深谷薬局 養心堂

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昼発熱者従、昼発寒者逆

1日の中で陰陽の状態は変化しています。
これに従って、体内の陰陽もまた変化しています。
朝から夕方までは、陽気が、衰 → 盛 → 衰 という過程をとります。
また夕方から明け方までは、陰気が 衰 → 盛 → 衰 という過程になります。
人間の体もこれにあわせて変化します。
ですので、昼の陽気の多い時期に、発熱するのは「従 (順)」であり、陽気の多い時期に冷えるのは「逆」になります。
一般に、順よりも逆の方が病気が重いと考えます。

陰陽二字、固以対待而言、所指無定所

意味としては、「陰陽という事柄を意味する2文字は、もとより比べてみて言えることで、決まった物を指すわけではない」となります。
元の時代の朱震亨という人が述べたものです。
中医学を学んだ人は、よく血は陰で、気は陽といいます。
また低温期は陰で、高温期は陽といいます。
しかし、絶対的な陰と陽は存在しません。
2つのものを比較して始めて、どちらかが陰、どちらがが陽となります。

上善若水、下愚如火

脈診について一段落しましたので、今日から中医の名言についていくつか解説しようと思います。
第1回目は「上善若水、下愚如火」です。
中医の養生について述べたもので、養神(こころを養う)事の大切さを述べています。
養神のキーポイントは「静」にあります。
心を水のように静かに落ち着かせる事が養生として大切で、火ようにいつも怒っていてはなかなか養神は出来ないという事です。
素問では、「人静则神气内藏,含蓄不露;躁动无度则神气消亡」
「人間は静かなら神気を内蔵して外には見えない、騒がしいと神気は消耗して身体や命を損じる」と述べています。
理屈はとてもよくわかりますが、実際にはなかなか難しい事ですね。

脈の部位

さて、ここまで主に脈の形状について説明して来ましたので、これから脈の部位について説明します。
古代の脈診は手首の脈だけでなく、足首の脈や首の脈など様々な部位で脈診をしました。
しかし、それでは診察がとても大変です。
最近は手首の脈の部位を「寸、関、尺」と分けて、それぞれ上半身(上焦)、まん中(中焦)、下半身(下焦)とします。
左右により、次のような対応になります。
 左 寸  心
 左 関  肝
 左 尺  腎(子宮)
 右 寸  肺
 右 関  脾
 右 尺  命門(卵巣)
このようになります。
よく見ると、左は血に関係する臓、右は気に関係する臓になっています。
例えば、右の寸脈が弱い場合は、肺気虚の事が多く、風邪をひきやすい、息切れがしやすいなどがあります。
右の寸脈が異常に強い場合は、肺に痰濁がたまっている事が考えられます。
この場合は、喘促、呼吸困難などがあります。
右の関脈が弱い場合は、脾気虚で、胃腸が弱く、食べても太らないとか、下痢しやすいなどがあります。
胃の手術をしたような場合も右の関脈がとても弱くなる事があります。
右の関脈が強すぎる場合は食滞で、食べ過ぎ、飲み過ぎの事が多いようです。便秘の場合もあります。
右の尺脉が弱い場合は腎陽虚で、冷えやすい体質の事が多くあります。
左の寸脈が弱い場合は、心の気虚や血虚で、動悸、めまい、たちくらみ、不安感などが出やすいです。
左の寸脈が強すぎる場合は、心に邪気が多い状態で、のぼせ、イライラ、不眠、鼻血、高血圧などがあります。
左の関脈が弱い場合は、肝気虚か肝血不足です。
逆に左の関脈が強すぎる場合は、肝火とか肝鬱です。
肝鬱の場合は弦脈になりやすく、肝火は洪脈か滑脈になりやすいです。
左の尺脉が弱い場合は、腎陰虚が多くみられます。
また左の尺脉が強すぎる場合は、腎や膀胱に水邪などがたまっている場合にあります。
排尿困難や排尿痛、むくみなどがおこりやすくなります。
昔、今のようにCTだのエコーだのが無い場合、脈は重要な手がかりとなりました。
ただ、脈はある程度の目安で、脈だけで断定する事は出ません。
かならず他の症状と照らし合わせて考える事が大切です。
脈診は非科学的なものではありません。
非常に多くの患者さんの統計と考えてください。

短脈

短脈は長脈の反対で、指の幅1本くらいの短い脈です。
短脈は、気に問題があるとされる脈で、力がある場合は気滞、力が無い場合は気虚を意味します。
また、短脈で滑脈がみられる場合は、胆気虚で痰湿がたまっている場合によくみられます。

長脈

脈は、通常では指の横幅3本分の長さです。
これより長い脈を長脈と言います。
長脈は気血が充実している場合です。
健康な人に長脈がみられるのは良い状態です。
ただ、体内に熱がこもっているような場合にも長脈はよくみられます。
このような場合は交感神経が興奮している事が多く、イライラしたり、不眠になったりします。

牢脈

牢脈とは、沈んでいて、太く固く、また動かない脈です。
牢は閉じ込めるという意味ですから、閉じ込められた脈です。
意味としては邪実で、邪気が裏にあるという意味です。
多くは寒邪ですが、熱邪の場合や食滞などの場合もあります。
もし、虚証で見られる場合は、体証と脈証があっていない事になり、あまり良い状態ではありません。
冬の寒い時期はたまに牢脈がみられますが、夏はあまりみられません。

散脈

散脈は、浮で力がなく、強く触れると散ってなくなってしまう脈です。
速さも一定ではありません。
このような脈がみられるのは、元気が散乱している状態で、危険な状態です。
当然、お店に来られるような方ではこのような脈の人はありません。

革脈

革脈は弦脈に似ていますが、弦脈より少し太い事が多いです。
また、浮脈になる事が殆どです。
太くて、浮いていて、大きく力強い感じの脈ですが、少し力を入れてみると中が空洞のような感じがします。
革脈は実ではなく、虚の脈です。
気虚や陽虚でよく見られます。
もし血虚の場合で革脈が見られる場合は、陽気が脱しようとしている場合があり、これはあまり良くありません。
革脈は、長脈になりやすく、疲れやすい、動悸、不眠、多汗などを同時にうったえる事が多い脈です。

緊脈

緊脈は、弦脈に似ています。
弦脈よりもっと固く、ちょうど弦脈を、こよりのようによって、つよくした感じです。
弦脈との区別はあいまいで、どこまでが弦脈で、どこからが緊脈なのかという判断は、診察する人の主観が入ります。
意味としては、弦脈とほぼ同じですが、慢性病で緊脈が出る事は少なく、殆どが急性病になります。
風寒の邪気が体表をおかしたような場合によくみられる脈です。
また、強い痛みなどでも緊脈が出ます。
緊脈は体に強いストレスを受けている状態ですから、緊脈が長く続くのは良くありません。
ですから緊脈が見られた場合は、適切な治療が必要になります。

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