深谷薬局 養心堂

漢方薬局 深谷薬局養心堂


 

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261.日本と中国では虚実の意味が違う

日本式の漢方は体力がある人を実証、体力がない人を虚証と言います。
中医学では、体力は関係なくて、「体内に汚れが溜まっているのを邪実」「必要なものが足りない場合を正虚」と言います。
そして汚れがある場合は、それを取り除く漢方薬を使い、足りないものがあればそれを補う漢方薬を使います。
勿論、この二つは同時に行う事もあります。
「どの部分にどんな汚れが溜まっているか」「どの部分の何が不足しているのか」この事を正しく判断する事が中医学の極意です。

260.更上一層楼


私がとっても好きな言葉です。
もともとの意味は、「登鸛雀楼」という漢詩から来ています。

「登鸛雀楼」は中国・唐の詩人「王之渙」という人の作品です。

白日依山尽
黄河入海流
慾窮千里目
更上一層楼

白日は山に依って尽き
黄河は海に入って流れ
千里の目を窮めんと欲し
更に楼の一層を上る

作者は鸛雀楼という建物に登って景色を見ている。
太陽が山に沈んでいく、そして足下から黄河が海に向かって流れていく。
きっと黄河の水は海の中ですぐに海水とは交わらず、一筋の道となってさらに海の向こうに流れていくはずだ。
それを見てみたい。もっと遠くを見てみたい。千里の向こうまで見渡したい。
そうだ、それにはもう一階上に登ってみる事にしよう。

遠くまで見渡すなら、もっと上に登る必要がある。
これは表面的な意味だけではなく、「物事を広く識るためには、努力して自分が向上する必要がある。努力して自分が向上すれば、自然と広い視野で周りを見渡せる」という意味です。

この詩には直接は詠われていないですが、恐らく黄河は夕日に染められてキラキラと輝いているはずです。

これと良く似た言葉で「芝麻開花、節節高」という言葉があります。
ゴマの花が開く時、どんどんと節が上に伸びて花が咲くという意味です。
そしてそれは自分たちが成長していく様子を表現しています。
「活到老、学到老」。
生きている限り、常に勉強。
老中医の精神で頑張りたいと思っています。

259.満天星

バラの花束などに添えられている小さくて白い花。
よく見るとなかなか可愛らしい。
名前はカスミソウ。
何だかさえない名前。
ところが、中国語にするとこれが一転する。
「満天星」
夜空に浮かぶ満天の星。
急にかすみ草が素晴らしい花に思えてくるから不思議だ。

昔、北京に行った時、朝食のお皿に見慣れない野菜が並べてあった。
皮は緑、中は真っ赤な野菜。
地元の人に聞いてみると大根の一種だと言う。
名前を「心裏美」と言う。
中国語で裏は中側の意味。つまり心の中が綺麗という意味になる。
確かに切ってみないと中側がこんなに美しいとは誰も思わない。
やはり大根も人間も見かけだけでは簡単に判断できないようだ。
ちなみにこの大根、最近は日本でもたまに見かける。日本語では「青皮紅芯大根」と言う。
日本のネーミングはストレートすぎてユーモアが無い。

258.季節の変わり目は不眠になりやすい

季節の変わり目は不眠になりやすい。
中医学的には春と秋は陰と陽との交代の時期。
体の中の陰陽のバランスが崩れやすい時期です。
陰と陽を調和させるような漢方薬をよく使います。

眠れない時は、頭の中でグルグルと同じ事を考えている事が多い。
言葉は脳にとっては高度な情報処理が必要なので、脳の中に言葉があると
脳は大事な事をしていると判断して、なかなか眠りのスイッチを入れません。
そんな時は、単語をデタラメに思い浮かべます。
木 魚 パソコン 山 など、映像を浮かべながら、連想ではなく自然にうかんでくる言葉を待ちます。
意味が無いという事がとても大切です。
こうすると、脳は意味のない無駄な事をしていると判断して、眠りのスイッチをONにします。
音楽も良いですが、歌詞の無いものが良いでしょう。
スマホのアプリで眠りに着く音楽というのがあります。
ただし、寝る前のスマホ、PCは脳が興奮するので良くないです。
またお風呂も寝る直前ではない方が良いでしょう。

257.舌診と脈診

漢方治療は2000年以上の歴史があります。
2000年前と言えば、電気もガスも水道も無い時代。
当然、血液検査はなく、CTやMRIのような便利な検査機器もありません。
そんな時代でも、患者さんは今とかわらず、難しい病気の人が沢山いました。
もし現代のお医者さんがそんな時代にタイムスリップしたら手も足も出ないでしょう。
では、昔のお中医学のお医者さんは何を頼りに病気の診断をしていたのでしょうか?
それは脈と舌です。
中医学の中で脈診と舌診は、現代医学のCTや血液検査と同じくらい大切なものです。
なにしろ、それ以外の方法が無いのですからそこを極めるより仕方がありません。
ですから、脈診舌診を習得すると言っても簡単ではありません。
お師匠のお医者さんに付き添い何年も修行をしました。
今はなかなかそのような機会がありませんし、脈と舌だけで病気を診断する必要もありません。
ただ、中医学の治療においては脈や舌はりとても重要な手がかりとなっています。
例えば、脈は低温期と高温期では違います。
妊娠すれば滑脈といって、「玉を転がすようななめらかな脈」になります。
中国のテレビドラマでは、よく、脈を診て「あなたは妊娠しています」というシーンがあります。あれが滑脈なのです。

256.処方の名前

中医学の処方には色々と面白いネーミングがあります。 例えば「打老児丸」 100才を過ぎたお母さんが、自分の息子を叱って叩いている。 そんな様子のネーミングです。 息子も当然80才くらいでしょうか。 100才のお母さんが80才の息子を叩く。 なんとも元気になりそうなネーミングの丸薬ですね。

二至丸(イスクラ産業では二至丹)という処方は、女貞子と旱蓮草という2つの生薬で構成されています。
女貞子は冬至の時期に、旱蓮草は夏至の時期に収穫します。
ですから、冬至と夏至をあわせて二至と言う訳です。
収穫時期によって効き目が違って来るので、こだわりの意味をこめたネーミングです。

逍遥丸という処方があります。
また坪内逍遥という作家をご存知の方もあると思います。
逍遥丸の逍遥は日本語では「気ままにぶらぶら歩く」ですが、中国語は「束縛から離れて自由気ままに生きる」と言う意味で、どちらの意味でもストレスから開放される漢方というネーミングになります。ただ中国語の意味の方が強いですね。

255.薬の部位

漢方では、植物が原料の事が多いです。
同じ植物でも、使われる部位によって作用が違う場合があります。
例えば、麻黄という植物。
風邪で有名な葛根湯などにも配合されていて、寒気をとったり発汗作用があります。
実はこの麻黄の根は、発散作用と反対の止汗作用があります。
どうしてこのようになるのか不思議だし、昔の人がそれを知っていたのも驚きです。
もっと凄いのが蓮です。
蓮の根はいわゆる蓮根ですが、血を補い潤いを与える作用があります。
蓮根の節の硬い部分には止血作用があります。
蓮の葉は暑気払いの作用があり、利尿作用もあり、とても良い香りで頭がすっきりします。扁頭痛などにも応用されます。
蓮の実は気持ちをリラックスさせると同時に潤いを与えます。
実の中の青い心の部分はイライラを沈め、不眠などによく使われます。
種が入っているジョウロの口のような部分には収斂作用といって体を引き締めるような作用があります。
これだけ色々な部位が漢方薬として利用され作用が違うというのは驚きです。

254.血虚

血が足りない事を中医学では「血虚 けっきょ」と言います。
貧血と同じように思うかもしれませんが違いがあります。
貧血と言うのは血液を抜いてその濃度が薄い状態です。
血虚というのは貧血も含みますが、濃度だけでなく量も考えます。
今は血流計がありますが、昔は舌の色、脈の強さなどから判断しました。
血虚になると、髪の毛が抜けやすい、立ちくらみ、朝おきにくい、生理の量が少ないなどの症状が出てきます。
実は人間は多かれ少なかれ、みな血虚です。 全身同時に使うだけの血が無いのです。足りない分は、やりくりして使います。 例えば脳を使う時は胃腸はお休み。胃腸を使う時は脳はお休み。 筋肉を使う時は胃腸と脳はお休みというように当番制になっています。
妊活中にあまり頭を使いすぎると、脳にばかり血液が行ってしまい子宮に行く分が足りなくなってしまいます。
ですから、適度にリラックスして血を下半身に流す事も大切です。

253.2月は28日まで

2月はどうして28日までしかないのでしょうか?
太陽暦は農業のために作られました。
農作業は3月からなので、太陽暦は3月から始まり12月まででした。
9月は7番目の月で「セプテンバー」、10月は8番目の月で「オクトーバー」と呼ばれるのはそのためです。
1月と2月は農業はお休みなので、暦がありません。
それでは不便なので、1月と2月も暦に入れました。
つまりオマケです。
奇数月を大の月、偶数月を小の月としていました。
そうすると、最後の2月は1日足りなくて29日まで(うるう年は30日まで)なりました。
この暦を考えたのがジュリアス・シーザーでした。
彼の誕生日は7月だったので、7月を「ジュライ」と名付けました。
シーザの後継者アウグストゥスの誕生日は8月だってので8月を「オーガスト」と名付けました。さらに彼は8月が30日までしかないのが気に入らなくて無理やり31日にしました。そうするとの1年の最後の月の2月が更に1日短くなり28日までとなってしまいました。
それがまだそのままになっているという訳なのです。

252.太陰暦

太陽暦が普及する前は、旧歴で、月の満ち欠けで日にちを決めていました。
月の満ち欠けは地球上のどこからでも同じように見えるので、満月は15日、三日月なら3日と判断できます。
カレンダーがなかった頃はとても便利だったでしょう。
新月から新月まで29.5日なので、28日までの月と29日までの月を作りました。
ただ、1年を12ヶ月とすると、365日よりも11日程度短くなってしまいます。
そこで3年に1回、閏月を入れて調整しました。
それでも、季節とのズレが出来ていまい農作業には不便でした。
そこで生まれたのが節気です。
節気は、昼が一番長い日を夏至、一番短い日を冬至とします。
夏至と冬至をあわせて二至と言い、漢方の二至丹の名前の由来です。
昼と夜の長さが同じ日を春分、秋分として、さらに細かく24に分けられました。
節気は季節を細分化したもので、年による変動がなく農業にとても便利でした。
今でも節気は季節の移り変わりを表現としてよく使われています。



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