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漢方の飲み合わせについて
漢方は西洋薬と違い、飲み合わせで駄目というものはありません。
ただ、気をつける部分もあります。
それは、バランスの問題です。
同じ方向性のものを組み合わせて作用を強める場合
いくつかの症状、状態があり、一つの処方では対応できない場合
ある漢方が必要だけども、身体にあわない部分があり、その部分を補正するため
などが考えられます。
同じ方向性の場合は、両方をそのままの量で飲むと効き目が出過ぎる場合があります。
この場合は飲む量を減らします。
ただ、症状がひどい場合は減らさないでそのままで飲む事もあります。
いくつかの症状がある場合、例えば肝腎陰虚で淤血がある場合は、杞菊地黄丸と冠元顆粒を組み合わせるなどの方法を用います。
杞菊地黄丸は肝腎陰虚によく使うもので、冠元顆粒は淤血に良いものです。
このような方法は非常に多く用いられます。
漢方にはいくつかの作用があります。
婦宝当帰膠は血を増やす作用がありますが、腸に潤いを与え便を柔らかくする働き、身体を温める働きがあります。
血が不足で、冷えがあり、便秘気味なら最適な処方です。
ただ、下痢気味でも婦宝当帰膠が必要な場合があります。
このような場合は、下痢の改善によい健脾顆粒と組み合わせると便の調子がよくなります。
いくつかの処方を飲むと、成分の生薬が重複する事があります。
上に述べたようなバランスを考えて使っていけば生薬が重複しても問題はありません。
ただし、大黄、麻黄、附子については量が多すぎると体調が悪くなる事もありますので、慎重にします。
希に甘草に敏感な方があります。
甘草は多くの漢方処方に含まれているので、重複しやすいものです。
甘草に敏感な人は、甘草をとりすぎると、むくみ、だるさ、血圧の上昇などがおこる事があります。
甘草は調味料として、醤油や味噌などにも使われています。
このような方は甘草の量を減らすような組み合わせにする必要があります。
肝胃不和と言う言い方でも良いでしょう。
ミトコンドリアと漢方
卵子の老化に関して、最近ミトコンドリアという言葉がよく聞かれるようになりました。
ミトコンドリアは細胞の中のエンジンにあたる部分です。
つまり細胞のエネルギーを作っている場所です。
通常の細胞には数百個ありますが、受精卵には数十万個から百万個もあると言われています。
つまり受精卵が分裂していくためには、沢山のエネルギーが必要だという事です。
もしそのエネルギーが不足すると、綺麗に分裂できず、フラグメントが増えたり染色体異常になる可能性があります。
ですから、ミトコンドリアを活性化する事が大切です。
ミトコンドリアは中医学的には肺と腎に相当します。
ミトコンドリアは、酸素と糖質などの燃焼を取り入れて、燃焼させ、エネルギーを作ります。
酸素を取り込むのは肺の働きです。
また燃焼させるのは腎の仕事です。
ですから、肺と腎を強化する漢方を使うとミトコンドリアの働きがよくなると考えられます。
肺と腎に良い漢方は沢山ありますから、その人の体質なども考えて選んでいく方法が良いでしょう。
ミトコンドリアは以外と怠け者です。
甘やかすとどんどんと働かなくなります。
ですので、あまり過保護にしないで少し鍛えてあげる事が大切です。
例えば、運動。
ミトコンドリアを鍛えるのに良い運動は、ゆっくりと速くを交互にくみいれた運動が良いでしょう。
例えばゆっくり歩いて、早歩き、これを繰り返す方法です。
次に食事。
これもたまにプチ断食とか、糖質制限を取り入れて、ミトコンドリアに危機感をもたせると良いでしょう。
ただし、あまり無理しないで下さい。
身体を温めすぎるのも逆効果です。
たまには薄着になって、運動して下さい。
ただし、風邪をひかないように充分注意してくださいね。
肝胃不和と言う言い方でも良いでしょう。
肝脾不和と肝胃不調
五行の理論では、肝は木に属し、脾と胃は土に属します。
木と土は相克関係にあり、木が土を剋する関係です。
つまり木が土をいじめるのです。
中医学では肝は気の流れをコントロールしています。
ストレスなどがつづくと、木は横逆して土をいじめます。
土というのは、脾と胃です。
脾も胃も胃腸の消化機能の事ですが、意味が違います。
胃というのは、食べたものを受けて、腸に運ぶ働きです。
つまり、お腹が膨れて食べられないとか、食べたものが下におりて行かない、もっとひどい場合は吐いてしまう。
このような場合は胃に問題があると考えます。
脾とは、食べたものを分解して吸収します。
脾で吸収したものは肺に運んでいきます。
この事から、消化不良、下利、栄養が吸収できないなどは脾の病気と考えます。
胃は栄養以外のものを下に降ろす、脾は栄養を持ち上げると考えても良いでしょう。
ストレスなどで食欲が無くなったり、胃が痛くなる事はよく経験します。
ストレスで気の流れが悪くなり、肝に問題が出ると、相克関係から脾や胃に問題が出ます。
このうち、脾に問題が出た場合を肝脾不和、胃に問題が出た場合は肝胃不調と言います。
不和と不調はどう違うのかと言うと、違いはありません。
漢文というのは言葉遊びの部分もあります。
肝胃不和と言う言い方でも良いでしょう。
肝火上炎
肝陽上亢と間際らしいものとして肝火上炎があります。
肝陽上亢は、陰虚という必要なものが足りない状態を病機としています。
これに対して肝火上炎は火邪という邪気がある状態です。
症状は肝陽上亢に似ていますが、症状はもっと強くなり、イライラ、のぼせ、鼻血、耳鳴り、不眠などになってきます。
時に激しい目眩、頭痛なども伴い、血圧は高くなりやすいです。
肝陽上亢は慢性的な症状ですが、肝火上炎はそれよりは急性的な症状となります。
基本的には竜胆瀉肝湯を使いますが、時には黄連解毒湯などとも併用します。
また、肝火上炎が続くと陰液を消耗して肝腎陰虚を伴う場合もあります。
このような場合は杞菊地黄丸を併用します。。
肝陽上亢
肝腎陰虚の場合、陰と陽のバランスがわるくなり、陰が陽を制止できなくなります。
そのため少なからず熱症状が出てきます。
この熱症状がもっと強くなり、頭の方にのぼって来た場合を肝陽上亢と言います。
顔があかくなり、のぼせたり、目が赤くなったりします。
イライラしやすくなります。
ただ、肝陽上亢は肝腎陰虚が原因になっている場合が多いので、杞菊地黄丸で対処できます。
熱症状が強い場合は少し清熱剤を使いますがあまり使いすぎると逆に陰を消耗してしまいます。
肝腎陰虚の症状
腎陰虚の症状としては、腰痛、尿が出にくい、のぼせ、ほてり、耳鳴り、口渇、舌が赤い、脈が細い、皮膚や粘膜の乾燥などがあります。
肝の陰虚の症状しては、目のかわき、目のかすみ、イライラ、不眠、自律神経失調などがあります。
この2つが同時にあるものを肝腎陰虚と良い、代表的な方剤が杞菊地黄丸です。
肝腎陰虚
広義の陰は、身体を構成している物質的なもの、目に見えるものを言います。
つまり身体そのものは陰になります。
広義の陽は、目に見えないけども動いている、働きがある、温かいものです。
相対性理論で言う、エネルギーが陽、物質が陰となります。
狭義の陰は、水のようなもので、身体を潤すもの、陽を抑えるものです。
肝腎陰虚の場合の陰は主には狭義の陰をさします。
狭義の陰は潤いですから、五臓六腑すべてに関係します。
でもその中では腎との関係が一番深いと考えます。
何故なら腎は陰と陽をコントロールする臓器だからです。
腎の陰が不足すると、全身の陰が不足しますが、まず最初に影響を受けるのが肝です。
肝腎同源という言葉があるように、肝と腎の関係は密接です。
肝も「体は陰、用は陽」という言葉があるように陰と陽のバランスが大切な臓器です。
体とは肝の本体、物です。
用とはその機能、働きの意味です。
さて、腎陰虚、肝陰虚が同時にある場合、これを肝腎陰虚と言います。
純粋な腎陰虚、肝陰虚は少なくて肝腎陰虚の状態が多くみられます。
弁証論治と理法方薬
中医学の基本的な考え方として「弁証論治」と「理法方薬」があります。
どちらも診断と治療の進め方について述べたものです。
弁証論治は、弁証と論治に別れます。
弁証とは証を弁別する事です。
病気がある時、病気の種類だけでなく、体質とか今の状態などを判断して「証」を決めます。
証については、今、このブログで解説中ですが、実に色々な証があります。
同じ病気でも証が異なれば治療方法も異なります。これを同病異治といいます。
また、病気の種類が違っても証が同じなら、同じ治療方法を用います。
これを異病同治といいます。
論治は弁証で得た証によって、治療方法を決めていく事です。
理法方薬は、治療の4つのステップを意味しています。
理とは、中医学の理論に従って診断する事で、弁証とほぼおなじ意味です。
法とは治療方法につてい作戦をたてるという意味です。
虚実が錯雑している時に先に去邪するか、先に扶正するか、また同時に行うかなどの手順を考えます。
去邪する場合は邪気の種類により、活血化瘀するとか、理気化痰するとか決めていきます。
治療方法が決まると次に使う方剤を決めます。
これが方です。
さらに方剤を使う時に、加減するのが薬となります。
弁証論治と理法方薬、言い方は違いますが、ほぼ同じ意味です。
心血瘀阻 しんけつおそ
心の血の流れが悪くなっている状態を心血瘀阻と言います。
血流が悪い状態を血瘀といい、汚れた血液を瘀血といいます。
ですから、心血瘀阻は心瘀血と言っても良いのですが、慣用的に心血瘀阻といいます。
このあたりが中医学が難しい点です。
中医学は文化的な要素を含んでいますので、心瘀血と言うとあまり中医学に詳しくないと思われてしまいます。
心血瘀阻の代表が心筋梗塞とか狭心症です。
心血瘀阻の場合、軽度なら冠元顆粒など植物性の漢方を使いますが、症状が長引いている場合は水蛭など動物性のものが必要になります。
肝鬱気滞 かんうつきたい
弁証は定位と定性からできていますが、前回の「気滞血瘀」のように定性だけのものもあります。
「何がどうなった」にあたるものが定性です。
例えば、気滞血瘀の場合、「気の流れが悪くなて、血の流れが悪くなった」という事です。
定位とは、何所でにあたります。
肝鬱気滞は、定位と定性の両方を持つ証です。
定位は「肝」で定性は「気滞」です。
気の流れを調整している場所としては主に肺と、肝があります。
この中で、肝の働きはとても大切です。
中医学では肝は疏泄を主るとされています。
疏泄の中で一番大切なのは気の流れの調整です。
ですので肝の疏泄の働きがうまく行かないと全身の気の流れが悪くなります。
この状態を肝鬱気滞といいます。
肝鬱気滞としてはイライラするとか、脇の部分が張る感じがするなどです。
よく使うのが柴胡疏肝散です。
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