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多嚢胞性卵巣

生理不順で病院にかかって、多嚢胞性卵巣と診断される方が多くあります。
病院の場合は、妊娠希望の場合は排卵誘発剤、妊娠希望でない場合はホルモン剤で生理をおこす方法になります。
どちらも即効性はありますが、多嚢胞性卵巣そのものを治しているとは言えません。
漢方で多嚢胞性卵巣は卵巣に汚れがたまり卵巣が固くなっている状態と考えます。
ですから、卵巣の汚れを綺麗にして卵巣を柔らかくするような方法を考えます。
このようにすると、多くの方が自然に排卵するようになってきます。
ある人の例です。
10代のころから、少量の出血が半月以上つづいていたそうです。
20才になってからはずっとピルを服用していて、クロミッドを飲まないと排卵しない状態でした。
血液検査では
プロラクチン  刺激前 14.9  刺激後  230
LH      刺激前  8.2  刺激後  41.9
FSH     刺激前  6.5  刺激後  10.3
との事です。
刺激後のプロラクチンとLHがかなり高いようです。
体に溜まっているものを出してくれるような漢方や『気』の流れを改善する漢方などをおすすめしました。
漢方を服用して2ヶ月。排卵誘発剤を使わないで体温が上がり、14日ほどで生理が来て体温が下がりました。
今はお医者さんには行っていないので、確実に排卵したかは解りません。
ただ基礎体温的にはまず排卵したと思われます。

邪実について

邪実とは、体内に余分なものがあり、それが病気の原因となっている事です。
また、今は病気まではいかなくても将来的に病気の原因になる可能性がある場合も含みます。
邪実は一般的には「外因」「内因」「不内外因」があります。
外因は六因とも言い、「風、寒、暑、湿、燥、火」をさします。
内因は六鬱とも言い「気鬱、血鬱、痰鬱、湿鬱、食鬱、火鬱」です。
不内外因は、食事の不摂生、過労、運動不足などです。
さて、過労、運動不足、食事の不足などは邪実とはいいません。
そうすると、食事の不摂生は食滞と考えます。これは食鬱と同じ意味になります。
外因は外からやってくる邪気で急性病に多いものです。
ただ、このブログで以前のべたように宿邪(伏邪)として体内に長く居座る場合があり、内因と外因の明確な区別は必要ありません。
そうすると、邪気は次のように整理されます。
目に見えない邪気
風(風寒 風熱) 寒凝 気滞 火 燥
目に見える邪気
瘀血 食滞 痰 湿 湿熱
まず、この10種類の邪気が体内にあるかどうかを先に判断します。
何故なら、邪気の種類によって辨証論治(病気の判断や治療)の方法がかわってくるからです。

左は血、右は気・水

左右の脈を比べてみると、左の脈が弱い事が多いようです。
これは心臓が左がわにある事に起因しています。
ちょっと考えると、左の方が心臓に近いので脈は強くなりそうです。
しかし、左は心臓から出た血液が急カーブで左手に流れていきます。
これに対して右手へ行く血管のカーブは緩やかなので、右手の方が血流がよくなる事が多いのです。
このように、「血」にかかわる部分は左に症状が出やすいのです。
ですから、中国医学は「左は血」と考えます。
中国医学的に左の脈が弱い場合は、「血虚」の場合と「瘀血」の場合があります。
どちらの場合も血液の流れが悪くなるので、まず左に症状が出やすいのです。

血虚と貧血

中国医学では、血の不足を血虚といいます。
この血虚は貧血と似ているけども違いがあります。
貧血は、血液を採血して、その成分が濃いか薄いかをみるものです。
血液が濃くても量が少ない場合もあります。
また血液が薄くても量が多い場合もあります。
血虚とは、血液の量が少ない事を言います。
血液の量は、血流計などを使って1分間の血流量を量る事である程度推測出来ます。
また、慣れてくると、望診(顔色、舌の色、つめの色)や脈診で血虚があるかないか判断出来るようになります。
貧血がある人でも、血液の量が多い場合は血虚の症状はあまり現れません。
逆に貧血とは言われなくても血液の量が少ない時は血虚の症状が出て来ます。
ですので、体にとっては貧血よりも血虚を重視した方が良いのですが、貧血が数値で出る客観的な指標にたいして、血虚は中医師の判断にゆだねられます。
このため判断にバラツキが出てしまうのが難点です

季節による加減

中国の明の時代の奇効良方という本の四物湯の所に季節による加減がのっています。
面白いのでご紹介します。
春 川きゅうを2倍にする。必要におうじて防風を加え防風四物湯とする。
  春は脉が弦になり、頭痛がよく起こる。
夏 芍薬を2倍にする。必要に応じて黄岑を加え黄岑四物湯とする。
  夏は脉が洪になり、下痢がよく起こる。
秋 地黄を2倍にする。必要に応じて天門冬を加え門冬四物湯とする。
  秋は脉が沈澀で血虚となる。
冬 当帰を2倍にする。必要に応じて桂枝を加えて桂枝四物湯とする。
 冬は脉が沈となり、寒くて食べられなくなる。
脉は季節に応じて変化します。ここにある四季の脉はみな標準的な脉です。
今は暖冷房が完備しているので季節による加減はあまり行われなくなりました。
それでも人間の体は四季に応じて変化しています。
ですので、季節を考えて漢方を選んでいく事はやはり必要です。

漢方を飲む時間

最近、よく質問される事として漢方薬を飲む時間があります。
いつ飲むのが良いのか、どの時間に飲むと効果的かという事です。
その前に、まず、はっきりと理解していただきたいのは、特殊な場合を除いて、飲む時間はあまり重要ではないという事です。
それより大切なのが、ちゃんと飲む事です。
例えば食前に飲む予定が飲み忘れてそのままになってしまう。
これではせっかくの漢方薬は何にもなりません。
まず、時間にこだわらず決められた回数、決められた量を飲む事です。
毎日、忘れずにちゃんと飲めて、さらに時間にも余裕がある場合、それから時間にこだわって下さい。
一般的には空腹時の飲むと、一気に吸収されます。
ただし、効いている時間は短くなります。
食後に飲むとゆっくりと吸収されます。
この場合、効いている時間は長くなります。
ですので結局は同じ事になります。
ただ、もし風邪などの場合とか、頭痛がひどいなど、今すぐに治したいという場合は空腹時に飲みます。
これに対して、長期間飲む体質改善などの場合は、空腹時でも食後でもあまり大きな差はありません。
ただし、「なんとなく効いている感じ」というのは空腹時の方があると思います。
これに対して胃が弱い場合などは食後に飲むようにするといいでしょう。
これとは別に、補腎薬などは寝る前に飲むと効果があります。
ホルモンの分泌は寝ている間に多くなります。
ですのでホルモンの分泌を助けるような補腎薬は寝る前が効果的なのです。

冷えの改善と暖める事

よく冷え症の人が、体が冷えないように何枚も靴下をはいたり、カイロをいくつも体にはっています。
勿論、体温を維持していく事は必要な事です。
しかし、たいして体が冷えていないのにいつも厚着でいたり、カイロを貼る人があります。
その事が冷えの改善につながると思い込んでいる人もあります。
しかし厚着は決して体質改善にはなりません。
もともと、人間の体は体温を一定に保とうとする働きがあります。
もし常に厚着をしていたりカイロを沢山はっていたら、この働きが弱くなってしまい自分で熱を作りにくくなってしまいます。
これでは体質改善どころか、逆効果になります。
寒い時でも少し薄着になって運動する事は大切です。
熱をつくるには酸素が必要です。
酸素を取り込むには運動が効果的です。
過度の運動はおすすめしませんが、ある程度の代謝を維持するために運動は不可欠です。
冬の寒い時、雪合戦をした後、指がじんじんとしますがその後、不思議とポカポカしたのを覚えていませんか?
勿論、あまりやせがまんして体調を壊しては困ります。
少しずつ、寒さに慣らす感じで体を鍛えて見て下さい。

筋・肌について

中国で一般的に使われている中医学の用語と、日本語では微妙な食い違いがあります。
例えば中医学でいう「筋」。
これは日本語の筋肉の意味ではありません。
「筋」は、日本語の「すじ」に近いものです。
現代医学でいう所の「腱」とか「神経」「筋膜」などをさしています。
肌は、日本でいう所の皮膚ではなくて、「筋肉」を意味します。
中国語では肌肉と肌は同じ。どちらも日本語の筋肉(きんにく)を意味します。
例えば日本語の上腕二頭筋は、中国語では上腕二頭肌となります。
この筋と肌の意味の違いが分からないと、大きな間違いをしてしまいます。
例えば中医学では「肝は筋を司る」と言います。
ここで筋を筋肉ととらえて、筋肉の病気を肝と考えると間違えてしまいます。
この場合の筋は、運動神経に近いものです。
特に、錐体外路系の障害などは肝と関わりが深いものです。
「脾は肌を司る」
脾は胃腸の消化吸収ですから、胃腸の働きが良く成ると皮膚が綺麗になる...という事ではありません。
このの肌は筋肉ですから、筋肉の萎縮などは脾虚と関係があるよ、という意味になります。
このように中国語と日本語で微妙に意味が違う場合、特に注意が必要です。

体力があるかないか...について

漢方の効能効果の所に「比較的体力があり...」とか「体力中等度以下で.....」とか、「体力虚弱で...」とか書かれています。
しかし、この表現はあまり正しいとは思えません。
日本漢方では体力のある人を実証、体力の無い人を虚証といます。
そして、この漢方薬は実証向けだから、君には合わないとか、君は虚証だからこの漢方が合うといった言い方をしています。
しかし、中医学では、実は邪実で、邪気がたまったものです。
正気がたまった場合は、体力はあっても病気にはなりません。
邪気は病気の原因になりますから、邪実の場合は邪気をとる漢方薬を使います。
これを瀉剤といっています。
日本漢方では殆どの瀉剤には「比較的体力があり」と記載されています。
しかし、体力が無い人にも邪気はたまります。
中医学の用語でも「邪のある所、その気必ず虚する」というものがあります。
つまり正気の不足があるから、邪気がつけこんで入ってくるのだという事です。
もし正気が充分なら、邪気を跳ね返す力があるはずです。
(よほど強力な邪気は別です)
この事から、体力が無い人にも瀉剤が必要な事はよくあります。
ですから、体力が無い人にも「比較的体力があり」と記載されている、例えば桂枝茯苓丸などが必要な事はよくあります。
ただし、瀉剤は補う力がありません。
正気の不足がある場合は、正気の不足を補う必要があります。
このような処方は補剤といわれます。
補剤には「体力虚弱で」と記載されています。
一般的に病気の人は、先ほども言ったように、邪気の存在(実)と正気の不足(虚)が混在している事が多いのです。
つまり、日本漢方式に考えると「比較的体力がある」ものと「体力虚弱で」という2つの処方を同時に使う事になります。
どうしてこのようになってしまったのかというと、効能効果が決められた時にはまだ中国との国交がなくて、正しい中医学が日本に入って来ていなかったからなのです。
今は、中国との国交もあり、正しい中医学がどんどんと日本に入って来ています。
古い日本漢方式の表現だけしか書かれていない漢方薬の効能効果は時代遅れのものになってしまったと思われます。

漢方は即効性があるかについて

漢方は即効性があるかどうか、昔から色々と議論されていました。
結論から言うと、即効性のあるものと、続けないと意味が無いものがあります。
今から100年以上前ですと、抗生物質、解熱鎮痛薬、ステロイド剤などは無かったので、あらゆる病気は漢方薬で治す必要がありました。
この中には、チフス、マラリア、赤痢などの急性の伝染病も含んでいます。
こういった、今すぐ命にかかわるような病気は、即効性が求められます。
このよな期待に答えるため、そのころの漢方薬は飲む量も多く、作用の強いものを多く使いました。
よく使われたのが、麻黄、附子、大黄、石膏などでそれもかなり大量を使いました。
このようにする事で、沢山の急性伝染病を治療していました。
そして、その効果は想像以上に良かったようです。
さて、時代は代わり、このような命にかかわるような急性の伝染病は、西洋医学の薬が使われるようになりました。
そうすると、漢方医学はどちらかといと日陰者扱いとなってしまい、西洋医学では治せないような慢性の病気を治療するようになりました。
慢性の病気を治療する場合、その症状を抑える標治と、病気の根本を治療する本治があります。
標治に関しては、即効性という意味において、やはり西洋医学のお薬にかないませんでした。
そこで、漢方薬は、殆どの場合、慢性病の本治、つまり体質改善として使われるようになりました。
このような事から、漢方薬は即効性が無いと思われています。
実際、漢方薬で体質改善をする場合は、即効性は期待できません。
ですので、「漢方薬は即効性が無い」というのは半分はあたっていると言えます。

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