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144.外邪 寒邪

寒邪は2種類あります。
一つは、温度が低い邪気、つまり冷たい水、空気、氷、雪などです。
これらに長時間ふれた場合、寒邪をうける事になります。
もう一つは細菌やウイルスです。
これらの邪気が体内に侵入しておこるものが、広義の傷寒です。
広義の傷寒は、また色々な種類があります。
強く寒気を起こすものを狭義の傷寒と言います。
寒邪が体内に侵入ても、すぐに発病しないで、季節が変化して発病するものを温病と言います。
この場合は寒気を伴わないか、あってもごく僅かです。
この温病も広義の傷寒の一種です。

143.外邪 風邪

外邪は身体の外部から侵入する邪気ですが、今日はその中で風邪についてお話しします。
風邪は「ふうじゃ」と読んで下さい。「かぜ」と紛らわしいですね。
「かぜ」も「ふうじゃ」の一種ですから、同じ漢字が使われています。
風邪は風という邪気です。
風の性質はよく動く、変化する事です。
たとえば、痛い場所、痒い場所が移動します。
また、クシャミ、咳などの動作をともなう症状をおこします。
風という邪気はあまり強い邪気ではありません。
ですので、よほど虚が進んでいない限り、風単独では病気がおこりません。
風がやっかいなのは他の邪気と結びつきやすい事です。
例えば寒邪とむすびつき風寒という邪気になります。
また熱と結びついて風熱となります。
これらの邪気は非常に強い邪気となります。

142.邪実

邪実とは、邪気が体に存在する状態です。
邪実は次の3つがあります。
 
外邪  身体の外から体内に侵入する邪気。 風寒暑湿燥火の6つの邪気があります。
伏邪  外邪が長く居座っている状態
内邪  体内で生成させる邪気。 六鬱とも言います。 気湿痰血食火の6種類あります。
 
伏邪の概念は現代中医学ではあまり詳しくありません。
しかし、慢性の病気の弁証論治には非常に大切な考え方です。
例えばリウマチなどは風寒湿の3つの邪気が入り交じり、体内にいすわる状態で、時に化火します。
花粉症は、花粉がなくなっても、体内に伏邪として邪気がのこり、次の年にまた花粉にふれると伏邪が動き出すと考えます。
ですから、花粉症が発症していない時期に伏邪をとりのぞく事が大切です。
現代医学での抗体なども伏邪の一種と考えて良いでしょう。

141.虚と実

漢方でよく「虚」とか「実」という言葉を聞くと思います。
あるいは虚証とか実証と言う場合もあります。
この虚実は、日本漢方と中医学では意味が異なります。
日本式の漢方は虚は体力がない、疲れやすい、やせいてる、血圧が低いなど弱々しい体質を言います。
これを虚証という言い方をする事が多いです。
また実は、体力があり、がっちりしているか太り気味、血圧は時に高めなどの体質をいいます。
実を実証、または実証体質などと言います。
これにたいして、中医学では、実は「邪実」を意味し、虚は「正虚」を意味します。
邪実とは体内に邪気が存在している状態です。
正虚とは、正気の不足を意味します。
邪気と正気については、次回以降、詳しく説明します。

140.中医学の定量化

中医学の非常に難しい問題として、定量化があります。
例えば肝臓が悪い場合、現代医学であれば肝機能の検査でどのくらい悪いのか、また治療によってどのくらい回復しているかなど数値で解ります。
これに対して、中医学は顔色であるとか、舌の色であるとか、脈の状態などみな数値では表せません。
勿論、数値で表せる方がなにかと便利な場合が多いです。
そこてせ顔色や舌の色を数値化しようとする方法もあります。
しかし、絶対的な舌の色はあまり意味がありません。
顔色と比較してとか、体格と比較してとか、脈の状態、病状などと比較してどうかという事が大切です。
例えば顔色が青白く、体格はやせていて、脈が弱い場合、舌の色は当然淡色になるはずです。
これがもし正常の人と同じなら、やや赤味があると判断する必要があります。
また顔色は顔の部分によっても違います。数値化するよりはイメージとして捕らえる方が解りやすいものです。
中医学はこのように数値よりも直感的なものを非常に重視しています。
ですので、どうしても治療する人の経験で診断にバラツキが出てしまいます。
それが中医学の長所でもあり欠点でもあります。

139.寒凝

中医学の用語で、「寒凝 かんぎょう」という物があります。
ちょうど今の季節にぴったりの用語だと思います。
寒凝は、身体の外から寒邪が進入して、血流を阻害し、瘀血を生じている状態です。
イメージ的には血液が寒くて凍っている状態と思って下さい。
勿論、本当に凍ってしまったら大変ですけども。
この場合、まず温める呉茱萸とか乾姜などを使い、氷を溶かしていく必要があります。
また、雪山で遭難した場合などを除いて、通常は寒凝がおこるのは体内の陽気が足りない為です。
ですから、陽気、特に腎陽を補うものも考えます。
代表的な処方が「当帰四逆加呉茱萸生姜湯」です。
これに海馬補腎丸や東洋八味地黄丸など腎陽を補う物を併用していく事が多いです。
瘀血を考えて、冠元顆粒を併用する事もあります。

138.頚管粘液

おりものにも色々と種類があります。
出た方が良いものと、あまり出ない方が良いものがあります。
出た方が良いものとして、排卵の少し前くらいに、透明、時に白色で、長く伸びるおりものが出ます。
これは頚管粘液というものです。
頚管粘液は精子を通しやすくする役割があります。
中医学的には、もう一つ意味があります。
身体の中には「津液 しんえき」という栄養が沢山含まれた液体があり、身体を潤していると考えます。
いろいろな粘液はみな津液の一部分です。
ですから、頚管粘液も津液の一部分です。
津液は卵胞の中にもあります。
卵胞の中は、栄養の沢山入った液体で、中医学的な分類では津液の一部分です。
つまり、津液がたっぷりある人は、頚管粘液も多く、卵胞の中身も良いという事になります。
ですから、不妊症を中医学で治療する場合は、頚管粘液の量を重視します。
ただ、おりものにも色々なものがあります。排卵の頃の粘るおりものがあれば、大丈夫です。
あまり出ない方が良いおりものとしては、さらさらした水のようなおりものは、津液というより余分な水の可能性があります。
特に冷えやすい体質で、かつ余分な水がある人に多くみられます。
また、動いた時に尿もれのように出る場合は、着床などに影響する可能性もあります。

137.痰と温胆湯

痰とは、簡単に言えば、汚れた脂とか繊維のようなものです。
これには、狭義の痰と広義の痰があります。
狭義の痰は、目に見える痰で、例えば気管支からはき出される痰、ガングリオン、骨刺、結節、筋腫、皮様性嚢腫などです。
ガンなども痰と瘀血が混ざったものと考えます。
これに対して広義の痰は、「存在ははっきりしないけども、化痰薬を使う事で改善する見えない痰」という定義です。
例えば、てんかん、統合失調症、不眠、耳鳴り、高脂血症などです。
特に、広義の痰は身体の至る所に存在する可能性があります。
ですから、「怪病従痰論治」という言葉もあるくらいです。
血液の汚れの瘀血にくらべて、津液の汚れの痰は、中医学でも理解しにくい部分です。

136.車轍中水

赤龍浴水ほどではないけども、こちらも摩訶不思議な水です。
その名のとおり、車のわだちの凹みに溜まった水です。
5月5日に汲むと良いようです。
牛の蹄の跡に溜まった水でも良いとの事です。
どちらもあまり飲みたくないです。
主治は、癧癰風となっています。瘰癧とか、癰疽などでしょうか。
風というのは、痙攣を起こしている状態かもしれません。
とても効くとは思えない物です。

135.地漿

黄土に穴を掘り、水を入れかきまぜたものを汲んで、しばらく放置して透明になったもの。
黄土の成分が含まれていると思われます。
効能としては笑い茸を食べて笑いが止まらない人に良いとなっています。
本当に効くのでしょうか?
効いたら凄いですね。

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