病気の原因と中医学の対応
起こり得る病気の原因と中医学的な対応を考えてみました。
今考えたのは14種類ですが、もっとあるかも知れません。
1.怪我や火傷などの外傷
中国の歴史は戦いの歴史でもあり、兵士の怪我の治療には漢方薬が用いられてきました。
このため、怪我の治療には多くの優れた処方が残されています。
2.細菌やウイルス、寄生虫などの侵入
中医学が生まれた時代には細菌やウイルスの存在は知られていませんでした。
最初は気候の変動などが原因とされてましたが、のちに伝染病が知られ、その原因として汚れた空気が考えられました。
また細菌やウイルスの存在はわからなくても、傷寒論や温病論など治療のために沢山の処方が考えられました。葛根湯や銀翹散など今でもよく使われています。
3.腫瘍など、おそらく遺伝的の損傷や不要なエピゲノムの不良による不要な遺伝子発現
中医学ではガンの知識や治療はあまりありません。原因としては昔の人は寿命が短く、いわゆるガン年齢になる前に亡くなっていたからではと思います。
4.遺伝病 必要な遺伝子の欠損
この分野は中医学では難しいでしょう。西洋医学では将来的には遺伝子の移植などが出来るようになるかもしれません。
5.免疫疾患
これはアレルギーなど外部からの抗原によるものと、自分の体に反応してしまう自己免疫疾患があります。
中医学ではこの2つはあまり区別しません。
そのため、西洋医学では難しい自己免疫疾患の治療について、中医学は一定の効果があると思われます。
抗体にかかわる病気は以前、「宿邪論」で述べた事があります。
6.ホルモンバランスの異常
性ホルモンの作用は腎気と考えています。
インスリンは脾気、副腎皮質ホルモンは衛気、甲状腺は腎陽や心気などそれぞれの臓腑の働きに割り振られて沢山の処方が考えれています。
7.自律神経の乱れ
自律神経は中医学的には気の流れです。
肝と脾との関係が深く、得に疏肝理気という方法がストレスなどによる自律神経失調によく使われます。
8.暴飲暴食などによる胃腸障害
消化を助ける消導薬という処方がいくつもあります。
9.食生活の乱れや運動不足による生活習慣病
血流の障害や体内に分解しにくい不要な汚れがたまってしまう場合が考えられます。
遺伝的な素因も関係しています。
これに対して、汚れをきれいにする処方があります。
血の汚れを綺麗にして血流を改善する活血化瘀
脂の汚れ、水の汚れ、繊維の汚れを綺麗にする化痰薬などがあります。
11.老化
この分野は昔から執拗に処方が研究され、時に行き過ぎた薬害などもありました。
今は重金属を含む処方は使われなくなりましたが、昔はよく使われていたようです。
中医学が老化に対してどの程度の効果が出るかは未知数です。
老化は遺伝子発言、エピゲノムにかかわる部分が多く、この分野の薬は西洋医学でもまだ開発されていないようです。
私は補腎薬がエピゲノムに働きかける可能性があると思っています。
12.過労 睡眠不足
体力をつける漢方や、疲労回復の漢方は沢山あります。
勿論、それだけにたよるのは良くないですが、黄耆、人参、冬虫夏草など利用価値はあります。
13.体を守る菌の不足 胃腸や皮膚、口腔、皮膚、子宮内や膣など
皮膚や粘膜を潤す漢方、たとえば甘露飲などが良い細菌を増やす作用があるかもしれません。
今後の研究が待たれます。
14.栄養失調
漢方薬は食事の代わりにはなりません。
ただ、栄養の吸収を助ける作用はあります。
私がいつも言うのは「漢方薬は大工さん。どんなに腕の良い大工さんでも材料がなければ家はつくれません。」と言っています。
中国語では「どんなに料理の上手な奥さんでも、米がなければご飯は炊けない」と言います。

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