目次形式に切り替える231.有形の痰と無形の痰
痰には有形の痰と無形の痰があります。
有形の痰は、下の水毒の所で述べたものです。
これに対して無形の痰というものがあります。
中医学の用語で「怪病は痰を疑う」という言葉があります。
怪病は原因がよくわからない病気などです。
無形の痰とは、体の表面からは解らない痰です。
例えば昔の人は「てんかん」という病気は原因がよく分からないため、怪病と考えられていました。
このような場合は、例え表面的には痰がなくても脳の中に痰湿がたまっていると考え、温胆湯を使う事が多く、実際に治る事も多かったようです。
ただし、「てんかん」はすべて温胆湯という訳ではありません。
舌や脈、その他の症状から痰の存在を類推していく事が大切です。
230.水毒について
水毒という言葉は、日本漢方ではよく使いますが、中医学にはありません。
中医学では水毒をもう少し細かく考えています。
湿 余分な水。サラサラとしている。
脾胃が冷えていたり、腎陽虚などによく見られます。
肺気の流れが悪くなった場合にも見られます。
湿濁 普通の湿より汚れがつよく、少し粘る事もある
冷えが原因の場合も、熱が原因の場合もあります。
痰 ねばっこく、時に脂っこいもの。
気管支から出るだけでなく、体のあちらこちらにたまる。
成分は水と脂が混ざったようなもの。
これも冷えが原因の場合と熱が原因の場合があり、寒痰と熱痰に分けて考えます。
舌が湿っている場合は寒痰が多く、乾いている場合は熱痰が多くなりますが、口渇、脈などその他の症状もあわせて考えます。
痰濁 痰と湿濁をあわせたもの
痰湿 痰と湿をあわせたもの
このように分類して考えます。
体が冷える事によって水の流れが悪くなり、湿が増える事が多いようです。
体内の陽気は、津液を気化して体内をめぐらせます。
腎の陽気が不足するとこの気化の働きが悪くなり、余分な水がたまると考えます。
脾の陽気が不足すると、脾の運化(消化吸収)の力が弱くなり、水分を吸収する力が弱くなります。
これも湿がたまる原因です。
肺気、体中に気を巡らせる作用がありこの作用がうまく行かないと、やはり肺の中に痰や湿がたまっていきます。
また熱により津液が煮詰まって、痰濁などとなる事もよくあります。
痰は水だけでなく脂を含めています。
中性脂肪などは痰の一部と言えます。
229.陳久瘀血について
血液の汚れを中医学では瘀血(おけつ)といいます。
中医学の普及とともに瘀血という言葉も大分と普及してきました。
一口に瘀血といっても色々なものがあります。
その中で、子宮内膜症やチョコレート嚢腫と関係が深いのが陳久瘀血という概念です。
陳久瘀血は、血管の外で古くなって固まった血です。
このようなものは、一般的に血液をサラサラにするものではなかなか改善できません。
陳久瘀血を改善するには動物性の生薬が必要です。
よく使われるのがヒルやミミズです。
ヒルは2千年も前から「水蛭」という名前で使われ続けています。
228.卵管の閉塞
両方の卵管が閉塞していて、体外以外に妊娠の方法が無いとお医者さんに言われた方が、漢方薬を飲んで卵管が通る事があります。
たまたま、1日に2人の方から卵管が通ったという報告がありました。
1人の方は、造影剤の検査で両方の卵管が完全につまっていると診断された方です。
3ヶ月漢方を飲んでもう一度検査したところ、うまく通っていました。
次の人は、通水検査を2回と通気検査を受け、いずれも全く通っていないと言われ、1ヶ月後に造影剤検査を行う事になっていました。
検査を受ける前にと1ヶ月漢方薬を飲んでもらいました。
そして検査を受けた所、全く問題ないとの事でした。
通常、漢方の効き目が出るまで3ヶ月くらいはかかるのでこのような短期間で効果が出るのは珍しいと思われます。
通水検査や通気検査を何回か受けているので、それも良い漢方とあわせて良い結果につながったのかも知れません。
227.中薬物語 竜眼肉
昔、昔、銭員外という名前の人が年をとってから子供に恵まれました。
ただ息子は痩せて小さく、風に飛ばされそうな風体でした。
そこで銭員外はあまねく名医を呼びあつめ薬を処方させました。
ある時、遠方の親戚が言いました「竜眼肉は虚弱でひよわな体質を改善するのにとても良い。東の海辺のお百姓さんたちは家々にみな竜眼肉の樹を植えている。
竜眼肉を食べると体は丈夫になり、病気をしない。」と。
銭員外はこれを聞いてとても喜び、すぐに東の海で沢山の竜眼肉を手に入れるように命じました。
連続1ヶ月、息子にこれを食べさせ、あまった実の肉は干して乾かし、種は庭に植えました。
息子はますます竜眼肉を食べ体はとても丈夫になりました。
それから息子は銭員外の指導のもと、勉学や武道にはげみ、名をなし、庶民の幸福を願う立派なお役人さんになりました。
226.中薬物語 茘枝核
ある日、中国の唐代の有名な詩人、白居易が家の中で詩を推敲している時に南方に住んでいる友人が訪ねてきました。
かれは成熟したばかりの茘枝の実をもってきました。
そこで二人は茘枝を食べながら詩について語り合いました。
この時、白居易の妻の春蘭が来て机の上にならんでいる沢山の茘枝の食べ終わった実の種を見て、紙に包んで引出に入れました。
1ヶ月後、白居易は疝気という病気になりました。(鼠径ヘルニアや睾丸が腫れるなど、下半身にしこりが出来る病気の総称)
動くのも大変でした。
春蘭はお医者さんの所に行き処方を書いてもらいました。
そのお医者さんが書いた処方が茘枝の種でした。
そこで春蘭はしまってあった茘枝の種を取り出し煎じて飲ませました。
何日もしないうちに白居易の病気は治ってしまいました。
それから白居易は会う人会う人に「疝気は茘枝の種を飲むとすぐによくなる」と言いました。
その後、白居易は都に引っ越しました。都で御医に会った時にもその話をしました。
ちょうどその御医は漢方薬の本を編集している時でした。
そこでひの御医はその本の中に「茘枝核」として茘枝の実の話を加えました。
それで茘枝核の効能が後生に伝わる事になったのです。
225.中薬物語 枸杞子
伝説によれば、昔、お役人さんが出張に行ったとき、16-7才くらいの綺麗な女性が、白髪あたまの老人を竹竿でたたこうとして追いかけ回しているのに出会いました。
お役人さんは、娘をひきとめ、どうして老人をたたくのかと聞きました。
その娘が言うには「私がたたこうとしているのは私の孫の子供、つまりひ孫です。私の家には良薬があるのにちっとも飲もうとしない。だからまだあんなに若い年なのにもうこのように老けてしまったのです。
それでたたいて懲らしめようといていたのです。」
お役人は好奇心にかられて娘の年令を聞きました。娘は「372才」と答えました。
お役人さんはびっくりして、すぐ、その長寿の方法を聞きました。
娘は、枸杞子を毎日食べる事だと答えました。
この話はいかにも中国らしい作り話です。
いくら枸杞子が体に良いからといって372才になっても16-7才のような綺麗な娘のはずがありません。
あたかもドラえもんのポケットのように、こんな薬があったら良いなと言う事でしょう。
ただ、全くの出鱈目ではなくて、やはり枸杞子は体にはとても良いものだという事を伝えたかったのでしょう。
224.中薬物語 桑寄生
昔、お金持ちの家の子供がリュウマチになりました。
腰や膝が痛く、歩くのがとても困難でした。
お金持ちの家の主は、南山の古くからある薬用植物を育てる農家の人に見て貰いました。
そのあと、2日に1回、主の雇い人を派遣して薬をとりに行かせました。
真冬だったので、派遣された人は寒さで震え、手足はこごえました。
彼は村はずれの道脇の古い桑の木の上の空洞に一つの枝が出でいて、それがいつも受け取りに入っている生薬にとても良く似ていました。
そこで、悪知恵を働かせて、木に登ってそれをとり、細切れにして紙にくるんで持ち帰り、主人に渡しました。
雇われ人は、それからはいつもその方法を使いました。
なんと言う事でしょう。そのお金持ちの家の子供の病気が治ってしまったのです。
雇われ人はその事を薬用植物を育てている農家の人に話しました。
農家の人は別な人に試してみると、本当にリュウマチが治ってしまいました。
この木は桑の木の上に生えているので「桑寄生」と名付けられました。
桑寄生は中医学ではリュウマチに良いだけでなく肝と腎を補い、筋骨を強め、安胎の作用があるとされています。
223.中薬物語 紫蘇
あるとき、華佗(中国では有名なお医者さんです)が河辺で薬草をとっていると、一匹のカワウソが大きな魚を捕まえるのを見かけました。
カワウソは河から上がると岸辺でその魚をまるごと飲み込んでしまいました。
お腹は太鼓のようになってしまい、カワウソは苦しくてたまりません。
カワウソは紫色の草が生えているのを見つけると、そこまで這っていきました。
そして、その草を食べてしばらくするとまるで何事もなかったかのように帰って行きました。
この草は紫色をしていて、食べるとお腹が舒服(気持ちよいという意味)になるので華佗はこの草を「紫舒」と名付けました。
ですが、どういう訳かその後の人たちはこれを「紫蘇」とも呼ぶようになりました
222.中薬物語 女貞子
言い伝えによれば、秦・漢の時代に浙江省に1人の身分の高い人がいました。
彼には1人の娘がいました。
その娘は年頃で、とても容姿端麗でした。そして芸術的なセンスも抜群でした。
父親は目に入れても痛くない程、可愛がっていました。
その娘に求婚する人はあとが立ちません。
父親は貪欲な人で、自分の地位の確保の為、県知事との結婚を約束してしまいました。
実は娘は、町の学校の先生と恋仲で一生のちぎりを結んでいました。
勿論、父親はそんな事は知りません。
娘は父親をうらんで壁に頭をぶつけて自殺してしまいました。
町の先生はそれを知り、ショックのあまり病気になってしまいました。
数日で体はやせこけて、頭髪は真っ白になってしまいました。
数年後、先生はその娘の墓の前で首をくくろうとしました。
その時、墓の土の上に1本の木が生えているのを見つけました。
葉は生い茂り、果実はまるで黒髪のように黒いものでした。
先生はその実をつんで口に入れました。
そうすると、たちまち元気になりました。
そこで、毎日その実をつんで食べると、今までの病かがすっかり良くなりました。
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