深谷薬局 養心堂
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460.料理と方剤

料理と処方は良く似ている。
美味しい料理は、色々な味がするが全体としては一つにまとまり、まるで良い音楽を聞いているかのように心地が良い。
すぐれた処方は、しっかりとした方向性を持っているが、それだけでなく他の方面にも気を配り、バランスよく配合している。
これを君臣佐使と言う。
君薬は主薬とも言い、その処方の方向性を決定している。
多くは処方の名前に主薬の名前が含まれている。
臣薬は、君薬を助ける。
この場合、君薬と同じ作用の場合もあるし、君薬には無い作用のものもある。
佐薬も君臣を助ける場合もあるが、多くは君薬とは違う作用のものを使い、処方独特の味付けをする。
砂糖と塩の関係のようだ。
そして、使薬は、病気の場所に薬を運ぶ。
また、全体を調和させる作用のものもある。
君薬 砂糖、臣薬 酢、佐薬 塩、使薬 胡椒
こんな感じではと思う。
ただし、処方は料理ではないので、良い処方が美味しいとは限らない。

459.常識は人によって違う

ある人が常識だと思っている事が、他の人には通用しない事がよくあります。
体質もそうです。
ある人が健康に良いと思ってやっている事が、別な人には良くない事もあります。

例えば、朝食は食べた方が良い という常識。
一般の人には当てはまりますが、脾虚の人は朝から食べられません。
消化酵素が働かないのに食事を詰め込んでも消化できないだけです。
このような人はおかゆなど消化の言いものを適量とるのが良いでしょう。

お酒の量、運動量、水の量なども個人差が大きいです。
どうしても自分のモノサシで他人を測ってしまう傾向があります。
一人一人の個性を考えて生活していく事が大切だと思います。

中医学は弁証論治といって、個人差を大切にする医学です。
同じ病気でも体質が違えば使う薬も違ってきます。
人間は機械ではありません。
機械のようにみな同じでは無いのです。

458.検査値と中医学

検査値の中で、体温、心拍数、など測定する機械がなくてもある程度解るものもあります。
ただ、多くのものが測定する機械だったり試薬が必要です。
そういった機械や試薬は中医学が出来たころにはありませんでした。
その代わりに発展していったのが舌診と脈診です。
中医学は、西洋医学のような検査結果が無くても、症状と舌診、脈診で弁証論治して体にあう処方を決める事が出来ます。

しかし、最近はどうしても検査値を重視するようになって来ました。
それで最近は中医の診断に西洋医学の検査値も取り入れられて来てはいます。
ただ、まだまだ発展途上です。
中医学の発展は西洋医学ほど急ではありません。
百年単位くらいで進歩します。
それは短所でもあり、長所でもあります。
長所というのは安全性です。
百年かけて臨床実験が行われると考えてみてください。
漢方薬はいかに安全かという事が解るでしょう。

短所は、西洋医学の検査値に中医学はまだまだ対応出来ていない事です。
例えば血圧に良い漢方、コレステロールを下げる漢方、肝機能や腎機能を改善する漢方などの需要が高まって来ています。
中医学では、これらの数値をもとに処方する方法は試行錯誤の状態です。
今、多くの中医師がどうすればこれらの数値が改善するか試行錯誤の状態です。
ただ、どんなに中医学が進んでも、検査値だけでなく体質に応じて処方する弁証論治は残っていくと思います。

457.潤い不足は水を飲めば解決するのか?

中医学で、潤い不足を津液不足と言います。
津液は「しんえき」と読みます。
津液はただの水ではありません。
いろいろな栄養が含まれた、体に必要な潤いです。
確かに、水分が不足すると津液も不足します。
このようなものは一時的なものです。
もう少し、本質を考えると、津液不足は、栄養不足と水を保持する力の不足です。
栄養を含まないサラサラした水は、体内にとどまらずすぐに出て行ってしまいます。
栄養が含まれた水は、細胞の中や血液の中に入ります。
またリンパ液の原料にもなります。
さらに栄養のある水を保持する力も大切です。
津液不足の代表に麦味参顆粒があります。
麦門冬と人参は潤いを助ける作用があります。
人参には津液だけでなく気を補う作用もあります。
五味子は潤いが逃げないように保持する作用があります。
この五味子の作用のおかげて麦味参顆粒はただ潤すだけの処方よりも効き目が良いものとなっています。

456.目はどうして肝になったのか?

中医学では肝は目に開竅するとなっている。
開竅の意味はわかりにくいが、出入り口のようなものと考えてみて欲しい。
肝という臓器の様子は目に現れるという意味だ。
どうしてこのようになったのだろうか?
「鳥目」という病気がある。
これはビタミンAの不足なのだが、昔の人はビタミンAなんて知らない。
ビタミンAが多いのは、レバーだ。
あるいはヤツメウナギの肝。
どちらも肝臓だ。
肝臓を食べると目が良く見えるようになる。
おそらく、そんな単純な理由から肝と目が結びついたのでは無いかと思っている。
昔の医学はシンプルなのだ。

455.補腎薬について その2

腎を補うのは難しい。
だから、補腎薬の効果は、効果が出るまで時間がかかると言われる。
補腎薬の中で、比較的効果が速くでるのが、精力に関してだ。
だから、最初の補腎薬は、男性は精力剤、そして女性は美肌と考えられる。
精力増強といえば、マムシ、すっぽん、オットセイのペニスなどいわゆるゲテモノ系だ。
そして、あの附子も精力剤の一つだ。
女性の美容の代表は、燕の巣とか亀板だろう。
こういったものは、確かに効果はあると思う。
ただ、価格がとても高い。
そして、飲む人はただ単に精力剤、あるいは美容の薬として中医学的な考えもなく服用するから、体質にあわない事が沢山ある。

補腎薬のもう一つに、老化にかかわるものがある。
つまり老化防止としての補腎薬だ。
漢方には老化防止の作用があるものがある。
ただ、老化防止ついて言えば、補腎薬より、活血化瘀薬、化痰薬などむしろ汚れを綺麗にするものに顕著なように思う。

454.補腎薬について

中医学で、腎について言えば、1つ目は精力、2つ目は老化、3つ目は骨だろう。

今回は骨について考えよう。
現代医学では骨はカルシウムとわかっている。
しかし、昔の人はカルシウムというものはわかっていなかった。
ただ、骨を食べれば骨が丈夫になるだろうとは考えた。
それで、一番丈夫な骨は何だろうと考えた。
そこで登場するのは虎だ。
そこで珍重されたのが虎の骨。
虎の骨の中で、前足の骨はすばらしいらしい。
だから、悲しい事に虎の前足の骨は高値で取引されたようだ。
虎も災難だ。
成分的に虎の骨が他の哺乳類の骨に比べて、すぐれた薬効があるとは思えない。
いろいろな動物が中医学の名のもとに乱獲されたのは悲しい事実だ。
その中で、犀角とか穿山甲など、それなりの薬効もあるものもあるが、虎骨は他の哺乳類の骨でも問題ないだろう。
虎の前足以外の骨は、きっと類似の哺乳類の骨が沢山流通していたのではないだろう。
虎の前足だけば、他の哺乳類の骨と違うので偽物が少なかった。
だから高く流通した。
そんなからくりがあったのではと思う。

453.右腎は命門なのか

中医学では、腎は左右にあり、右は命門で左は腎陰とされる。
命門は腎陽の意味に近い。
ただ、個人的にはこの学説が正しいのかよく分からない。
心臓は左にあり、肝臓は右にあるのは確かだし、腎が2つあるのも正しい。
しかし左右の腎臓の役割が違うとは思えない。
中医学的な腎は腎臓の意味だけではない。
骨、成長、性ホルモン、そんなものも含めて腎と言っている。
しかし、それを含めて考えても、腎の左右の違いがよくわからない。
右を命門としたのは、脈診と関係がある。
右の脈は上から、肺、脾、命門となり、気とか陽と関係が深い。
これに対して、左の脈は、上から心、肝、腎陰となり、血や陰との関係が深い。
これに当てはめて考えたのだろう。
しかし、実際の臨床で、右の脈が弱いから陽虚、気虚とか、左が弱いから陰虚、血虚とは言えない。
40年以上、脈診しているが、そんな気配は感じない。

452.耳は腎だけで良いのか?

中医学では耳は腎との関係が深く、耳に関する処方は腎とかかわるものが多い。
確かに、急性のものは除くと、耳の衰えは老化と関係している。
老化に関わるのは腎だから、耳と腎の関係は切っても切れない。
だからと言って、耳の衰えは腎だけでは無いだろう。
例えば、耳鳴り。
慢性的な耳鳴りは、老化にかかわるもので、直しにくい。
耳鳴りの原因として、腎の老化以外に、肝と脾がかかわるものがある。
脾がおとろえ脾の気が昇らない。
それにつけこんで、肝の気が濁気と一緒にのぼって、耳鳴りを起こす。
治療としては、肝の気を降ろす事と、健脾して脾気を昇らせる事だ。
勿論、一人一人の体質は違うので、使う処方も違うが、耳はすべて腎からと言う訳にもいかないと思う。

451.目は肝と腎で良いのか?

中医学では、目は肝との関係がもっとも深く、肝腎同源の理論から腎との関係も重視されている。
それで、目にかかわる漢方は肝や腎と関係するものが多い。
たしかにそれは否定はしない。
しかし、それにとらわれすぎていないだろうか?
目は血流は大切だが、水の流れも大切だ。
水の流れを調節しているのは肺、脾、腎だ。
特に目と脾の関係はもっと重視するべきだろう。
健脾利湿、益気昇陽などの方法が大切だ。


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