目次形式に切り替える251.風邪
風邪は中医学ではと書いて「カゼ」ではなく「ふうじゃ」と読んでください。
「カゼ」も風邪の一部ですが、風邪の方がもっと広い範囲で、例えばアレルギーなども風邪が原因と考えます。
このため、カゼで使う漢方とアレルギーで使う漢方はよく似ていて両方に使う事ができます。
昔の人は目に見えなくて働きがあるものを「気」と名付けました。
気には体に必要な正気と、体に害を及ぼす邪気があります。
邪気にも沢山の種類があるのですが、その一つに風邪があります。
風の性質は、よく動くので、あちこち移動する痛みや痒み、さむけ、しびれ、震えなどを風邪が原因と考えました。
風邪には、体の外から入り込む外風と体の中で生まれる内風があります。
内風は、めまい、しびれ、耳鳴り、震え、麻痺などの原因と考えます。
250.咳は肺なの?
普通に考えると咳は肺とか気管支の問題です。
ですが、中医学は肺以外の問題も考えます。
肝
肝は肝臓ですが、中医学では気の流れをコントロールしていると考えます。
気は目に見えなくて働きのあるもので、ホルモン、自律神経、免疫と関係します。
自律神経は気管を広げたり縮めたりしています。
ですから自律神経失調症ですと、咳が出る事があります。
梅核気と言って、喉のあたりに何かひっかかってなかなかとれないような場合は気の流れが悪い事が多く、肝から治療を考えます。
アレルギーも免疫のバランスなので肝との関係があります。
胃腸
胃腸は中医学では脾胃と言います。
食べた物をうまく消化出来ないと痰濁という汚れになり、一部分は肺にたまります。
これが咳や痰の原因になります。
「脾胃は生痰の源、肺は貯痰の器」といいます。
胃腸の消化機能を高めて胃腸に汚れが溜まらないようにする事が大切です。
腎
腎は水の流れをコントールしています。
このため腎の機能が悪くなると全身に水がたまりやすくなります。
皮下にたまるとむくみ、耳にたまるとめまいや耳なり、肺にたまると咳やたんになります。
腎の機能を高め、余分な水が溜まらないようにする事が大切です。
また腎は体を暖めるボイラーのような役目を持っています。
腎の機能が悪くなると、温める力が不足して体が冷えやすくなります。
こうなると、免疫力の低下がおこり、感染症やアレルギーがおこりやすくなります。
慢性的な咳などは腎から治療する事が多いのはこのためです。
249.漢方薬の副作用
漢方は副作用が無い、もしくは少ないと言う人と、漢方も普通に副作用があると言う人があります。
この違いは何処からくるのでしょうか?
漢方の場合、病気の種類だけでなくその人の体質を考えて薬を使います。
そうでないと体質にあわない事があります。
漢方の副作用の殆どは、体質にあわない為のもので、ちゃんと体質を考えて漢方を使えば防ぐ事が出来るものです。
漢方にも副作用があると主張される方は漢方的な判断をせずに西洋医学の病名だけで漢方を決めてしまうからだと思います。
漢方の副作用は中医学的な知識があれば未然に防げるものがほとんどです。
ただ、アレルギー反応は食品と同じ程度にはあると思います。
248.カモフラージュ
病気が重く、体中に邪気がたまると、正気を助ける薬を受け付けなくなる。
これは邪気によって体を占領されて病気を治す力を失ってしまった状態と考える。
例えば、寒という邪気によって体が占領されてしまうと、病気を治すのに必要な体を暖める漢方薬を受け付けなくなってしまいます。
この時に使う作戦がカモフラージュ。
いわゆるトロイの木馬作戦。
2千年前に書かれた傷寒論という本の中に「通脈四逆加猪胆汁湯」というものがある。
これは、通脈四逆湯という体を暖め、寒邪を追い払う力がとても強い薬に、猪胆汁を加えたもの。
猪胆汁はとても苦く、少し冷やす性質。これを加える事で薬は苦くなり、邪気は「仲間が来た」と思い込み、はき出さなくなる。
体内に取り込まれてしまえば、通脈四逆湯の本領発揮。
附子や乾姜といった熱薬が、体をあたため邪気を追い払うという作戦なのだ。
247.開竅薬
中医学には開窮薬という概念があります。
竅とは穴の意味です。
人間の体には9つの穴があるとされています。
この穴を通じて体は外界と意志を疎通させています。
この穴が塞がってしまうと、意志の疎通が出来なくなります。
この代表例が意識不明です。
この時、穴を開いて意識を回復するのが開窮薬です。
意識不明ほど重症ではなくても、頭がぼーっとする、目が見えにくい
耳が聞こえにくい、匂いが解らないなどの場合にも開窮薬を使う場合もあります。
246.安神薬
安神薬は、神を安んずる薬です。
では、神とは何でしょうか?
中学では、脳の働きを各臓器に分担しています。
その中で、心に蔵するのが神です。
意識に近いもので、神が無いとすぐに死んでしまいます。
また、神は不安に弱く、何かかるとすぐにびくびくします。
それで神を安んずるのが安心薬です。
安神薬には2種類あります。
一つが重鎮安心薬というものです。
竜骨、牡蠣、磁石など重いものをよく使います。
重いものは下に沈む性質があるので、上に登った気を下に降ろすような作用があります。
これに対して、養心安神薬は植物系の生薬を使う事が多く、心を丈夫にする事で神を安んじます。
神は心に住んでいます。いわば、心は神の家なのです。家がボロボロだと神は落ち着いている事が出来ず、絶えず不安になります。
家を丈夫にすると、神は不安が無くなり落ち着いて生活する事が出来ます。
245.補益剤
補益剤は、一口で言えば補う方剤です。
何を補うかによって、補気薬、補血薬、補陰薬、補陽薬に分けられます。
さらにどの部分、どの臓腑を補うかによって非常に多くのものがあります。
例えば気を補う補気薬ですが、脾を補う四君子湯、四君子湯に昇堤作用を加えた補中益気湯、心を補う麦味参顆粒、肺を補う双料参茸丸、腎を補う八味地黄丸などがあります。
血を補うものとしては、婦宝当帰膠が有名です。
陰を補うものとして腎と心の陰を補う天王補心丹や肝と腎の陰を補う杞菊地黄丸、肺と腎を補う八仙丸、脾の陰と気を補う健脾散顆粒などがあります。
陽を補うものとしては腎陽を補う海馬補腎丸が有名です。
244.表裏双解薬
表裏双解薬とは、その名のとおり、表証と裏証を同時に治療する方財です。
外邪は一般的には表から進入して半表半裏を経て裏に入り込むので、表証と裏証が同時に存在するケースは少ないと考えられます。
ただ、これはあくまでも理論上の話で、実際の臨床では表証と裏証が同時に見られる事もしばしばあります。
例えば、
邪気が裏に至ったところにまた新しい邪が表に入り込んだ。
慢性的に裏実の状態がある体質の人が新感の邪気を拾った
裏に入り込んだ邪気の一部がまた表に戻った
半表半裏に入り込んだ邪気が裏と表に伝わった
理論では説明できないケース
などがあります。
表裏双解薬の代表は防風通聖散です。
日本ではダイエットの漢方として有名ですが、脂肪を落とす為のものではありません。
裏に入り込んだ邪気を大便から、また表にある邪気を発散して解表するという両方の薬味が配合されています。
243.温裏薬
中医学で裏とは体の中側です。
ですので、温裏薬とは体の中側を温める薬という事になります。
体の中側が冷えるのは2つのパターンがあります。
一つは、冷たい邪気が体内に入りこんだ場合
もう一つは、熱を作る力が弱い場合です。
温裏薬は、どちらかというと前者に使います。
後者の場合は陽気を補う助陽薬、補陽薬と表現する事が多いようです。
ただし、助陽薬、補陽薬でも、脾とか腎は体内の裏の部位にあるので温裏薬と言う事もあります。
温裏薬の代表は安中散や当帰四逆加呉茱萸生姜湯、呉茱萸湯などです。
人参湯は脾の陽虚に使うので助陽薬ですが温裏薬に分類される事もあります。
食べ物では、トウガラシ、胡椒、ニンニクなどのスパイスなどがこれに相当します。
242.去暑薬
去暑とは、暑気あたりの治療です。
熱中症、日射病などが主ですが、一部の伝染病も含んでいた可能性もあります。
暑邪は、湿と熱が合わさったものです。
湿熱との違いは湿熱は体の中で作られる邪気で、暑邪は外邪の一種で外からやってくる邪気です。
解暑薬の代表としては、蓮の葉の荷葉とか、藿香、薄荷など香りの強いものです。
外邪なので軽く発散して、また気の流れを良くして水をさばく作用があります。
方剤としては藿香正気散とか、清暑益気湯が有名です。
熱がこもってしまった場合は滑石や石膏が含まれるものが使われ、例えば白虎加人参湯があります。
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