深谷薬局 養心堂

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冬霜

冬霜があるので、夏霜があるかというとそうでなくて、冬霜はただの霜です。
霜柱をとって、鳥の羽で掃いて綺麗にし、瓶に保存します。
甘、寒、無毒。
「これを飲むと酒熱を解す。酒を飲んで顔や耳が赤い時、これを飲むとたち所に赤味が消える。」
今なら氷水でしょうけど、冷蔵庫が無い時は、それも良いかも。
夏のアセモや、脇の下が赤く腫れる場合に、淡水貝の殻の粉とまぜて使えばたち所の効果がある、とも。
さらには、発熱、マラリア、鼻づまりなどにも応用されています。
しかし、所詮水ですから、そんなにたいした効果は期待出来ないでしょうね。

腊雪

中国語で腊月というと、旧暦の12月を意味します。
『本草綱目』では、冬至の後、三回目の戊(つちのえ)を腊と言うと書かれていますから、まあ旧暦12月ころでしょう。
野菜や麦の虫を殺す、つまり農薬のような役目をする。
密封しておけば、10年腐らないと。
また果物をつけておくと虫がわかない。
などと書かれています。
本当にそんな効果があるのかかなり疑問です。
効能も「一切の毒を解す、流行している疫病、子供が熱で発狂するような場合、結石、お酒の後の熱、黄疸を治す。」
とあります。
やはりちょっと無理があります。
『本草綱目』は学術的には高い評価があります。
ただ、迷信的な記載もかなりありますから、盲信しない事が大切です。
たとえば雪は六角形なので陰の成数。とかかれています。
陰陽の考えでは奇数は陽、偶数は陰です。
その中でも陰の代表が6で、陽の代表が9となります。
占いなどでは多用されている理論ですが中医学としては必ずしもあてはまりません。

夏氷

氷は太陰の精。
冷蔵庫の無い頃は、山の中の氷穴などに保存したようです。
『本草綱目』では、甘、冷、無毒となっています。
生薬は、普通、寒、凉、平、温、熱 などで冷というのは無いのですが、ここでは冷となっています。
効能は、煩熱を去り、喉の渇きをとり、暑毒を消す。熱にうなされて意識がもうろうとする時、
ひとかたまりの氷を胸の中央に置くと良い。
また酒毒を解する。
夏の暑い時に冷たい氷を食べる事は季節に相反している。
そうすると、腹中の冷と熱が争って病気になる。
だから、夏の冷たいものはほどほどにすべきである。
宗の時代の微宗は、冷たいものを食べ過ぎて、脾の病気になった。
国家の医師では治療できず、楊界という人が大理中丸(脾胃を大いに温める薬)で治療した。
などと書かかれてあります。
もっともな事です。

神水

『本草綱目』では、「5月5日の午の刻(昼の12時)に、雨がふっていたら、急いで竹を切ると中に神水がある。」
この部分、何か神秘的な雰囲気をかもしだしています。
何故、5月5日、限定1日限りなのか?
きっと、少しくらいずれていても、大丈夫でしょうね。
効能 胸やお腹に、積衆(しこり、かたまり)がある時。
   あるいは寄生虫がいる時にイタチやカワウソの肝の丸薬と一緒に飲ませる。
   また、「清熱化痰、定惊安神」とあります。
   この部分は竹の汁である竹瀝に似ています。

半天河

半天河は、竹垣とか、木の穴などにたまった水の事です。上池水とも言います。
気味は、甘、微寒。無毒。
鬼精を殺し、恍惚や妄語に良いらしい。
「これを飲ませる時に、何をのませたか患者さんに言わない」となっています。
内容を知ってしまうと効果が薄れるというなら、プラセボ効果でしょうか?
竹瀝水なら化痰作用があるので、恍惚や妄語に良い可能性がありますが。
槐の木の半天河は、諸風、悪創風、掻疥痒に良いとなっています。

流水

流水は、河の水です。大きな河の水も小さな川の水もどちらも流水です。
流水の中で、大きな河の水を千里水、または東流水といいます。
中国では大きな河は皆、東に流れるので東流水といいます。
河の上流で流れが急な部分を急流水といい、「急速下達」の働きがあり二便を通じる時に使います。
これは、ふつうの河の流れの中の水なので順流水ともいいます。
これに対して逆流水というのがあります。河の流れに逆らった水で、長江の大逆流とか、洪水なとで河が氾濫したようなものです。
その性質は、下から上に向かうので、吐痰などに使います。
ただ、多分に迷信的な部分もあると思います。

甘爛水

甘爛水とか、労水というものがあります。
これは、おおきな桶などに水を入れたあと、ひしゃくなどでその水をくみ、
上から注ぎ、またくんでは注ぐという事は繰り返していくと、水の表面に細かい泡が立つようになります。
これを甘爛水または労水といいます。
中国の水は硬水なので、このようにすると水を軟らかくすると考えられます。
補腎の作用があると言われていますが、ちょっと怪しいです。
それよりは、軟水なので胃腸の負担が少なく、薬を煎じるのには良い水と思います。
今の日本の水、とくに浄水機をつけている場合は、みなこの甘爛水と同じ意味になります。

井泉水

井戸の中の水です。
朝一番に汲んだ水を「井華水」といって、効果が一番良い物です。
また、井戸の水脈によっても水質は大きく異なります。
なるべく、遠くから来る水脈が良いとされています。
近くの湖や河が水脈のものは、これに継ぐ。
都市部で汚染されたものは飲まない方が良いと書かれています。
遠くから来る水脈が良いのはミネラルが多いという事でしょうか。

季節水

中医学ては水をとても重視します。
ホジュンというドラマでも、初めの方に水を極める話がありました。
節季水
『本草綱目』によれば、季節に応じて水も性質を変えるようです。
「水之気味、隨之変遷、此及天地之気候相感」と書かれています。
立春、清明の二節の水は神水と良い、諸風、脾胃虚損などに効果がある丹薬を練る時に使います。
寒露、冬至、小寒、大寒の四節の水で、五臓を滋補し、痰火、積衆、虫毒に効果がある丹薬を練ります。
立秋の日の五更(明け方ころ)の井華水は、老いも若きも、これを飲んでおくと、マラリア、泄利など百病を寄せ付けない。
重午(5月5日)のお昼ころの水でマラリア、赤痢、金創、虫毒などに効果がある丹薬を練ります。
小満、芒種、白露の三節の水はみな有毒で、製薬や造酒、食物などを作るとみな腐敗しやすくなります。人が飲むと、胃腸の病気になります。
と書かれています。最後の一文はとても疑問です。
ただ、丹を練る時のお水も季節を考えているというのはびっくりです。
水以外の要素でも、丹を練る季節によって効果が変わるという事はありそうですね。

当帰身と当帰尾

日本の当帰はあまり大きくありませんが、中国の当帰はものすごく大きいものです。
大きな当帰ですから、本体の部分と、根っこのはしっこの部分では作用が違います。
本体の部分を当帰身といって、甘味がつよく、血を補う作用がとても良いものです。
根っこの細い部分は当帰尾。辛みがあり、活血作用がよくなります。
老中医は処方箋をかく時に、当帰身と当帰尾を使い別ける事がよくあります。
一度、病院の調剤室を見学に行きました。
そこで当帰身と当帰尾について処方箋を配合している若い薬剤師に聞くと、特に区別していないという事でした。
ただ、処方箋に当帰身とある時はなるべく大きめな所、当帰尾とある時は底にたまった細かいものを配合すると言っていました。
老中医の深い思いは、なかなか全部は若い薬剤師には伝わらないようでした。

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