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152.宿邪 宿火

宿火の代表はヘルペスです。
ヘルペスはウイルスが体内の一部に居座って去らない状態です。
このような場合は宿火を去らないと何回も再発さします。
ただし、宿火が動く背景には正気の虚がありますから、扶正去邪が大切です。
肝炎のウイルスは宿湿の場合と宿火の場合があります。
というより宿湿と宿火が入り混じったものです。
ただ、どちらの邪気が強いかにより、治則は異なります。
また、色々な宿邪は最終的には化火して宿火になる可能性があります。
アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、歯槽膿漏、痔などは宿火の代表です。
中医には「火鬱は発之」という治則があり、清熱解毒と同時に発散する方法がよく用いられます。
例えば痔に麻杏甘石湯、アトピーに銀翹解毒散などを用いる場合などです。

151.宿邪 宿湿

外から入った湿邪がなかなか去らない状態が宿湿です。
脾虚などで体内で出来た湿は宿湿には入れません。
日本は湿度が高い国ですから宿湿は多く見られます。
宿湿は、外邪をうけてすぐに発症して、そのまま治らず湿邪が居座る場合と、外邪をうけてもすぐに発症しない場合があります。
前者の代表はリウマチとか腎炎などです。
後者の場合は細菌やウイルスによるものが多く、代表的なものはピロリとか肝炎です。
湿は風、寒、火と結びつきやすく色々な症状に変化します。
舌の苔が厚くなり、口がまずい、身体がだるいなどの症状をひきおこします。
この時、内湿との区別が難しくなりますが、内湿と宿湿では治則に大きな違いは無いので、明確に区別する必要はありませんが違う部分もあります。
内湿の場合は主に臓腑辨証を使って治療します。
伏湿の場合は温病の治法、特に三焦辨証が役に立ちます。

150.宿邪 宿燥

宿燥という概念は確かにあります。
しかし日本は基本的にあまり乾燥はひどくありません。
ですので、日本ではそもそも燥邪が体内に侵入する機会もあまり多くはありません。
このため宿燥もそう多くはありません。
処方では「麦門冬湯」や「百潤露」がそれにあたります。
宿燥の場合は多少風邪が合わさっている事が多いので潤すものに少しだけ発散するものを加えます。
辛味で潤すの概念になります。
たとえば少量の薄荷や菊花などが良いでしょう。
症状としては口の渇き、目のかわき、ながびく空咳などがあります。
中国の北京などでは冬の乾燥がものすごく、皆さん冬になると咳をしています。
この咳が春になっても治らない場合、宿燥と考えます。

149.宿邪 宿暑

暑邪がなかなか去らないで、体内にいすわった状態です。
なつばてなどはその代表的な例です。
その他には湿熱型の腎炎や慢性の前立腺炎などにも宿暑の存在があると思われます。
宿暑と湿熱は区別が付きにくいものです。
長年の胃腸疾患で、よく下痢をするような場合、清熱利湿の漢方を使ってもあまり効果が出ない事があります。
このような場合、かっ香正気散に少し清熱薬をあわせると効果が出る事が多いものです。

148.宿邪 宿寒

宿寒は、寒邪をうけて、それが体内にいすわっている状態です。
病気が長引き、痛み、ひきつれをともなう事が多くあります。
暖めると楽になるのが特徴です。
冷えといっても、陽虚との区別が大切で、虚実の違いがあります。
宿寒は、身体を冷やしたなどのきっかけがあったりします。
症状も陽虚によるものよりは激しくなります。
脈は沈微になる事もあり、また緊や弦になる事もあります。
よく見られる症状は、リウマチ、しもやけ、生理痛などです。
慢性的な肩凝りは、桂枝加葛根湯を使う事がありますが、葛根湯を使う事もあります。
葛根湯を慢性的な肩凝りに応用する場合は伏寒がある場合と考えられます。
また、蓄膿症に葛根湯加川きゅう辛夷が用いられますが、これは伏寒が化火した状態と言えます。
この場合は炎症があっても清熱しないで、辛味で発散した方が良い事が多いです。
勿論、化火が激しい場合は清熱剤も必要になります。

147.宿邪 宿風

宿風は、風邪(ふうじゃ)が体外から進入して、そのまま居座っている状態です。
代表的なものが花粉症です。
花粉症は、体内に伏風がひそんでいる状態で、花粉にふれると伏風が動いて、クシャミなどのアレルギー症状をおこします。
花粉の季節が過ぎると、症状はおさまりますが、伏風がとれない限り、毎年発症してしまいます。
宿風が居座り続けるのは、衛気の不足もありますが、改善には去風薬も必要になります。
多くのアレルギーには伏風が潜んでいると考えます。
花粉症以外で代表的なものが、尋常性乾癬、アトピー性皮膚炎、腎炎などです。
リウマチや膠原病の場合は、単純な風だけでなく、風、寒、湿の邪気が入り交じって体内に進入して居座り続け、化火したものと考えます。
この他、伏風は自律神経失調症にもみられる事があり、例えば桂枝湯などで栄衛を調和します。

146.中国漢方と日本漢方の違い

中医学と漢方の違いは何でしょうか?
漢方薬というのは、「中国からやって来た薬」という意味なので、
中国で漢方薬と言っても意味が通じません。
「漢方薬」の事を中国では「中薬」と言います。
「漢方医学」は「中医学」と言います。
日本式の漢方は、この病気にはこの薬(風邪にか葛根湯、婦人科疾患なら當歸芍藥散)といった簡単な使われかたをしている事が多いようです。
中医学では「弁証論治」と言って、その人の体質や状態を詳しく分析して、状態を把握し、それにあわせた処方を考えていくという方法になります。
ですから中医学を習得するのは簡単ではありません。
中医学専門の大学があり、付属病院があります。
日本にいて中医学を学ぶのはとても大変ですが、中国の中医師に負けないように毎日頑張って勉強しています。

145.外邪 暑邪

暑邪は、主には気温が高い場合の邪気ですが、これに湿があわさる事が多い邪気です。
気温が高くでも湿気が無い場合は邪気になりにくいからです。
暑邪は夏の邪気です。
身体がだるく、重くなります。
また胃腸に入りやすく、下痢を起こす事が多いものです。
暑邪におかされると、舌の苔は白く厚くなります。
もっとひどくなると苔は黄色くなります。
暑邪は、湿の程度を考えて治療する事が大切です。
湿が多い時は先に湿を取り除き湿と熱を分離します。
湿が少ない場合は清熱剤を使っていきます。

144.外邪 寒邪

寒邪は2種類あります。
一つは、温度が低い邪気、つまり冷たい水、空気、氷、雪などです。
これらに長時間ふれた場合、寒邪をうける事になります。
もう一つは細菌やウイルスです。
これらの邪気が体内に侵入しておこるものが、広義の傷寒です。
広義の傷寒は、また色々な種類があります。
強く寒気を起こすものを狭義の傷寒と言います。
寒邪が体内に侵入ても、すぐに発病しないで、季節が変化して発病するものを温病と言います。
この場合は寒気を伴わないか、あってもごく僅かです。
この温病も広義の傷寒の一種です。

143.外邪 風邪

外邪は身体の外部から侵入する邪気ですが、今日はその中で風邪についてお話しします。
風邪は「ふうじゃ」と読んで下さい。「かぜ」と紛らわしいですね。
「かぜ」も「ふうじゃ」の一種ですから、同じ漢字が使われています。
風邪は風という邪気です。
風の性質はよく動く、変化する事です。
たとえば、痛い場所、痒い場所が移動します。
また、クシャミ、咳などの動作をともなう症状をおこします。
風という邪気はあまり強い邪気ではありません。
ですので、よほど虚が進んでいない限り、風単独では病気がおこりません。
風がやっかいなのは他の邪気と結びつきやすい事です。
例えば寒邪とむすびつき風寒という邪気になります。
また熱と結びついて風熱となります。
これらの邪気は非常に強い邪気となります。

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