目次形式に切り替える221.中薬物語 蒲公英
昔、洛陽に一人の娘がすんでいました。
彼女は頭もよく、とても美人でした。
ある日、その娘は乳腺炎になってしまいました。
腫れて痛みがひどく、我慢が出来ません。
しかたなく、一人の旅の医者に治療を頼みました。
旅の医者はその娘がとても綺麗だったので、邪念をおこしました。
娘は我慢できず、平手打ちを2発、くらわせました。
そこで旅の医者は「まだ結婚していない娘が乳腺炎になるのはおかしい。きっと道徳にはずれた行いをしているに違いない。」とあたりにデマをふりまきました。
娘は弁解する事も出来ず、河に身を投げました。
そこに蒲という名の漁師のおじいさんが通りかかり、娘を救いました。
漁師は事の顛末を聞き、公英という名前の自分の子供に、ある薬草をとりに行かせました。
漁師はその薬草を自ら漬いて娘に渡して、娘に湿布するように言いました。
数日して娘の乳腺炎は良くなりました。
娘は自分の庭にその薬草をうえ、感謝の気持ちでその薬草を「蒲公英」と呼びました。
220.中薬物語 決明子
伝説によれば、中国の陝西省の竜山という所に1人の年老いた道士が住んでいました。
彼は100歳を過ぎてもなお精力にあふれていて、髪の毛もふさふさとして、顔も若々しいままです。
耳はよく聞こえ、目は十里先までよく見渡せるという事です。
人々は、道士に秘密をききました。
道士が言うには「それは決明子のためだ。決明子を粉にしてスプーン1杯、1年間のみなさい。」と。
竜山の人たちは、道士の言うとおり決明子を服用すると、皆目がよく見えるようになり、眼病を患っていた人たちも全部よくなりました。
今でも中国の江南では家庭の庭に決明子を植える習慣があります。
毎年初夏に決明の苗がすくすくと育つ時期にこれを摘んで食べています。
219.中薬物語 蛇床子
昔、ある村である種の怪病が流行しました。
病人は全身の皮膚に吹き出物が出来て痒くてたまらないというものです。
あるお医者さんが言いました「ある島に傘の形をした白い花をつけ、羽毛のような葉っぱの薬草がある。
その実を煎じて患部を洗うと病気が治る。」と。
ただその島には沢山の毒蛇が這い回っていて薬草をとるのは容易ではありません。
ある青年が身を挺してその島に向かいました。
硫黄酒を携えて端午の節句の時に島に上陸して、毒蛇を退治しました。
青年は薬草をもって返り、沢山の仲間の病気を治しました。
この薬草は蛇がよこたわっていた下から採集されたので「蛇床」と呼び、その種を「蛇床子」と呼ぶようになりました。
218.中薬物語 金銭草
昔、昔。あるところに、仲むつまじい1組の夫婦がいました。
ある日、夫が突然に病に倒れて死んでしまいました。
妻は医者を呼んで夫の死因を調べてもらいました。
医者は、原因はお腹にあると言って、お腹から胆石を取り出しました。
妻は亡くなった夫の思い出にと、その胆石を網の袋に入れて首から提げていました。
有るとき、妻はその胆石がとても小さくなっているのに気が付き、医者に理由を尋ねました。
医者は「たぶん、山で仕事をしている時に石が小さくなるような薬草に触っているのではないか?」と言いました。
そこで医者と妻は二人で山に登り、妻がいつも柴かりをしている場所に生えている草をいくつも持ち帰り、試しに胆石をくるんでみました。
果たして、その中の1つの草を使うと胆石が小さくなりました。
医者はその薬草を使って沢山の人の結石病を治しました。
人々は、この薬草は凄いものだと思い、金銭よりも価値があると「金銭草」と名付けました。
金銭草の葉っぱは銅銭に似ているので、それも名前の由来になっていると思われます。
217.多嚢胞性卵巣
生理不順で病院にかかって、多嚢胞性卵巣と診断される方が多くあります。
病院の場合は、妊娠希望の場合は排卵誘発剤、妊娠希望でない場合はホルモン剤で生理をおこす方法になります。
どちらも即効性はありますが、多嚢胞性卵巣そのものを治しているとは言えません。
漢方で多嚢胞性卵巣は卵巣に汚れがたまり卵巣が固くなっている状態と考えます。
ですから、卵巣の汚れを綺麗にして卵巣を柔らかくするような方法を考えます。
このようにすると、多くの方が自然に排卵するようになってきます。
ある人の例です。
10代のころから、少量の出血が半月以上つづいていたそうです。
20才になってからはずっとピルを服用していて、クロミッドを飲まないと排卵しない状態でした。
血液検査では
プロラクチン 刺激前 14.9 刺激後 230
LH 刺激前 8.2 刺激後 41.9
FSH 刺激前 6.5 刺激後 10.3
との事です。
刺激後のプロラクチンとLHがかなり高いようです。
体に溜まっているものを出してくれるような漢方や『気』の流れを改善する漢方などをおすすめしました。
漢方を服用して2ヶ月。排卵誘発剤を使わないで体温が上がり、14日ほどで生理が来て体温が下がりました。
今はお医者さんには行っていないので、確実に排卵したかは解りません。
ただ基礎体温的にはまず排卵したと思われます。
216.邪実について
邪実とは、体内に余分なものがあり、それが病気の原因となっている事です。
また、今は病気まではいかなくても将来的に病気の原因になる可能性がある場合も含みます。
邪実は一般的には「外因」「内因」「不内外因」があります。
外因は六因とも言い、「風、寒、暑、湿、燥、火」をさします。
内因は六鬱とも言い「気鬱、血鬱、痰鬱、湿鬱、食鬱、火鬱」です。
不内外因は、食事の不摂生、過労、運動不足などです。
さて、過労、運動不足、食事の不足などは邪実とはいいません。
そうすると、食事の不摂生は食滞と考えます。これは食鬱と同じ意味になります。
外因は外からやってくる邪気で急性病に多いものです。
ただ、このブログで以前のべたように宿邪(伏邪)として体内に長く居座る場合があり、内因と外因の明確な区別は必要ありません。
そうすると、邪気は次のように整理されます。
目に見えない邪気
風(風寒 風熱) 寒凝 気滞 火 燥
目に見える邪気
瘀血 食滞 痰 湿 湿熱
まず、この10種類の邪気が体内にあるかどうかを先に判断します。
何故なら、邪気の種類によって辨証論治(病気の判断や治療)の方法がかわってくるからです。
215.左は血、右は気・水
左右の脈を比べてみると、左の脈が弱い事が多いようです。
これは心臓が左がわにある事に起因しています。
ちょっと考えると、左の方が心臓に近いので脈は強くなりそうです。
しかし、左は心臓から出た血液が急カーブで左手に流れていきます。
これに対して右手へ行く血管のカーブは緩やかなので、右手の方が血流がよくなる事が多いのです。
このように、「血」にかかわる部分は左に症状が出やすいのです。
ですから、中国医学は「左は血」と考えます。
中国医学的に左の脈が弱い場合は、「血虚」の場合と「瘀血」の場合があります。
どちらの場合も血液の流れが悪くなるので、まず左に症状が出やすいのです。
214.血虚と貧血
中国医学では、血の不足を血虚といいます。
この血虚は貧血と似ているけども違いがあります。
貧血は、血液を採血して、その成分が濃いか薄いかをみるものです。
血液が濃くても量が少ない場合もあります。
また血液が薄くても量が多い場合もあります。
血虚とは、血液の量が少ない事を言います。
血液の量は、血流計などを使って1分間の血流量を量る事である程度推測出来ます。
また、慣れてくると、望診(顔色、舌の色、つめの色)や脈診で血虚があるかないか判断出来るようになります。
貧血がある人でも、血液の量が多い場合は血虚の症状はあまり現れません。
逆に貧血とは言われなくても血液の量が少ない時は血虚の症状が出て来ます。
ですので、体にとっては貧血よりも血虚を重視した方が良いのですが、貧血が数値で出る客観的な指標にたいして、血虚は中医師の判断にゆだねられます。
このため判断にバラツキが出てしまうのが難点です
213.季節による加減
中国の明の時代の奇効良方という本の四物湯の所に季節による加減がのっています。
面白いのでご紹介します。
春 川きゅうを2倍にする。必要におうじて防風を加え防風四物湯とする。
春は脉が弦になり、頭痛がよく起こる。
夏 芍薬を2倍にする。必要に応じて黄岑を加え黄岑四物湯とする。
夏は脉が洪になり、下痢がよく起こる。
秋 地黄を2倍にする。必要に応じて天門冬を加え門冬四物湯とする。
秋は脉が沈澀で血虚となる。
冬 当帰を2倍にする。必要に応じて桂枝を加えて桂枝四物湯とする。
冬は脉が沈となり、寒くて食べられなくなる。
脉は季節に応じて変化します。ここにある四季の脉はみな標準的な脉です。
今は暖冷房が完備しているので季節による加減はあまり行われなくなりました。
それでも人間の体は四季に応じて変化しています。
ですので、季節を考えて漢方を選んでいく事はやはり必要です。
212.漢方を飲む時間
最近、よく質問される事として漢方薬を飲む時間があります。
いつ飲むのが良いのか、どの時間に飲むと効果的かという事です。
その前に、まず、はっきりと理解していただきたいのは、特殊な場合を除いて、飲む時間はあまり重要ではないという事です。
それより大切なのが、ちゃんと飲む事です。
例えば食前に飲む予定が飲み忘れてそのままになってしまう。
これではせっかくの漢方薬は何にもなりません。
まず、時間にこだわらず決められた回数、決められた量を飲む事です。
毎日、忘れずにちゃんと飲めて、さらに時間にも余裕がある場合、それから時間にこだわって下さい。
一般的には空腹時の飲むと、一気に吸収されます。
ただし、効いている時間は短くなります。
食後に飲むとゆっくりと吸収されます。
この場合、効いている時間は長くなります。
ですので結局は同じ事になります。
ただ、もし風邪などの場合とか、頭痛がひどいなど、今すぐに治したいという場合は空腹時に飲みます。
これに対して、長期間飲む体質改善などの場合は、空腹時でも食後でもあまり大きな差はありません。
ただし、「なんとなく効いている感じ」というのは空腹時の方があると思います。
これに対して胃が弱い場合などは食後に飲むようにするといいでしょう。
これとは別に、補腎薬などは寝る前に飲むと効果があります。
ホルモンの分泌は寝ている間に多くなります。
ですのでホルモンの分泌を助けるような補腎薬は寝る前が効果的なのです。
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