目次形式に切り替える24.卵子の糖化について
卵子の老化は、卵子が酸化、つまり卵が錆びる事が原因と考えられてきました。
しかし、最近では糖化が原因ではないかと考えれるようになってきました。
最近、糖化の話はよく出てくるのでご存知の方も多いと思います。
タンパク質に糖がつくとAGEというものになり、茶色く変色していきます。
いったんAGEが出来てしまうとなかなか分解する事が出来ません。
赤血球を形成するヘモグロビンに糖がついて出来たAGEがヘモグロビンA1cというものです。
糖尿病の検査でよく使われるのです。
血液は3ヶ月くらいで生まれ変わるのでヘモグロビンA1cが出来てしまっても、赤血球事態が壊されて、
また新しい赤血球が出るので食生活を3ヶ月くらい改善していけば回復する事が出来ます。
ただし、体の中で生まれ変わらない細胞があります。
心筋とか、脳、そして卵子です。
こういった細胞のタンパク質に糖がくっついてしまうとなかなか厄介です。
卵子の場合でも一旦糖化してしまうと、それを戻すのは難しいでしょう。
卵子の糖化がどの段階で起こるのかはまだ解っていません。
ただ、インスリン抵抗性が卵子の質を劣化させ、インスリン抵抗性を改善すると卵子の質も良くなる事から、比較的排卵が近づいて来てから起こる糖化もあると考えられます。
日頃から血糖値に注意して、特に夜に澱粉、甘いものなどをとらないようにしていく事が大切と思います。
中医学では、糖のようなベタベタしたものを「痰湿」と呼んでいます。
痰湿は体の至る所にたまり、色々な病気を引き起こすと言われています。
23.漢方的に見た子宮と卵巣の違い
子宮も卵巣も妊娠には不可欠な臓器です。
ですが、漢方で治療する場合、少し考えが違います。
中医学では卵巣は腎の一部と考えます。
腎臓も腎ですが、中医学の腎はもう少し広い範囲を指します。
骨、頭髪、耳など老化にかかわる部分。
卵巣やホルモンなどは腎の受け持ちとなります。
ですから、卵巣を元気にする場合はやはり腎を中心に考える必要があります。
これに対して子宮は「血室」で、血の海と言えます。
ですから子宮を元気にするためには、まず血を増やす事が大切です。
また子宮は汚れがたまりやすい場所なので、うまく活血薬を使って血流を良くする事も大切です。
つまり、簡単に言えば
卵巣 腎の管理
子宮 血の管理
という方法になります。
22.卵胞と卵子
卵胞と卵子を混同されている方がかなりあります。
「エコーで見てもらって、直径が20ミリと言われました。」
この時の20mmは卵子ではなくて卵胞です。
卵子の直径は0.17mmくらいで、ぎりぎり目に見える大きさです。
さて、卵胞は大きくなる時にさかんに細胞分裂しています。
ですので、しっかりと栄養や血流を管理していくと良い卵胞が膨らんでくる可能性があります。
これに対して卵子はお母さんのお腹の中で作られて、細胞分裂はしていません。
ずっとー、何十年も眠っているのです。
では、いつ目が覚めるかというと、排卵の前の日くらいです。
排卵の前の日にはLHが上がります。
この刺激で卵が眠りから覚めて、減数分裂を再開します。
その時に、少しでも良い環境を整えておけば、眠りから覚めた卵子も元気に分裂していくはずです。
21.冷えと不妊
よく、冷えこそが不妊の原因という事で、ひたすら温めている方がいます。
夏でも靴下をかさねばきして、暑い中でフーフー言いながらカイロをお腹にあてています。
温めれさえすれば妊娠できるというのは大きな間違えです。
冷えにはいくつかの原因があります。
その原因を考えていく事が大切です。
1.ミトコンドリア活性がわるく、代謝が悪い場合
この場合は、漢方的には腎陽虚と考えます。
ただ温めるだけではミトコンドリアは活性化しません。
腎陽を補う漢方でしっかりと代謝を改善していく事が大切です。
2.血液の汚れが多いタイプ
血液の汚れが多い場合、手足の先だけが冷えます。
体全体が冷えるのではなく、一部分だけ冷える場合はこのタイプが多いようです。
血を綺麗にする漢方薬を使うと良いでしょう。
3.栄養のバランスが悪いタイプ
体に必要な酵素やピタミン、あるいはカロリー制限などでカロリー不足になっている場合。
この場合はやはりバランスよい食事をしていく事が大切です。
4.水の流れが悪いタイプ
体内の水はけが悪く、むくみやすいタイプです。
適度な運動をしていくとともに、水の流れをよくする漢方を使うと良いでしょう。
5.ストレスが多いタイプ
自律神経のバランスが悪くなると、血管が収縮して血流が悪くなります。
この時は手足は冷えますが、お腹の中では熱がこもります。
手足を温めるのは有効ですが、お腹を温めるのは逆効果になります。
リラックスして、良い音楽を効いたり、アロマなどをしましょう。
コーヒーのとりすぎに注意して、軽いストレッチなどを心がけます。
20.多嚢胞卵巣と糖化
多嚢胞性卵巣の一部の方には糖代謝の異常がある場合があり、インスリン抵抗性が高くなります。
このようなケースでは、卵子の糖化が進む可能性があり、食事に十分に注意する必要があります。
具体的には、糖質の制限ですが、糖質といのはデンプンも含みます。
ごはん、パン、麺類、イモ類、カボチャなどのデンプンは分解されて糖になります。
ですから、これらのものを減らす事は重要です。
ただし、糖質はエネルギー源です。
しかも燃えればカスがのこらないクリーンなエネルギーです。
ですから、糖質はとった分だけちゃんと燃焼される事が大切です。
一番簡単なのは、午後3時以降はなるべく糖質をとらない事です。
特に、夕食後や寝る前などにお菓子類を食べている方は要注意です。
ただし、多能性卵巣の方すべてでインスリン抵抗性が高いわけではありません。
本当はしっかり検査をすれば良いのですが、検査をされている所は少ないようです。
また逆に多嚢胞性卵巣でない方でもインスリン抵抗性が高い方もあります。
このような方は糖質制限をする事で卵子の質がよくなる可能性があります。
19.AMHについて
よくAMHが低いと言う方が相談に来られます。
AMHを卵巣の年令と考えると、それはかなり違います。
確かにAMHは年令とともに低下する傾向がありますから、年令とも関係している事は確かです。
ただし、年令よりも個人差が大きい数値です。
例えば30才くらいでも1以下の人も沢山ありますし、10くらいある人もあります。
では10の人は1の人の10倍も若いのでしょうか?
AMHは、卵巣の中にある原始卵胞の数を調べているのではありません。
3ヶ月後くらいに排卵する予定の卵胞の数を数えています。
例えば卵巣の中で沢山卵胞が膨らんでしまう多嚢胞性卵巣の方はAMHも高くなります。
多嚢胞性卵巣が改善してくるとAMHは下がってきます。
逆にAMHが低い人でも、原始卵胞が沢山膨らんでくればAMHは上がってきます。
卵胞が膨らむか膨らまないかは、ホルモンのバランスや体調などによっても違います。
また、AMHが高い人は沢山の卵胞が膨らんで来ていますが、最後に排卵するのは原則1個の卵胞なので、
沢山膨らむ事が妊娠に有利とは言えません。
ただし、採卵する場合は一度に沢山採卵できる可能性はあります。
18.禁欲と精子
卵子はお母さんのお腹の中にいる時に作られて、あとは作られません。
これに対して精子は思春期以降に作られ始めて毎日沢山作られていきます。
その事から考えると、卵子を良くするのは大変ですが、精子を良くするのは少なくとも卵子を良くするよりは簡単と言えます。
精子の不良の場合、精巣で精子を作る能力が不足している場合と、作る能力は問題ないけども、排出出来ない、あるいは壊れてしまうという場合があります。
精子を作る力が不足している場合は漢方的には腎虚と考えていく事が多いですが、そうでない場合は、色々な汚れが原因となっていると考えます。
血を綺麗にして血流を改善したり、湿熱をとりのどいたり、気滞を改善したりして行きます。
特に運動率や奇形率に問題がある場合、禁欲期間をあまり長く取り過ぎない事も大切です。
精子はとてもデリケートで壊れやすく、古い精子は染色体異常が多いからです。
では、何日くらいが良いかというと、明確な基準はありません。
新しければ新しいほど精子の染色体異常は少ないと考えられます。
そういう意味では毎日でも良いと言えます。
ただ、体力的な事や、仕事の忙しさなども考えると毎日は難しいですね。
同時に、奥さんの排卵が近づいて来たら、ご主人さんも体調管理をしっかりとする事が大切です。
17.不妊症と抗体
抗体は、本来は体を敵から守る大切なものです。
敵と言うのは細菌、ウイルス、ガン細胞などです。
ただ、時として敵と味方の区別がつかなくなる事があります。
本来は害が無いものに抗体を作ってしまうのがアレルギーです。
もっと困るのは自分自身の体の一部分を敵と判断して攻撃してしまうケースです。
これを自己免疫疾患と言います。
リウマチや膠原病を始め、非常に多くの病気が自己免疫によるものと考えられています。
自己免疫疾患は非常に種類が多くあります。
抗体は、地球上のあらゆる物質に対して作られる可能性があり、何千万種もあると考えられます。
抗体の種類が多いため、いろいろな自己免疫疾患がおこる可能性があるのです。
例えば、精子に対する抗体を作ると抗精子抗体となります。
抗精子抗体も1種類ではなくて何種類もある事が考えられます。
また卵子の外側の透明体に抗体を作る事もあります。
子宮の内膜に対する抗体を作る事もあります。
このように妊娠に不利な抗体があると免疫性の不妊という状態になってしまいます。
漢方でアレルギーの体質改善として、風熱、湿熱、血熱などに分けて考えます。
風熱は、蕁麻疹のように変化が激しく、場所がよく移動するものです。
湿熱は、滲出液が多く、局所がただれた感じになる事が多いものです。
血熱は、局所が赤黒くなり、腫れたり、痛みを伴う事が多いものです。
16.薬草の成分
いつも考えている事なのですが、ある薬草には病気を治す成分が含まれています。
例えば麻黄にはエッフェドリンが含まれていて、発汗や止咳の作用があります。
ただ、麻黄が生育していく爲にエッフェドリンが必要という訳ではありません。
コーヒー豆にはカフェインが含まれています。
これもコーヒーにとってカフェイン必要という訳ではありません。
ただ、コーヒーはカフェインが含まれている事で、世界中で栽培されるようになりました。
つまり植物は他の動物に利用される爲に、わざわざ特殊な成分を含んでいると考えられます。
ある病気があると、それを治す植物が必ず近くにあると言われています。
このように生物は生態系として、お互いに助け合い、まるで地球が一つの生物のように活動しているのです。
不思議な事ですが、それが中医学の原点と言えます
15.五味のバランス
黄帝内経によれば、五味のバランスが非常に大事という事です。
五味とは文字通り5つの味で、酸味、苦味、甘味、辛味、塩味です。
酸は肝に、苦は心に、甘は脾に、辛は肺に、塩は腎に作用します。
作用するというのは、良くも悪くもなると言う事です。
一般に適量にとれば、その臓の働きを良くしますが摂り過ぎると返ってその臓を傷つけてしまいます。
黄帝内経には、
酸味を過食すると肝の気が編盛して脾を傷つけます。
苦味を過食すると脾が潤わなくて、胃に食滞がたまる。
甘いものを食べ過ぎると、胸がつまったようになり呼吸が苦しくなる。肌の色は黒くなり、腎の気のバランスが悪くなる。
辛いものを食べ過ぎると、筋肉や筋が緩んでくる。
塩分を摂り過ぎると腰のあたりに骨が弱くなり、筋肉も弱くなり心気の流れも悪くなる
と記されています。
味のバランスが大切という事ですね。
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