目次形式に切り替える84.人参
人参というと、普通思い浮かぶのがあの野菜の赤い人参です。
中医学での人参はいわゆる朝鮮人参です。
人参は補気の代表薬です。
ただ、漢の時代の書物の傷寒論の中では人参はみぞおちが使える場合や狭心症のような状態で胸がつかえる場合にも使われています。
今の人参は甘味が多く、補う力はとても良いのですが、通す力がありません。
昔の人参は今の人参と種類が違ったという説があります。
また長い間栽培されていく間に性質が変わったとも言われています。
昔の人参は、今の人参よりも竹節人参や田七人參に近い性質も持ち合わせていたのではないかと思います。
張錫純は昔の人参は今の党参だと言っています。この説は少し無理があるようにも思います。
83.修治について
昔から漢方薬には修治(しゅうち)という概念があります。
たとえば、黄耆をハチミツにつけて炙るとか、地黄をお酒に漬けるなどです。
修治にこだわる人と、あまりこだわらない人があります。
張錫純は、「附子などの毒性のあるものを修治するのは必要だが、それ以外のものは修治する必要は無いし、修治する事によって効果は弱くなる」と言っています。
日本の場合、薬事法の関係で自由な修治が出来ません。
その為、エキス剤などでも修治されたものを使う事は極めて少ない状態です。
東洋薬行の「東洋八味地黄丸」は、珍しく修治した熟地黄を使っています。
熟地黄は、地黄をお酒につけて乾かし、またお酒につけて乾かすという事を9回行って出来るものです。
このようにする事で、腎精を補う力が強くなります。
テレビなどである食材を調理するのに、調理の方法でうまみ成分が著しく変わるという事をよくとりあげています。
漢方の修治も良く似ていると思います。
ただ、煎じの場合は、最後に必ずお湯で煮込むという作業があります。
この為、せっかく修治しても、料理に比べてその差は出にくいと思われます。
丸薬などの場合は煮込まないので、修治の影響が大きくなります。
先ほどの東洋八味地黄丸も丸剤なので、修治の影響が大きいのだと思います。
82.生理の血
生理は西洋医学的には、脱落した子宮内膜と血液です。
では中医学的にはどのように考えるのでしょうか?
不妊症でとても有名な夏桂成先生は次のように言っています。
「私たちは長い間の実践、特に周期療法を行った上での観察で、生理の排泄物は表面上はただの血だが、実際は天癸水様物質と血海内の排除されるべき陳旧物質であるという事を発見した。
だから、前人は色々な書物の中で「経水」と呼び、癸水の重要性を表現している。」
癸は、日本語では「みずのと」で、腎陰を意味します。
生理の時は血と一緒に癸水が出てしまうので、腎陰が不足してしまいます。
ですから、周期療法では生理の後は腎陰を補うものを多く使います。
81.元気の意味
「お元気ですか?」と何気なく使っていますが、元気の意味はなかなか難しい。
まず気には、正気と邪気があります。
正気は体に必要な気、邪気は病気の原因になる体にとって不必要な気です。
正気には沢山の種類があります。
たとえば、体を守る衛気。
元気も、正気の一つです。
張錫純は「元気は腎に根基し、肝で萌芽し、脾で培養され、胸中の大気に貯蔵され全身に運ばれている」と言っています。
元気は原気とも言います。
元陰と元陽をあわせたもので、父母からもらった先天の気が飲食より栄養される後天気で滋生される。
また原気は「腎に発源し、丹田に蔵し、三焦の道をとおって全身に到達する。五臓六腑など一切の機関組織の活動を推し動かし、生化動力の泉源である」とも言われています。
こうしてみると、ますます訳がわからなくなってしまいます。
ただ、とにかく体にとって必要なものである事は確かです。
80.右半身と左半身
中医学では、痛みのある場所が右半身なのか左半身なのかによって陰陽を区別します。
例えば、左足が痛い場合は、左は陽に属するので純陽の鹿茸を使います。
右足の痛みの場合は陰に属するため、虎骨などを使います。
また、もう一つの考え方として、左は血、右は水と考えます。
中医学では内臓の配置として、心、肝、腎は左、肺、脾、命門は右と考えます。
左の心、肝は血との関係が深く、右の肺、脾は水との関係が深いものです。
左が腎、右が命門という考えは、難経から出た理論で、この理論とはまた違う理論です。
実際、その後の人たちは命門は両腎の間にあると言っている人もあります。
現代医学的には、腎陽をあらわす命門は副腎の事だという説もあります。
そうすると、左右の腎の中に命門が存在するという事で、両腎の間にあるという説の方が説得力があります。
79.陰虚の人の食事
陰虚は、主に体内の潤い不足です。
陰虚の場合、水分をとれば良いという事ではありません。
陰虚の人の多くは、水の偏在があり、必要な部分に潤いが足りなく、また溢れている部分もあります。
例えば、細胞内の水分は足りなく、細胞の外に水が溢れいてる。
あるいは筋肉の水分は足りないのに胃腸に水がたまっている。
このような事はよくあります。
この場合、水だけ飲んでも身体は潤いません。
陰虚の人にお勧めは、ネバネバしたものです。
山芋、蓮根 納豆 オクラ じゅんさい などです。
豆乳、白きくらげなどもお勧めです。
78.生理の量
黄体ホルモンは内膜を柔らかくする働きがあります。
ですので、高温期が綺麗だと、生理の時の内膜の剥がれがよくなり生理の量が少なくなる事があります。
反対に内膜が硬いと剥がれにくくなり、引っかかって、生理の量が多くなります。
この時、子宮は頑張って内膜を剥がそうして生理痛がおこります。
ですので、生理の量は多ければ多い方が良いという事はありません。
77.交感神経と副交感神経
自律神経失調症という言葉を良く聞きます。
これは交感神経と副交感神経のバランスが悪くなっている状態です。
中医学的には気の流れが滞っている気滞に属します。
緊張している時、ストレスのある時は交感神経が働きます。
交感神経が強く働き、それから開放されると副交感神経が強く働きます。
この時に血管が広がり偏頭痛がおこったりします。
この時、葛根湯は有効です。
またカフェインもとって良いです。
ただし、交感神経が興奮している時には逆効果になります。
大切なのは、交感神経と副交感神経のバランスを保つ事で、どちらかに偏りすぎない事です。
今どちらの状態にあるか判断するのは
交感神経が優位のとき イライラしやすい 手足が冷える 口の中が乾燥 眠れない
副交感神経が優位の時 偏頭痛 手足が温かい お腹がすく 眠い リラックス
今の状態によってどのようにするか判断します。
お風呂については、
少しぬるめのお湯に長時間はいるとリラックスして副交感神経が働きます。
熱めのお湯に短時間入ると交感神経が働きます。
解らない時はシャワーだけにします。
交感神経を興奮させるもの
葛根湯 コーヒー 青色の光 ロックなどの音楽
副交感神経を興奮させるもの
アルコール 黄色、赤の光 ゆっくりとしたジャズ
となります。
生活の中で上手に取り入れてみてください。
76.血虚の食事
中医学では血の不足を血虚と言います。
貧血に近い概念ですが、貧血とは違います。
貧血と言うのは、採血して、血液の濃度、特に赤血球の濃度を測定して決めます。
貧血も血虚の一種ですが、血虚は血液の量が少ないものも含めます。
体内の血液の量は正確に測定する事ば出来ません。
脈の強さ、舌の色、生理の色や量、それ以外の色々な症状を考慮して判断します。
最近は血流計があるので、それも参考にします。
血虚の人は血を増やす漢方を使います。
これを補血薬と言いますが、漢方だけでは血は増えません。
家を建てる事を考えると、漢方は大工さん。
大工さんだけでは家は建てられないですね。
原料が必要です。
木材やコンクリートにあたるのが食事です。
血虚の人にお勧めは何と言ってもレバーですが、レバーが苦手なら鶏肉のささみ、胸肉なども良いです。
レーズン、プルーン、くこの実など干した果物が良いです。
ただしドライフルーツは糖質も多いので夜は避けましょう。
豆類、玉子などのたんばく質も大切です。
75.脾気虚の人の食事
エネルギー不足を気虚と言いますが、特に胃腸の消化機能が悪い人を脾気虚と言います。
脾気虚の体質の方は、脂っこいものを控える必要があります。
生野菜、玄米などもあまりお勧めではありません。
糖類や炭水化物は消化が良いので、取りすぎは駄目ですが、脾気虚の人は控えすぎもよくありません。
上手に付き合う事が大切です。
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