舌色(ぜっしよく)
中医学では、舌をみて、患者さんの体質や病気の状態を判断します。これを舌診(ぜっしん)とよんでいます。
舌診でまず判断するのは、舌の色です。舌の色には、舌そのものの色と、苔の色に分けられます。
舌色というのは、舌そのものの色です。舌に生えている苔の色ではありません。
下の2つの写真を比べてみて下さい。明らかに舌そのものの色が違います。
初めの写真の方が赤いですね。
舌の色が赤いという事は、一般には体内に熱が沢山ある事を意味します。
逆に、赤みが薄い場合は、体内が冷えている事が多いのです。
舌色(ぜっしよく)2 「瘀血(おけつ)」
中医学では、血液の流れが悪くなった状態を瘀血(おけつ)と言います。
舌を見るだけでも、瘀血があるかどうか、ある程度判断できます。
上の2つの写真を見て下さい。
初めの写真は、舌全体が紫をしています。
後の写真は、舌の所々が、濃い紫色をしています。
どちらも、血液が汚れて、流れが悪くなっている状態です。
血液の流れが悪いと、人によっては、舌の裏側の静脈が太く浮き出していたり、蛇行したりします。
また、舌の所々に黒いシミのようなものが出来たりします。これを瘀斑と呼んでいます。
舌苔 (ぜったい)
舌にはえている苔を舌苔といいます。
舌苔も中医的な体質の判断や病気の性質を決める上で、大切なヒントなります。
下の二つの写真を比べてみて下さい。
舌苔の厚さが全然違いますね。
初めの写真は、舌苔が全然ありません。
このように、苔が全然ないのは、鏡面舌といって、
体力が消耗した時とか、病気が長引いて、栄養が消耗した時に多く見られます。
後の写真は、舌苔がとても厚いですね。
これは、暴飲暴食やストレスなどで、胃の消化機能が低下して、
食べたものが、滞っている状態です。
苔がもっと厚くなると、下の写真のように、苔がとがった棘のようになります。
これを芒棘といって、体内に邪気がさかんな時に見られます。
舌色 (たいしょく)
舌苔の厚さだけでなくて、舌苔の色も重要な情報源です。
これら、3枚の写真は、それぞれ苔色が違います。
最初の写真の苔は白いですが、次はやや黄色、最後は黄色です。
苔の色が黄色い場合は、体内に熱がある事を意味しています。
ここで、注意しなければいけないのは、コーヒーなどを飲んだ直後は、
苔の色が変わってしまって、正しく判断できないという事です。
裂紋 (れつもん)
舌に、ひび割れがあるのを裂紋といいます。
このように、舌にひび割れがある場合、中医学的には津液不足を意味しています。
津液とは、体にとって大切な栄養を含んだ水の事です。
ちょうど、日照りなどで、田んぼに水が無くなった状態に似ています。
ただし、生まれつき深い裂紋がある人がいます。
このような時は、判断の材料にはなりませんから注意してください。
この人は、糖尿病です。
糖尿病の場合、血液のよごれは勿論ですが、津液不足を起こしやすい病気と言えます。
この写真の裂紋は、苔の裂紋で、舌そのものの裂紋ではありません。
こういう場合は、ストレスなどによって一時的に津液が消耗している時によく見られます。
この状態が長く続くと、いずれは舌そのものの裂紋になっていきます。
胖舌「はんぜつ」と痩舌「そうぜつ」
次に舌の大きさを見てみましょう。
この2つの舌の大きさは随分違います。
初めの人は、舌が大きく、むくんだ感じで、歯形があります。
このような舌は、水分の代謝が悪くなった時によく見られます。
後の人の舌は、逆に舌が縮んだ感じです。
この場合は、陰虚といって、体に必要な栄養が不足している事を意味しています。
老「ろう」と嫩「どん」
老とは、ガサカサしてざらつく感じ。ちょうど松の木の幹のイメージです。
嫩とは、みずみずしいイメージ。ちょうど新鮮な野菜のイメージです。
初めの人は、老舌です。ちょっとカサカサしていて、水分がない感じですね。
後の人は、みずみずしくて、柔らかい感じです。これは嫩舌です。
老舌は、一般に体内に邪気が多くて、正気も損傷されていない場合に多く見られます。
嫩舌は、代謝機能が低下していたり、体力が低下している場合によく見られます。
舌の部位による分類
中医学では、舌に異常が現れる部位によって、臓腑と関係があると言われています。
例えば、
舌の先 心
舌の脇 肝
舌の中央 脾
舌の根本 腎
です。
(他の分類の仕方もあります。)
このように、舌の先が赤いのは、心の部分に熱があります。
イライラしやすかったり、口内炎が出来たり、夜眠れなかったりします。
この人は、さらに、舌の両脇に苔が多いので、肝の部分にも問題が有るかも知れません
この人は、舌の中央部に苔が多いので、脾に問題があると言えます。
これで、舌診に関する説明を終わります。
舌診に関して、大切な事は、舌診だけで判断せずに、必ず他の情報と総合して 判断する事です。