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食滞 しょくたい
食滞というのは、文字通り食べたものが滞る状態。
では、何故食滞がおこるかというと、消化能力以上のものを食べた場合に食滞がおこります。
当たり前の話ですが、実はそんなに単純にいかないのです。
消化能力といっても、個人差があります。季節差もあります。時間の差もあります。気温、疲れ具合、体調によっても左右されます。
また、食べる種類によっても差があります。
ある人は甘い物の消化力はつよくても、お酒は駄目。
ある人はお酒は得意でも、生ものは駄目とか。
日頃から、自分の消化能力を把握しておく事が食滞を防ぐ一番の方法です。
温度について言えば、脂物は胃腸の温度が下がると吸収が悪くなります。
ですから脂っこいものを食べる時は冷たいものは気をつけます。
そうは言ってもビールと焼き肉、美味しいですよね。
その場合はビールを口の中で温めるように、ちびちびと飲むと良いでしょう。
えっ、せこい飲み方? 健康の為ですから、そのぐらい我慢して下さいね。
タンパク質は生ですと消化が悪く、長く煮込むと消化がよくなります。
ですから胃腸が弱い人は刺身などよりシチューのようなものが適しています。
では、体質的に消化能力が低い人はどうすれば良いでしょうか?
一つは、健脾の漢方薬を続け、胃腸を強化する方法です。
これは、速効性はありませんが、根本治療に近い、とても良い方法です。
また、消導薬は、服用すれば一時的に消化能力がUPします。
ちょっとヤバイかなという場合とか、風邪などで消化能力が落ちている場合に消導薬を利用するのはお勧めです。
食滞がたまってくると、お腹が張る、口がまずい、口臭、げっぷ、ガスなどがおこります。
また、舌の苔が厚くなってきます。
宿便なども食滞の一部です。
消導薬と健脾薬を上手に使って、食滞にならないように注意しましょう。
消導薬
健脾と消導の区別が訳が解らなくなって来ましたね。
食後はだれでも胃がふくれます。
これがある時間たつと、また平らになります。
平らにならないポッコリお腹の人は別です。(~_~;)
これは、食べたものが消えて、下に導かれたためです。
この作用が「消導」です。
消導は脾の働きの一部です。
ですで、健脾薬があれば消導薬は消導薬は要らないのではと思われます。
しかし、中医学では健脾薬と消導薬は使い分けています。
体質的に胃腸が弱く、常々食欲がない、やせて体力が無い。
このような体質の人は脾虚といいます。
このような場合は、消導薬でなくて健脾薬を使います。
健脾薬は胃腸を丈夫にする働きがありますが、消導薬は一時的に消化を助けますが、胃腸を丈夫にする働きはありません。
食べ過ぎ、飲み過ぎで胃が苦しい...こんな時は消導薬の出番になります。
あまり胃腸の弱い人で少し食べても胃がもたれる。
このような場合は胃腸を丈夫にする健脾薬と消化を助ける消導薬を同時につかいます。
消導薬の代表は山査子、神麹、麦芽、蒼朮などです。
これらのものには酵素が沢山ふくまれて、食べたものを分解しやすくします。
また、胃液や胆汁、膵液などの分泌をよくしたり、胃腸の蠕動運動を活発にします。
ただし消導薬の作用は一時的で、続けて飲んでいて胃腸が丈夫になるという事はあまりありません。
ですので、胃腸が弱い場合は健脾と消導をうまく使い分ける事が必要です。
単なる暴飲暴食の場合は消導だけで健脾は必要ありません。
さて、次回は、消導薬とは切っても切れない、食滞についてお話しします。
健脾薬
脾の働きを良くする事を健脾と言い、その作用を持つ漢方薬を健脾薬と言います。
健脾薬の代表は、人参、白朮、茯苓などです。
人参はいわゆる朝鮮人参で、野菜の人参ではありません。
野菜の人参で胃腸が丈夫になるなら、とっても安上がりで良いのですが。
人参は昔から高価な薬の代表でした。
今でも野生の人参はなかなか採れないため、とても高価です。
また人参は生長がとても遅いので、薬になるまで何年もかかります。
何十年ものの野生の人参は起死回生の効果があるとして、今でもびっくりするくりい高価で取引されています。
こんなものはとても飲めないですが、栽培のもので500gで1万円から2万円くらいのものでも充分に健脾の高価が期待出来ます。
使うのは2gからせいぜい5gくらいですから、1日分としてはそんなに高くはありません。
さて、先ほどの人参、白朮、茯苓とさらに甘草を加えたものが四君子湯です。
四君子湯は健脾薬の基本処方です。
ただ、胃腸を丈夫にする事と、消化を助ける事は、中医学では少し別に考える事があります。
この場合、胃腸を丈夫にするのは「健脾」で、消化を助けるのが「消導」といいます。
先ほどの健脾薬の代表方剤、四君子湯。これは健脾の力はあっても消導の力はあまりありません。
さてさて、少し混乱してきましたね。
次回で、もう少し詳しくお話しいたします。
脾の働き
脾、というと「脾臓」。
脾臓って何処だっけ?何の働き?っていう方も多いのでは。
現代医学の脾臓は、リンパ球を成熟させたり、いらなくなった血液を壊す働きといわれています。
貧血がひどい場合は脾臓を摘出したりしますから、無くなっても命にかかわる事はありません。
これに対して東洋医学、つまり中医学での脾臓は、なくなったらとても生きていられません。
中医学では脾臓は胃腸の消化吸収の機能を代表した臓器です。
じゃあ、胃腸なの?というと、そうでもありません。
難しいですね。
例えば膵臓。ここからは膵液が出て、色々なものの消化や吸収を助けます。
肝臓からは胆汁が出て、脂の吸収を助けます。
こんなものも脾臓の一部と考えます。
勿論、小腸などの吸収する力は脾臓の一部です。
私なりに解説すると、脾とは「食べたものを吸収して体に必要なものに変化させ、必要な場所に運ぶ機能を有するとされる架空の臓器」という事になります。
架空なので、全く実体が無いかというと、そうでもなくて、先ほど述べたような膵臓とか、肝臓の一部とか、小腸とか...
あまり難しく考えないで、なんとなく漠然と理解するのが中医学をマスターするこつです。
六味丸
六味地黄丸は補腎陰薬に分類されています。
ただ、純粋な補腎薬ではありません。
非常に巧妙につくられています。
まず三補、三泻といって、補うものが3つ、汚れを綺麗にするものが3つ配合されています。
補うものは地黄、山薬、山茱萸です。
それぞれ腎、脾、肝の陰を養う働きがあります。
汚れを綺麗にする部分としては、
沢瀉、牡丹皮、茯苓が配合されています。
沢瀉は腎の中の余分な水、牡丹皮は肝の淤血、茯苓は脾の中の水の流れを改善します。
カテゴリー: 中医学
落ちている気を持ち上げる
体も引力の影響を受けます。
ですので、気がいろいろなものを持ち上げていないと、みな下に降りてしまいます。
気のこのような持ち上げる力を「昇提作用 しょうていさよう」と言います。
例えば、胃下垂、脱肛、游走腎などの内臓の下垂をはじめ、呼吸困難、人事不省なども気が上がらないためです。
軽いものではめまいや眠気などがあります。
気の昇提作用を助ける作用の生薬は沢山あります。
発散させる作用のあるのは殆ど上に昇る性質があります。
また花を部位とする生薬は旋覆花を除いて皆上に昇ると言われています。
こうしたものを補気薬と組み合わせルと益気昇提作用の処方が出来上がります。
よく使われるものは、黄耆、人参、白朮などの補気薬に、柴胡、升麻、桔梗、荊芥などをあわせます。
代表方剤は補中益気湯や升陥湯です。
升陥湯は日本では使われませんが、中国では常用処方の一つです。
胆は決断力
胆は、西洋医学では胆嚢で、胆汁を入れる袋です。
手術でとってしまっても、そう大きな問題はありません。
しかし、中医学ではとても大切な役割をしていると考えます。
大胆という言葉が示すように、大胆な人は決断力があります。
つまり胆は決断力と関係しているのです。
肝っ玉という言葉があります。
肝臓にくっついている玉、つまり胆嚢を指すと思われます。
肝っ玉が大きいとう事は大胆と同じです。
これに反して肝っ玉が小さい場合は、絶えず不安になります。
温胆湯は痰湿をとる作用として有名ですが、もともとは肝っ玉を大きくする為に考えられたものです。
痰湿が胆にたまると、小さい音に驚き、絶えずびくびくします。
ちょっとした事で肝を冷やす事になります。
痰湿をとる事で肝っ玉が冷えなくなるという事で温胆湯と名付けられました。
脾は運化を司る
中医学の用語で、脾は運化を司るとあります。
この運化とは何を意味しているのでしょうか?
運ははこぶ、化は変化させる作用です。
現代医学的に言えば、運は食べたものを吸収する作用です。
胃に蓄えられた食物は、膵臓からの消化酵素や胆汁などと一緒に小腸から吸収され肝臓に運ばれます。
このあたりまでが運という作用になります。
そこから先が化です。
化は新陳代謝を意味します。
肝臓の代謝機能、細胞での代謝などは化の部分になります。
脾の病気を考える時、運についてはよく考えますが、化の部分はあまり注意が払われないという事があります。
例えば、食欲が無いとか、消化しないとか、下痢をするなどは脾の運に問題があるとすぐに解ります。
しかし、代謝が落ちているとか、疲れやすいなどの場合は脾の化に問題があります。
運に問題がなく化に問題がある場合、脾との関連性に気がつかない事も多くあります。
脾の化の作用を強めるのはやはり人参が1番でしょう。
これに対して茯苓、白朮は運に対しての効果になります。
処方で言えば、四君子湯はやや運に、人参湯はやや化に重点をおいた処方です。
運と化の違いを考えると、この違いがよく理解出来ます。
強人傷寒発其汗、虚人傷寒建其中
強人とは、体力のある人です。
日本漢方で言う実証のような体質の人です。
そのような人は、風邪やインフルエンザなどに傷寒にかかった時は、麻黄湯とか葛根湯なとで発汗すると治ります。
ただ、発汗にはある程度の体力が必要です。
ですから、体力の無い人に無理に発汗してしまうと、体力を消耗してしまいます。
このような事から、虚人、つまり体力の無い人は、建中、つまり胃腸を調えるという方法を優先されましょうと言う意味です。
虚証の人に発汗剤が使えないという事ではありません。
あまり強い発汗薬ではなく、また同時に健脾も考えましょうという意味です。
このような事で生まれた処方が参蘇飲です。
治身、太上養神、其次養形。
准南子の言葉です。
形というのは、肉体を意味しています。
神は精神です。
病気を治療するのは、まず精神を養う事が1番大切で、身体を治療するのはその次であるの意味です。
精神的な部分がしっかりしていないと、いくら良い治療をしても効果が出にくいという事です。
ストレスの多い現代社会において、とても名言だと思います。
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