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244.表裏双解薬
表裏双解薬とは、その名のとおり、表証と裏証を同時に治療する方財です。
外邪は一般的には表から進入して半表半裏を経て裏に入り込むので、表証と裏証が同時に存在するケースは少ないと考えられます。
ただ、これはあくまでも理論上の話で、実際の臨床では表証と裏証が同時に見られる事もしばしばあります。
例えば、
邪気が裏に至ったところにまた新しい邪が表に入り込んだ。
慢性的に裏実の状態がある体質の人が新感の邪気を拾った
裏に入り込んだ邪気の一部がまた表に戻った
半表半裏に入り込んだ邪気が裏と表に伝わった
理論では説明できないケース
などがあります。
表裏双解薬の代表は防風通聖散です。
日本ではダイエットの漢方として有名ですが、脂肪を落とす為のものではありません。
裏に入り込んだ邪気を大便から、また表にある邪気を発散して解表するという両方の薬味が配合されています。
243.温裏薬
中医学で裏とは体の中側です。
ですので、温裏薬とは体の中側を温める薬という事になります。
体の中側が冷えるのは2つのパターンがあります。
一つは、冷たい邪気が体内に入りこんだ場合
もう一つは、熱を作る力が弱い場合です。
温裏薬は、どちらかというと前者に使います。
後者の場合は陽気を補う助陽薬、補陽薬と表現する事が多いようです。
ただし、助陽薬、補陽薬でも、脾とか腎は体内の裏の部位にあるので温裏薬と言う事もあります。
温裏薬の代表は安中散や当帰四逆加呉茱萸生姜湯、呉茱萸湯などです。
人参湯は脾の陽虚に使うので助陽薬ですが温裏薬に分類される事もあります。
食べ物では、トウガラシ、胡椒、ニンニクなどのスパイスなどがこれに相当します。
242.去暑薬
去暑とは、暑気あたりの治療です。
熱中症、日射病などが主ですが、一部の伝染病も含んでいた可能性もあります。
暑邪は、湿と熱が合わさったものです。
湿熱との違いは湿熱は体の中で作られる邪気で、暑邪は外邪の一種で外からやってくる邪気です。
解暑薬の代表としては、蓮の葉の荷葉とか、藿香、薄荷など香りの強いものです。
外邪なので軽く発散して、また気の流れを良くして水をさばく作用があります。
方剤としては藿香正気散とか、清暑益気湯が有名です。
熱がこもってしまった場合は滑石や石膏が含まれるものが使われ、例えば白虎加人参湯があります。
241.清熱薬
清熱薬は体の熱を冷ます作用のものです。
どの部位の熱をとるかをよく考えて使う事が大切です。
風邪やインフルエンザの初期などは、体表または肺経に熱があります。
この場合は、辛涼解表という方法で発散しながら熱をとります。
金銀花、連翹、薄荷などです。
体内に熱がこもっている場合は、肺、肝、心、胃、大腸、小腸、膀胱、胆などに分けて考えます。
脾と腎の熱は少ないですが、糖尿病などでは見られます。
肺に熱がこもる場合は石膏や枇杷葉をよく使います。
心の熱は黄連、苦参、肝の熱は竜胆、茵ちんなどをよく使います。
それぞれの臓腑には特徴的な働きがあるので、今、どの臓腑に熱がこもっているか正しく判断して、適切な処方を使って行く事が大切です。
240.和解薬
急性病の場合、邪気が表から少し内部に入り込み、裏まで行かない状態にある場合、
これを半表半裏に邪気がある状態と考えます。
経絡的には三焦経や肝経に邪気がある状態です。
この時によく使うのは柴胡を含んだ処方です。
邪気がやや表よりの場合は柴胡桂枝湯を、邪気が裏よりの場合は大柴胡湯を考えます。
ちょうど半表半裏に邪気ある場合は小柴胡湯をよく使います。
慢性病の場合でも、邪気が肝経や三焦経にあると考えられる場合はこれらの処方を使います。
和解薬は、多くは気と水の流れを改善するものが多いです。
ですので、やや乾かす性質があるものが多いです。
苔が白く、厚くなっていて、口がまずいなどの症状がある人に適しています。
239.瀉下薬
瀉下薬というのは、簡単に言えば下剤です。
どんな時に瀉下薬を使うかは、基本的にはお腹に邪気がたまっている時です。
慢性的な便秘のような場合は麻子仁丸など腸を潤しながら便を出すものを使います。
邪気が表から裏に入り込んだ場合も邪気を追い出すために瀉下薬を使います。
代表的なものが大承気湯です。
急性病で、高熱で全身から発汗して意識が朦朧とする場合に大承気湯で下すと
意識がはっきりして、熱も下がる事があります。
ただ、現在ではこのような重症の方は入院されていますし、西洋医学の治療が優先されて大承気湯が使われる事はまずありません。
大承気湯は腸の熱をとる作用が強く、腸の熱は肺の熱とも関係しています。
肺と大腸は表裏です。肺は臟なので蔵するだけで出口がありません。臟の熱は体温する腑から出すという治療原則があり、肺の熱は大腸から出すという治療法則になります。
また、下痢をしている時に瀉下薬を使うケースもあります。
これを引勢利導と言います。
腸の中の毒素が原因で下痢をする場合、瀉下薬で早く毒素を排出させれば自然に下痢は治まるという考え方です。
238.解表薬
邪気が体表にあるときは、発汗させる事によって邪気を追い出す方法が一番手っ取り早い方法です。
邪気が体表にあるのに、下法や利尿を使うと邪気を体内に引き込んでしまい、病気が長引く可能性もあります。
邪気が体表にあるとは、悪寒、発熱、頭痛、節々の痛みがあり、脈が浮の場合です。
これ以外の場合でも解表薬を使う場合もあります。
肺気不宣で、咳が出る場合とか、蕁麻疹など発疹がある場合などです。
解表薬には辛温解表薬と辛涼解表薬があります。
邪気が寒邪の場合、温めながら汗を出して邪気を追い出す方法を使います。
これを辛温解表と言い、葛根湯とか麻黄湯などが有名です。
もし邪気が熱邪の場合は、辛涼解表薬を使います。
代表的なものが、銀翹散です。
寒邪と熱邪の1番の違いは寒気があるかどうかです。
体表の邪気が寒邪の場合は寒気が伴い、節々の痛みなどを伴う事が多いです。
これに対して体表の邪気が熱邪の場合は熱感を伴い、喉が渇きます。
喉の痛みは風熱型に多いですが、風寒でも喉の痛みが出る事もあります。
237.臓腑辨証
臓腑辨証は慢性病では1番よく使われる辨証方法で、急性病でもよく使います。
人間の身体を五臓と五腑に分類します。(経絡は六臟六腑)
五臓は、肝、心、脾、肺、腎です。
肝は肝臓以外に自律神経や目と関係します。
心は心臓以外に、脳の働きも含みます。
脾は胃腸の消化、吸収と代謝です。
肺は肺だけでなく皮膚とも関係があり、免疫と関係します。
腎は腎臓以外には、子宮とか精巣、また骨、髪の毛、耳など老化とも関係しています。
人間はこれら全部が丈夫なら問題はありませんが、どうしても弱い部分があります。
これらの部分の機能が低下したり、また低下した場所に汚れがたまったりして病気がおこると考えます。
また、急性病のような場合は外から来た邪気が色々な臟を直接攻撃します。
臟は「貯蔵」の意味があり、正気を貯める場所と考えます。
これに対して腑は中空の管のようなもので、中身を運ぶ性質があります。
胃、大腸、小腸、胆、膀胱などです。
これらの働きは現代医学の考えとほぼ共通しています。
236.気血津液辨証
六経辨証、衛気営血辨証、三焦辨証が病気がどの場所にあるかを判断する方法でした。
これを定位と言います。
これに対して、気血津液辨証は定性といって、病気の性質を調べる物です。
気については、不足している気虚と流れが悪くなっている気滞があります。
気虚はエネルギー不足です。
一口にエネルギーと言っても色々な種類があります。
筋肉を動かすエネルギー、胃腸を働かせ食べた物の消化や吸収を行うエネルギー、肺や心臓を動かすエネルギー、考える力、尿を出す力など様々なエネルギーが私たちの体内で働いています。
これらの力が不足している状態が気虚。そして働きがスムースに行かないものを気滞と言います。
免疫機能や自律神経なども気の一部と考えます。
血は不足している血虚と汚れがたまった瘀血があります。
また血流の悪い状態を血瘀と言います。
津液とは栄養液とか身体の潤いを意味します。
潤い不足の津液不足と、汚れた水がたまった痰湿があります。
ただ、津液不足と痰湿は同時におこる事があります。
身体に必要な潤いは足りなくて余分な水が多いという事です。
235.衛気営血辨証
衛気営血辨証は、温病を治療するために考え出されたものです。
急性伝染病には、悪寒がつよくて後に発熱してくる傷寒型と、悪寒はあまりなく熱寒がつよくすぐに発熱する温病型があります。
この2つはあまり区別されていませんでしたが、金・元の頃になると、区別した方が良いという考え方が一般になってきます。
その後、明・清の時代になってやっと「温病」という一つのカテゴリーが出来て温病の治療方針として衛気営血辨証がうまれます。
衛気営血辨証は、清代の葉天士という人が「温熱論」という書物の中に書かれている辨証方法です。
病気の初期を衛分といいます。
この次期は少し寒気があり、まだそれほど熱は出ていません。
体表の邪気を発散してとりさる方法を使いますが、傷寒のように温める処方は使いません。
考え出されたのは辛涼解表という方法です。
薄荷などを主に使い、冷やしながら発散する方法です。
気分証になると、熱がつよくなり、呼吸もあらくなり、汗が沢山でます。
この次期は清熱を主にして、白虎湯などが使われます。
ただ、邪気が何処に入ったかによって病状は違い、気分証の治療は1番複雑となります。
さらに邪気が一歩すむと、営分にはいります。
この次期になると、意識障害が出たり斑疹が出たりします。
ただ、この次期はまだ邪気を気分に引き戻す事が可能な状態です。
さらに深い血分になると病気の最終段階となり、涼血解毒という方法で対応する事になります。
傷寒と温病は確かに共通する部分もありますが、違う部分も多く、傷寒の治療を温病に当てはめるのは妥当では無いと考えます
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