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陳久瘀血
中医学では血の汚れを淤血(おけつ 瘀血)と言います。
瘀血にも程度があります。
血管の中の血液の汚れも瘀血です。
しかし、血管の外にあるものもあります。
例えば、生理の血などは、血管の外の血です。
このような血を「離経の血」と言います。
王清任という人は「離経の血はたとえ色が綺麗でもみな瘀血である」と言っています。
つまり一旦出血してしまった血は汚れであって、綺麗な血とは違い再利用は出来ないという意味です。
今は輸血がありますから、必ずしも離経の血がみな瘀血という訳ではなさそうです。
離経の血で、時間がたって固まってしまったようなものを陳久淤血といいます。
子宮内膜症、チョコレート嚢腫などがその良い例です。
普通の瘀血と陳久淤血では中医学的な治療方法も異なってきます。
いわゆる血液サラサラにするものは血管の中の血を綺麗にします。
血管の外で固まってしまった陳久瘀血には歯が立ちません。
このような場合はよく動物生薬を使います。
例えばヒル、ミミズなどです。
処方の性質
中医の処方の性質について言えば、大きく分けて
1.補瀉
足りないものは何が足りないか判断してそれを補う、余分なものは何が余分かを判断してそれを綺麗にする
2.熱寒
冷えている時は温める、熱があれば冷やす
3.方向性
発散させる、収斂させる、上げる、下ろすなど
4.定位
どの部分での問題なのか
などがあります。
痰湿
中医学では痰湿という言葉があります。
汚れた水、脂、繊維などを意味します。
どちらかというと粘っこいものを痰、さらさらしたものを湿と言います。
喉から出るのも痰の一種ですが、中医学の痰は「体の中にたまった粘っこい汚れ」の意味で、とても広い範囲をさします。
脂肪肝とか、余分な皮下脂肪なども痰の一種と言えます。
湿は余分な水分で、日本の漢方では水毒という言い方もします。
むくみなどが代表的ですが、肺に湿がたまると喘息の原因になる事もあります。
人参
人参というと、普通思い浮かぶのがあの野菜の赤い人参です。
中医学での人参はいわゆる朝鮮人参です。
人参は補気の代表薬です。
ただ、漢の時代の書物の傷寒論の中では人参はみぞおちが使える場合や狭心症のような状態で胸がつかえる場合にも使われています。
今の人参は甘味が多く、補う力はとても良いのですが、通す力がありません。
昔の人参は今の人参と種類が違ったという説があります。
また長い間栽培されていく間に性質が変わったとも言われています。
昔の人参は、今の人参よりも竹節人参や田七人參に近い性質も持ち合わせていたのではないかと思います。
張錫純は昔の人参は今の党参だと言っています。この説は少し無理があるようにも思います。
修治について
昔から漢方薬には修治(しゅうち)という概念があります。
たとえば、黄耆をハチミツにつけて炙るとか、地黄をお酒に漬けるなどです。
修治にこだわる人と、あまりこだわらない人があります。
張錫純は、「附子などの毒性のあるものを修治するのは必要だが、それ以外のものは修治する必要は無いし、修治する事によって効果は弱くなる」と言っています。
日本の場合、薬事法の関係で自由な修治が出来ません。
その為、エキス剤などでも修治されたものを使う事は極めて少ない状態です。
東洋薬行の「東洋八味地黄丸」は、珍しく修治した熟地黄を使っています。
熟地黄は、地黄をお酒につけて乾かし、またお酒につけて乾かすという事を9回行って出来るものです。
このようにする事で、腎精を補う力が強くなります。
テレビなどである食材を調理するのに、調理の方法でうまみ成分が著しく変わるという事をよくとりあげています。
漢方の修治も良く似ていると思います。
ただ、煎じの場合は、最後に必ずお湯で煮込むという作業があります。
この為、せっかく修治しても、料理に比べてその差は出にくいと思われます。
丸薬などの場合は煮込まないので、修治の影響が大きくなります。
先ほどの東洋八味地黄丸も丸剤なので、修治の影響が大きいのだと思います。
生理の血
生理は西洋医学的には、脱落した子宮内膜と血液です。
では中医学的にはどのように考えるのでしょうか?
不妊症でとても有名な夏桂成先生は次のように言っています。
「私たちは長い間の実践、特に周期療法を行った上での観察で、生理の排泄物は表面上はただの血だが、実際は天癸水様物質と血海内の排除されるべき陳旧物質であるという事を発見した。
だから、前人は色々な書物の中で「経水」と呼び、癸水の重要性を表現している。」
癸は、日本語では「みずのと」で、腎陰を意味します。
生理の時は血と一緒に癸水が出てしまうので、腎陰が不足してしまいます。
ですから、周期療法では生理の後は腎陰を補うものを多く使います。
元気の意味
「お元気ですか?」と何気なく使っていますが、元気の意味はなかなか難しい。
まず気には、正気と邪気があります。
正気は体に必要な気、邪気は病気の原因になる体にとって不必要な気です。
正気には沢山の種類があります。
たとえば、体を守る衛気。
元気も、正気の一つです。
張錫純は「元気は腎に根基し、肝で萌芽し、脾で培養され、胸中の大気に貯蔵され全身に運ばれている」と言っています。
元気は原気とも言います。
元陰と元陽をあわせたもので、父母からもらった先天の気が飲食より栄養される後天気で滋生される。
また原気は「腎に発源し、丹田に蔵し、三焦の道をとおって全身に到達する。五臓六腑など一切の機関組織の活動を推し動かし、生化動力の泉源である」とも言われています。
こうしてみると、ますます訳がわからなくなってしまいます。
ただ、とにかく体にとって必要なものである事は確かです。
右半身と左半身
中医学では、痛みのある場所が右半身なのか左半身なのかによって陰陽を区別します。
例えば、左足が痛い場合は、左は陽に属するので純陽の鹿茸を使います。
右足の痛みの場合は陰に属するため、虎骨などを使います。
また、もう一つの考え方として、左は血、右は水と考えます。
中医学では内臓の配置として、心、肝、腎は左、肺、脾、命門は右と考えます。
左の心、肝は血との関係が深く、右の肺、脾は水との関係が深いものです。
左が腎、右が命門という考えは、難経から出た理論で、この理論とはまた違う理論です。
実際、その後の人たちは命門は両腎の間にあると言っている人もあります。
現代医学的には、腎陽をあらわす命門は副腎の事だという説もあります。
そうすると、左右の腎の中に命門が存在するという事で、両腎の間にあるという説の方が説得力があります。
陰虚の人の食事
陰虚は、主に体内の潤い不足です。
陰虚の場合、水分をとれば良いという事ではありません。
陰虚の人の多くは、水の偏在があり、必要な部分に潤いが足りなく、また溢れている部分もあります。
例えば、細胞内の水分は足りなく、細胞の外に水が溢れいてる。
あるいは筋肉の水分は足りないのに胃腸に水がたまっている。
このような事はよくあります。
この場合、水だけ飲んでも身体は潤いません。
陰虚の人にお勧めは、ネバネバしたものです。
山芋、蓮根 納豆 オクラ じゅんさい などです。
豆乳、白きくらげなどもお勧めです。
生理の量
黄体ホルモンは内膜を柔らかくする働きがあります。
ですので、高温期が綺麗だと、生理の時の内膜の剥がれがよくなり生理の量が少なくなる事があります。
反対に内膜が硬いと剥がれにくくなり、引っかかって、生理の量が多くなります。
この時、子宮は頑張って内膜を剥がそうして生理痛がおこります。
ですので、生理の量は多ければ多い方が良いという事はありません。
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