目次形式に切り替える124.神水
『本草綱目』では、「5月5日の午の刻(昼の12時)に、雨がふっていたら、急いで竹を切ると中に神水がある。」
この部分、何か神秘的な雰囲気をかもしだしています。
何故、5月5日、限定1日限りなのか?
きっと、少しくらいずれていても、大丈夫でしょうね。
効能 胸やお腹に、積衆(しこり、かたまり)がある時。
あるいは寄生虫がいる時にイタチやカワウソの肝の丸薬と一緒に飲ませる。
また、「清熱化痰、定惊安神」とあります。
この部分は竹の汁である竹瀝に似ています。
123.半天河
半天河は、竹垣とか、木の穴などにたまった水の事です。上池水とも言います。
気味は、甘、微寒。無毒。
鬼精を殺し、恍惚や妄語に良いらしい。
「これを飲ませる時に、何をのませたか患者さんに言わない」となっています。
内容を知ってしまうと効果が薄れるというなら、プラセボ効果でしょうか?
竹瀝水なら化痰作用があるので、恍惚や妄語に良い可能性がありますが。
槐の木の半天河は、諸風、悪創風、掻疥痒に良いとなっています。
122.流水
流水は、河の水です。大きな河の水も小さな川の水もどちらも流水です。
流水の中で、大きな河の水を千里水、または東流水といいます。
中国では大きな河は皆、東に流れるので東流水といいます。
河の上流で流れが急な部分を急流水といい、「急速下達」の働きがあり二便を通じる時に使います。
これは、ふつうの河の流れの中の水なので順流水ともいいます。
これに対して逆流水というのがあります。河の流れに逆らった水で、長江の大逆流とか、洪水なとで河が氾濫したようなものです。
その性質は、下から上に向かうので、吐痰などに使います。
ただ、多分に迷信的な部分もあると思います。
121.甘爛水
甘爛水とか、労水というものがあります。
これは、おおきな桶などに水を入れたあと、ひしゃくなどでその水をくみ、
上から注ぎ、またくんでは注ぐという事は繰り返していくと、水の表面に細かい泡が立つようになります。
これを甘爛水または労水といいます。
中国の水は硬水なので、このようにすると水を軟らかくすると考えられます。
補腎の作用があると言われていますが、ちょっと怪しいです。
それよりは、軟水なので胃腸の負担が少なく、薬を煎じるのには良い水と思います。
今の日本の水、とくに浄水機をつけている場合は、みなこの甘爛水と同じ意味になります。
120.井泉水
井戸の中の水です。
朝一番に汲んだ水を「井華水」といって、効果が一番良い物です。
また、井戸の水脈によっても水質は大きく異なります。
なるべく、遠くから来る水脈が良いとされています。
近くの湖や河が水脈のものは、これに継ぐ。
都市部で汚染されたものは飲まない方が良いと書かれています。
遠くから来る水脈が良いのはミネラルが多いという事でしょうか。
119.季節水
中医学ては水をとても重視します。
ホジュンというドラマでも、初めの方に水を極める話がありました。
節季水
『本草綱目』によれば、季節に応じて水も性質を変えるようです。
「水之気味、隨之変遷、此及天地之気候相感」と書かれています。
立春、清明の二節の水は神水と良い、諸風、脾胃虚損などに効果がある丹薬を練る時に使います。
寒露、冬至、小寒、大寒の四節の水で、五臓を滋補し、痰火、積衆、虫毒に効果がある丹薬を練ります。
立秋の日の五更(明け方ころ)の井華水は、老いも若きも、これを飲んでおくと、マラリア、泄利など百病を寄せ付けない。
重午(5月5日)のお昼ころの水でマラリア、赤痢、金創、虫毒などに効果がある丹薬を練ります。
小満、芒種、白露の三節の水はみな有毒で、製薬や造酒、食物などを作るとみな腐敗しやすくなります。人が飲むと、胃腸の病気になります。
と書かれています。最後の一文はとても疑問です。
ただ、丹を練る時のお水も季節を考えているというのはびっくりです。
水以外の要素でも、丹を練る季節によって効果が変わるという事はありそうですね。
118.当帰身と当帰尾
日本の当帰はあまり大きくありませんが、中国の当帰はものすごく大きいものです。
大きな当帰ですから、本体の部分と、根っこのはしっこの部分では作用が違います。
本体の部分を当帰身といって、甘味がつよく、血を補う作用がとても良いものです。
根っこの細い部分は当帰尾。辛みがあり、活血作用がよくなります。
老中医は処方箋をかく時に、当帰身と当帰尾を使い別ける事がよくあります。
一度、病院の調剤室を見学に行きました。
そこで当帰身と当帰尾について処方箋を配合している若い薬剤師に聞くと、特に区別していないという事でした。
ただ、処方箋に当帰身とある時はなるべく大きめな所、当帰尾とある時は底にたまった細かいものを配合すると言っていました。
老中医の深い思いは、なかなか全部は若い薬剤師には伝わらないようでした。
117.心筋梗塞と弁証
「中医雑誌」に面白い記事がありました。
造影剤で冠状動脈の狭窄がみられた405人の体質を判断しています。
その中で、
瘀血があった人 66.4%
痰濁があった人 43.7%
気虚があった人 34.8%
陰虚があった人 15.1%
気滞があった人 8.6%
寒凝があった人 7.4%
陽虚があった人 7.2%
という結果でした。
兼証がありますから合計は100%にはなりません。
この結果を見ますと、瘀血と痰濁はまあ、予想通り。意外に多いのが気虚。
そして意外に少ないのが陽虚と寒凝でした。
そうすると「冠元顆粒」「星火温胆湯」「麦味参顆粒」が心筋梗塞予防の3点セット?
実際の臨床はもっと複雑ですから、そう単純には行かないでしょうね。
116.酸棗仁
サネブトナツメの種を酸棗仁といいます。
主に肝、心に入り、安神寧神作用があります。
ですので、肝や心の気虚や血虚で、寝付きが悪い場合によく使われます。
面白いのは、「酸棗仁は炒って使うと、不眠に良くきき、そのまま使うと嗜眠(昼の眠気)によく効く」という説です。
最近の動物実験では、炒って使っても、そのまま使っても催眠作用がある事が解りました。
ただ、酸棗仁を炒ってみると、何とも言えない、良いにおいがします。
臭いをかいでいるだけで、眠くなる気がしてくるほどです。
また、炒った酸棗仁は香ばしく、のみやすいものです。
薬効成分とは関係が無いのかも知れませんが、味や臭いのリラックス作用は炒った方が勝ると思います。
115.竜眼肉
中国の南の方に行くと、茶色くて、直径2cmくらいの硬い木の実を売っています。
ちょっと茘枝に似ていますが、色はもっと薄くて、茶色というよりベージュ色。
茘枝より小粒で、表面も茘枝と違ってつぶつぶではありません。
割ってみると、茘枝と同じような果肉が入っていて、とても甘くて美味しいものです。
家内が大好きで、見つけるとすぐに買ってしまいます。
中医学には養心安神作用があり、眠りを誘うものです。
漢方で使う龍眼肉は生のものではなくて、乾燥させたものです。ちょうどレーズンのような感じです。
ただ、実際には竜眼肉をいくら食べても、眠くはなりません。
やはり柏子仁とか、酸棗仁、蓮子芯などと配合して初めて効果が出るものと思います。
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