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心筋梗塞と弁証
「中医雑誌」に面白い記事がありました。
造影剤で冠状動脈の狭窄がみられた405人の体質を判断しています。
その中で、
瘀血があった人 66.4%
痰濁があった人 43.7%
気虚があった人 34.8%
陰虚があった人 15.1%
気滞があった人 8.6%
寒凝があった人 7.4%
陽虚があった人 7.2%
という結果でした。
兼証がありますから合計は100%にはなりません。
この結果を見ますと、瘀血と痰濁はまあ、予想通り。意外に多いのが気虚。
そして意外に少ないのが陽虚と寒凝でした。
そうすると「冠元顆粒」「星火温胆湯」「麦味参顆粒」が心筋梗塞予防の3点セット?
実際の臨床はもっと複雑ですから、そう単純には行かないでしょうね。
酸棗仁
サネブトナツメの種を酸棗仁といいます。
主に肝、心に入り、安神寧神作用があります。
ですので、肝や心の気虚や血虚で、寝付きが悪い場合によく使われます。
面白いのは、「酸棗仁は炒って使うと、不眠に良くきき、そのまま使うと嗜眠(昼の眠気)によく効く」という説です。
最近の動物実験では、炒って使っても、そのまま使っても催眠作用がある事が解りました。
ただ、酸棗仁を炒ってみると、何とも言えない、良いにおいがします。
臭いをかいでいるだけで、眠くなる気がしてくるほどです。
また、炒った酸棗仁は香ばしく、のみやすいものです。
薬効成分とは関係が無いのかも知れませんが、味や臭いのリラックス作用は炒った方が勝ると思います。
竜眼肉
中国の南の方に行くと、茶色くて、直径2cmくらいの硬い木の実を売っています。
ちょっと茘枝に似ていますが、色はもっと薄くて、茶色というよりベージュ色。
茘枝より小粒で、表面も茘枝と違ってつぶつぶではありません。
割ってみると、茘枝と同じような果肉が入っていて、とても甘くて美味しいものです。
家内が大好きで、見つけるとすぐに買ってしまいます。
中医学には養心安神作用があり、眠りを誘うものです。
漢方で使う龍眼肉は生のものではなくて、乾燥させたものです。ちょうどレーズンのような感じです。
ただ、実際には竜眼肉をいくら食べても、眠くはなりません。
やはり柏子仁とか、酸棗仁、蓮子芯などと配合して初めて効果が出るものと思います。
石膏
生薬の中には鉱物性のものもあります。
その代表が石膏です。
現代中医学では石膏はとても冷やす作用が強く「大寒」とされています。
しかし、神農本草経では微寒で、清代の名医、張錫純も石膏はとても穏やかなものとしています。
そして、数百グラムという単位で使っています。
確かに石膏の作用は穏やかなものと思います。ただ、鉱物のものは水に溶ける量は限られています。
ある一定以上は、飽和して水には溶けません。
そうなると、水に溶けない部分で、石膏の微粉末などが煎じ液に拡散していると考えられます。
それなら、いっそ初めから微粉末にしてから少量とかし込む方が効果が良いようにおもいます。
ただ、そのような方法は今のところ行われていないようです。
蓮
蓮ほど、色々な部位が使われる生薬はありません。
まず、蓮根。これは補血作用があります。
また、蓮根の節の部分は藕節といって止血作用があります。
花托は蓮須といって収斂作用があります。
蓮の実は蓮肉といって下痢を止めたり、精神を安定させます。
また蓮肉の中の芽は、蓮子芯。清熱作用や興奮を静める作用があります。
蓮の葉は、荷葉と言います。解暑の作用があります。
こんなにも沢山の部位でそれぞれの効能が違うものは蓮をおいて無いでしょう。
当帰について
日本で作られている漢方薬でも、その原料の生薬は殆ど中国から輸入されています。
ただ、例外があります。
それは当帰です。
当帰は、日本で栽培されているものと、中国で栽培されているものは植物の種類が違います。
日本薬局方では、日本産の当帰を記載して、中国産の当帰は記載されていません。
この為、法律的に当帰はどうしても日本産の当帰を使う必要があります。
もし、中国産の当帰を使いたい場合は、今までとは別な医薬品の認可が必要になってしまいます。
中国産の当帰と日本産の当帰を比べると、多少、味の違いもあります。
補血の作用は、やや日本産の方が良いように思いますが、潤いを与える作用は中国産の方が強いようです。
中国産の当帰は、よく便が柔ら無くなったり、時に下痢したりします。
中国の研修の時に「下痢気味の人は当帰を使わないように」という話が出ます。
しかし、日本の当帰で下痢してしまうという人は殆どありません。
抗内膜抗体
不妊症の一つの原因として、自分の内膜に対する抗体が出来てしまう事があります。
抗内膜抗体が出来ると、内膜が厚くなりにくかったり、着床しにくくなったりします。
ですから、抗内膜抗体を無くす事は妊娠にとって重要です。
ただ、残念ながら内膜に対する抗体の検査は日本では殆ど行われていません。
しかし、中国ではかなり頻繁に行われている検査です。
例えば中医雑誌でも抗内膜抗体が陽性の人に漢方薬を2ヶ月のんでもらい80%の人が陰性になったという報告が載せられています。
原因不明の不妊症の中にも、抗内膜抗体陽性の場合があるように思います。
日本ではこれに近い検査として、慢性子宮内膜炎の検査をする病院があります。
CD138免疫染色という方法で検査しています。
お米は漢方薬?
実は、あまり知られていませんが、お米も漢方薬です。
「白虎加人参湯」という処方があります。
この中に粳米と言う名前で使われています。
粳米は、うるち米、つまり普通のお米です。
もちごめは糯米といいます。
白虎加人参湯は糯米を使うという説もあるのですが、糯米の性質はかなり膩なので、便秘しやすい陽明病では避けるべきです。
ですから糯米でなく粳米を使うべきです。
さて、白虎加人参湯の中の粳米は必要なものなのでしょうか?
色々な意見があります。
昔は栄養状態が悪かったので、粳米で栄養補給をするという説もあります。
しかし、それなら白虎加人参湯だけでなく色々な処方にもっと粳米があっても良いはずです。
張錫純は、粳米の働きは石膏などの重い生薬が中焦に止まるようにする為といっています。
ちょっと前に甘草の伏火の話をしましたが、少しそれに似ています。
ですので、ふだんお米を食べているから必要無いという事ではありません。
やはり煎じたものと一緒に飲む必要があります。
鶏内金
鶏の砂袋を鶏内金といいます。
綺麗な黄金色なので、鶏内金と言います。
鶏の砂袋はとても強靱で、何でも消化してしまいます。
この事から、硬いものでも何でも、軟らかくしたり、砕いたりすると考えます。
硬いものを砕く作用としては穿山甲と同じですが、穿山甲は希少動物です。
ですから今は中国では鶏内金がよく使われます。
日本では医薬品ではなく、健康食品になっていますから使いやすいものです。
消導作用(消化を助ける作用)もありますが、軟堅作用がとても良いものです。
血糖を下げる作用もあります。
鹿角霜
日本では殆ど使われませんが、鹿角霜という生薬があります。
本来は、鹿の角である鹿角を地面に半年とか1年くらい埋めて、土壌の菌で少し腐食させてから使います。
このようにする事で、通常の鹿角よりも分解されやすくなるものと思います。
ただ、現在の中国で使われている鹿角霜は、殆どが鹿角から鹿角膠を採取した残渣になります。
このような鹿角霜は、本当の鹿角霜よりも効き目は格段に落ちます。
ただ、価格も格段に安いので、資源の利用としては価値があると思います。
出来ればこの2つを明確に区別する為に、呼び名を変える方が良いでしょうね。
といっても、本物の鹿角霜は今は中国でも殆ど手に入れるのは難しいと思います。
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