
血を補うものとしては、婦宝当帰膠が有名です。
陰を補うものとして腎と心の陰を補う天王補心丹や肝と腎の陰を補う杞菊地黄丸、肺と腎を補う八仙丸、脾の陰と気を補う健脾散顆粒などがあります。
陽を補うものとしては腎陽を補う海馬補腎丸が有名です。
表裏双解薬
表裏双解薬とは、その名のとおり、表証と裏証を同時に治療する方財です。
外邪は一般的には表から進入して半表半裏を経て裏に入り込むので、表証と裏証が同時に存在するケースは少ないと考えられます。
ただ、これはあくまでも理論上の話で、実際の臨床では表証と裏証が同時に見られる事もしばしばあります。
例えば、
邪気が裏に至ったところにまた新しい邪が表に入り込んだ。
慢性的に裏実の状態がある体質の人が新感の邪気を拾った
裏に入り込んだ邪気の一部がまた表に戻った
半表半裏に入り込んだ邪気が裏と表に伝わった
理論では説明できないケース
などがあります。
表裏双解薬の代表は防風通聖散です。
日本ではダイエットの漢方として有名ですが、脂肪を落とす為のものではありません。
裏に入り込んだ邪気を大便から、また表にある邪気を発散して解表するという両方の薬味が配合されています。
温裏薬
中医学で裏とは体の中側です。
ですので、温裏薬とは体の中側を温める薬という事になります。
体の中側が冷えるのは2つのパターンがあります。
一つは、冷たい邪気が体内に入りこんだ場合
もう一つは、熱を作る力が弱い場合です。
温裏薬は、どちらかというと前者に使います。
後者の場合は陽気を補う助陽薬、補陽薬と表現する事が多いようです。
ただし、助陽薬、補陽薬でも、脾とか腎は体内の裏の部位にあるので温裏薬と言う事もあります。
温裏薬の代表は安中散や当帰四逆加呉茱萸生姜湯、呉茱萸湯などです。
人参湯は脾の陽虚に使うので助陽薬ですが温裏薬に分類される事もあります。
食べ物では、トウガラシ、胡椒、ニンニクなどのスパイスなどがこれに相当します。
去暑薬
去暑とは、暑気あたりの治療です。
熱中症、日射病などが主ですが、一部の伝染病も含んでいた可能性もあります。
暑邪は、湿と熱が合わさったものです。
湿熱との違いは湿熱は体の中で作られる邪気で、暑邪は外邪の一種で外からやってくる邪気です。
解暑薬の代表としては、蓮の葉の荷葉とか、藿香、薄荷など香りの強いものです。
外邪なので軽く発散して、また気の流れを良くして水をさばく作用があります。
方剤としては藿香正気散とか、清暑益気湯が有名です。
熱がこもってしまった場合は滑石や石膏が含まれるものが使われ、例えば白虎加人参湯があります。
清熱薬
清熱薬は体の熱を冷ます作用のものです。
どの部位の熱をとるかをよく考えて使う事が大切です。
風邪やインフルエンザの初期などは、体表または肺経に熱があります。
この場合は、辛涼解表という方法で発散しながら熱をとります。
金銀花、連翹、薄荷などです。
体内に熱がこもっている場合は、肺、肝、心、胃、大腸、小腸、膀胱、胆などに分けて考えます。
脾と腎の熱は少ないですが、糖尿病などでは見られます。
肺に熱がこもる場合は石膏や枇杷葉をよく使います。
心の熱は黄連、苦参、肝の熱は竜胆、茵ちんなどをよく使います。
それぞれの臓腑には特徴的な働きがあるので、今、どの臓腑に熱がこもっているか正しく判断して、適切な処方を使って行く事が大切です。
和解薬
急性病の場合、邪気が表から少し内部に入り込み、裏まで行かない状態にある場合、
これを半表半裏に邪気がある状態と考えます。
経絡的には三焦経や肝経に邪気がある状態です。
この時によく使うのは柴胡を含んだ処方です。
邪気がやや表よりの場合は柴胡桂枝湯を、邪気が裏よりの場合は大柴胡湯を考えます。
ちょうど半表半裏に邪気ある場合は小柴胡湯をよく使います。
慢性病の場合でも、邪気が肝経や三焦経にあると考えられる場合はこれらの処方を使います。
和解薬は、多くは気と水の流れを改善するものが多いです。
ですので、やや乾かす性質があるものが多いです。
苔が白く、厚くなっていて、口がまずいなどの症状がある人に適しています。
瀉下薬
瀉下薬というのは、簡単に言えば下剤です。
どんな時に瀉下薬を使うかは、基本的にはお腹に邪気がたまっている時です。
慢性的な便秘のような場合は麻子仁丸など腸を潤しながら便を出すものを使います。
邪気が表から裏に入り込んだ場合も邪気を追い出すために瀉下薬を使います。
代表的なものが大承気湯です。
急性病で、高熱で全身から発汗して意識が朦朧とする場合に大承気湯で下すと
意識がはっきりして、熱も下がる事があります。
ただ、現在ではこのような重症の方は入院されていますし、西洋医学の治療が優先されて大承気湯が使われる事はまずありません。
大承気湯は腸の熱をとる作用が強く、腸の熱は肺の熱とも関係しています。
肺と大腸は表裏です。肺は臟なので蔵するだけで出口がありません。臟の熱は体温する腑から出すという治療原則があり、肺の熱は大腸から出すという治療法則になります。
また、下痢をしている時に瀉下薬を使うケースもあります。
これを引勢利導と言います。
腸の中の毒素が原因で下痢をする場合、瀉下薬で早く毒素を排出させれば自然に下痢は治まるという考え方です。
解表薬
邪気が体表にあるときは、発汗させる事によって邪気を追い出す方法が一番手っ取り早い方法です。
邪気が体表にあるのに、下法や利尿を使うと邪気を体内に引き込んでしまい、病気が長引く可能性もあります。
邪気が体表にあるとは、悪寒、発熱、頭痛、節々の痛みがあり、脈が浮の場合です。
これ以外の場合でも解表薬を使う場合もあります。
肺気不宣で、咳が出る場合とか、蕁麻疹など発疹がある場合などです。
解表薬には辛温解表薬と辛涼解表薬があります。
邪気が寒邪の場合、温めながら汗を出して邪気を追い出す方法を使います。
これを辛温解表と言い、葛根湯とか麻黄湯などが有名です。
もし邪気が熱邪の場合は、辛涼解表薬を使います。
代表的なものが、銀翹散です。
寒邪と熱邪の1番の違いは寒気があるかどうかです。
体表の邪気が寒邪の場合は寒気が伴い、節々の痛みなどを伴う事が多いです。
これに対して体表の邪気が熱邪の場合は熱感を伴い、喉が渇きます。
喉の痛みは風熱型に多いですが、風寒でも喉の痛みが出る事もあります。
次のページ
トップページに戻る